Chapter 001_針路を北へ
林檎です!
・・・前話はナカナカ刺激的♡な
お話だったのではないでしょうか?
・・・ふふふっ///
さて!
ソレはともかく。
本話から
11th Theory:天空回廊編 のスタートです!
ドワーフの古代遺跡【天空回廊】で待っているものは何!?
ダンジョン内でも容赦なく魔女様のお星様が大暴れ!?
・・・そもそも、7,000年前に荒廃した坑道なんて通れるの!?
・・・どーでしょーか、ねっ!?
↓ お楽しみください!! ↓
「もう…行っちゃうんだね…?」
カレント 2,187年 恵土の月29日
お天気は曇り・・・
「・・・ん・・・」
ローズさんとゲオ様。目覚めた2人は私とティシアに何度も何度も・・・
ローズさんに至っては、自害でもしてしまいそうな勢いで・・・
・・・謝り。
「もういい」と言っても止めてくれず。
最後は、
介抱魔法で無理矢理寝かしつけなければ
ならない程だった。
・・・2人は。ティシアは。
そして自分は・・・
今回の一件で・・・体だけじゃなく・・・心にまで
大きな傷を負う事になった。
・・・こんな思いをする事になる。だなんて、
夢にも思っていなかった。
魔王様・・・カエンちゃんを。魔族のみんなを。
そして櫻ちゃんを救うことは出来たけど、でも・・・
「・・・長く居る事は・・・できない。」
・・・あの時。
アミちゃんの願いを無視するのが最適解だった?
・・・んーん。きっと、ソレは違う。
人の想いを無視するコトが正解であるハズがない。
ティシアやみんなをお留守番させたのがいけなかった?
・・・でも、カエンちゃんや櫻ちゃんとの、アノ烈しい戦いの渦中に
妹たちを巻き込むわけにもいかなかった。
じゃあやっぱり、魔族を信じたのが悪かった?
・・・でも、魔族のみなさん無くして今回の勝利は無かったワケで・・・
「…そ、そう…そう。だよね…」
・・・アミちゃん。ヤマ様。他の魔族の人たちもみんな
深く深く謝ってくれた。
裏切った人たちも見つかり、ちゃんと罰も与えたそうだ。
そもそも今回の事件はクーデター・・・革命・・・だったんだ。
裏切りや、反則行為はお互い様。
【首謀者】と言われても言い訳できないほどの動きをした私が
被害者ぶる事なんて、できるハズが無い。
これ以上、彼らを攻める事はできない。
それに、彼らの被害も小さくなかった。
【竜王】のボルレアス様と【獅子王】のリオン様。
そして【門番】のトリノプスさんと【首無し】アスラムは
”永い眠り”につく事になった。
目覚めるのは早くて百年後・・・もしかしたら、千年以上先・・・
のこと。
カエンちゃんの為に奮闘したのに、彼女に出逢えるのは
ずっとずっと、先のことだ。
永遠の命を持っている・・・とは、いえ。こんな切ないことが、
他にあるだろうか・・・?
・・・加えて。反乱を起こしたという
【風斬】ァイヒアたんは”行方不明”だ、そうだ。
・・・ま。
行方不明と言っても高確率で”死んじゃった”って考えられているんだけどね。
”誰かさんの嵐”のせいで、主戦場である【ローズの里の広場】が
原形を留めないレベルに破壊されちゃったから。
見つけられなかったそうだ・・・
「・・・ココにいないルフ様とマス様にも。よろしくね・・・」
「もちろんだよ!」
傷ついた・・・と、いっても家族は誰一人、死んだわけじゃない。
死んでしまった・・・と、いっても【魔王級魔族】は復活できる。
今回の一件で犠牲になったのは主に【花のエルフ】で。
次いで、戦いで犠牲になった人や魔族。
巻き込まれた人や魔族だ。
・・・私は。
その全ての【死】に関わってしまった。
私自身が殺した人も。
私の家族が殺した人も。
私が復活させた魔族に殺された人も。
私がこの地に来なければ今この瞬間も生きて笑顔でいたはずのヒトが・・・
・・・今は、いない。
残された人たちは何を思うだろう?
誰を恨むだろう?
家族を。人生を。生活を無茶苦茶にした魔女を前に。
どう、するだろうか・・・
「…毒花どもの残党は…多くが捕えられましたが…残った一部の者達は炎を逃れ北方や、東方の”危険で厳しい僻地”に逃れたと思われます。どうか。お気を付けくださいませ…」
「・・・ん。地図に・・・物資まで。本当にありがとうございましたヤマラージャ閣下。」
「…いえ…ソレくらいしかできず申し訳ない。魔女様に心からの感謝と…謝罪を」
「・・・だから。それはもう、受け取ったってば。・・・もう、いいよ・・・」
「…、…」
「・・・それより。カエン・・・魔王様の事。アミちゃんの事・・・よろしくね。」
「…も、勿論でございます!ここまでして頂いたのです。必ず…」
「・・・ん!」
・・・そう。簡単な話だ。
私は、できるだけ早く逃げ出したいんだ。
この大陸から・・・
「…【天空回廊】”までの道”は魔女ちゃんの【炎の星】で焼き払われたから…”すごく”見通しが良くて。魔物の危険は低いと思うわ!…でも。油断しちゃダメよ!」
「・・・大丈夫。私には。頼りになる耳と目がいるから・・・」
「にゅふふふぅ…///」
「ふふふ…気を付けてね!」
「・・・お世話になりました。ラバーラ様・・・」
「お世話になったのはコッチよ!…ありがとね。本当に…」
・・・アドゥステトニア大陸に辿り着いたら今度は、
”王女殺し”の罪で追われる身になるかもしれない・・・
・・・けど、それでも。
”絶対に味方だ”と思える家族や友達がいるぶん。
ムコウの方がずっとマシだ!
・・・嫌な思い出しかない、こんな大陸なんて
早く去りたいに決まっている・・・
「…フォニア…お姉。ちゃん…」
「・・・アミちゃん・・・。・・・短い間だったけど、一緒に旅ができて楽しかったよ。ありがとう・・・」
「そんな!そんな…」
「・・・お姉様が目覚めたら・・・よろしくね。」
「うん…」
「・・・ボルレアス様やリオン様たちにも・・・よろしくね・・・」
「…ぅん…」
「・・・ドゥーチェちゃんの願いに関しても・・・よろしく。ね・・・」
「………」
「・・・」
「…」
「・・・」
「…」
・・・アミちゃんには。
悪いけど・・・
「・・・それじゃあ・・・ばい、ばい・・・」
「っ…っ!まっ、また…またね!”また”だからね!!」
「・・・・・・・・・そう。ね・・・また会えたら。いいね・・・」
「うん…うん!」
・・・私がこの大陸にくることは。
「…きっとだよ!フォニアお姉ちゃん!!」
「・・・」
もう、無いよ・・・
「…いつまでも待っているよ。夜の魔女…」
・・・
・・
・
・・・
・・
・
「…あれ?あそこで燃えてるのって・・・ね様の。”あの時”の炎…?」
「・・・たぶん・・・」
2日後。
お天気は冷たい雨・・・
「…こんな天気でも消えないのか?」
ローズの里を発った私達は一路、天空回路を目指し
北へ向かった。
まるで、魔女の罪を責める様に
どこまでも拡がる空虚な焼け野原を進むと、やがて
虚無色に染まった灰の上で・・・もう、可燃物など残っていないのに・・・
・・・雨粒などモノとせずに乱舞する
紅蓮の残り火と遭遇したのだった・・・
「・・・火星の炎は・・・たぶん。”永遠に”消えないと思う・・・」
火星の炎には煌獅の怒りが凝縮されている。
その炎を消すには彼等の怒りを鎮めるしかない・・・
「永遠に…だと?」
「・・・ん。」
「魔王が目覚めたとしても…か?」
「・・・ん・・・」
煌獅はカエンちゃんの瞳に見出された”召喚獣”だ。
けれど同時に”私”の召喚獣でもあり、櫻ちゃんの召喚獣でもあった。
「・・・たとえ魔王様が赦しとしても。私・・・魔女。わたしが。毒花を許さないから・・・」
「…」w
複数個体存在する水龍と違って、煌獅は1柱しか存在しない。けれど、複数の術者と契約でき、術者の思い・・・喜びや愛情。そして怒り・・・をその身に”蓄積”していく。(例えるなら、別々のスマホから同一のクラウドストレージにアクセスして。オートセーブしていく・・・みたいな感じカナ?)
煌獅の瞳にはカエンちゃんだけでなく、櫻ちゃんの・・・そして私の
”痛み”や”怒り”や”恨み”が刻み込まれるように綴られている。
たとえこの先。カエンちゃんが毒花たちを許したとしても。
きっと・・・
「っ…」
「…ま、魔女様…」
「…」
・・・毒花のスベテが悪いわけじゃない。
ティシアを守ってくれた3人みたいな”例外”もいる。
(※チューリップの里から着いてきている3人に関しては“絶対裏切れない”ように奴隷契約の契約内容の強化をした上で、一緒に来てもらう事にした。)
・・・そんなコトは。私だって分かってる。
ケド、そういった”例外”を考慮したとしても・・・
「・・・毒花なんて。滅びればいいんだ・・・」
・・・私は”よくある物語”の主人公みたいに
聖人でも、楽観的でも、物分りが良いわけでもない。
嫌いなモノは嫌いだし、憎いものは憎いし、赦せないモノは許さない。
私の・・・私”達”の
痛みを。傷を。怒りを。屈辱を。恨みを。
自分達がナニをシたのかを。
罪を償う資格が無いというコトを。
その【理】を耳長共が
決して忘れないように。
この炎は・・・消させない。
「・・・みんな。行くよ・・・」
・・・毒花なんて。
全部燃えちゃえばいいんだ・・・




