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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 061_綴られし真実

「ぶぅわあぁ〜かあぁーっ!!!」


紅蓮の空を切り裂く

風切り音に続いて聞こえたのは…



「あぁっ、もぉーっ!ね様のバカ!ばかばかばかっ!!コンナにしちゃってぇ〜…もおぉ〜っ!!」


姉を想う

優しい叱責(しっせき)だった…





「えいっ!」


東風の精霊の背から平然と。

紅蓮の海めがけて飛び降りた彼女は



「って!?えぇっ!?妹ちゃん!?!?」

「うをおぉーっ!?!?」


驚き焦るエルフと、その召喚獣をよそに



「ね様ー!!」


信頼の翼を頼りに飛び出した彼女は

真っ直ぐに星を目指し…



『『『『『ブシュッ!』』』』』


『ググッ!?』『ククゥ…』


【溟王の龍】以上の優先事項を見つけた

蛇の星によって…



『『『『『とぷんっ!』』』』


…包まれ。



「ぶぷっ!」


さらに…



「お嬢!」


…駆けつけた天使に



「ぷふぁっ!はぁ〜…あ。天使のウリちゃんか…」

「はぁ〜…まったく。無茶をする…」


空中で

銀色の星から上半身を覗かせながら



「…うふふっ!ね様のいもーとだから、ねっ!」


「っ…はあぁっ〜…」

『『『『『るるぅ…』』』』』


1万年続く物語を1夜で終わらせた召喚獣を相手に

無邪気な笑みを浮かべ…



「それより…」


…そして。



「ティシア!ティシアァ・・・!!」


毒花たち…いや。今は亡き花のエルフ…を滅亡に追いやり。

大陸に恐怖と絶望を(もたら)した魔ノ女の懐に…



「…ね様!」


…不安の欠片(かけら)も抱かず



「ティシア!!」


飛び込み



「あぁっ!ティシa・・・」

「ね様!やり過ぎだよ!!今すぐマホーを止めなさい!!」


「・・・ううぅ!?」

「んもぉ〜!「・・・う?」じゃ、ない!魔法を止めろって言ってるの!!このまんまじゃ、ホントに森が無くなっちゃうでしょ!?」


「・・・だ、だってティシア。毒k・・・」

「やーりーすーぎー…って!言ってるの!!エルフさんたちは…ま、まぁ確かに。ゲオ様とローズさんを傷付けたのは許せないケド…で、でも!私はこうして無事だったんだから!なにもココまでする必要(コト)ないでしょ!?」


「・・・でも・・・」

「「・・・でも・・・」じゃ、ないよ!ね様の魔法は凄すぎるんだよ!ちょっとは自覚しなさい!!」


「・・・だ、だっt・・・」 

「言い訳しないの!!ね様なら、もっと”スマァ〜ト”にできたハズでしょ!?…なのに。関係ないヒトや魔物や野生動物さんまで巻き込んじゃって…もぉー!!」



「…」

『『…』』


多重魔法印の真ん中で抱き合い、

言い争う姉妹を唖然としながら見ていると…



「…ふふふっ。相変わらず仲いいね…」

「…相変わらず。無茶苦茶な姉妹だ…」


…隣にやって来たのは



「…エルフ君。助かったよ…」


…おそらく、全力で駆けつけたのであろう…



「…うん?何言ってるのさ?ぼくは家族(いともとちゃん)の願いを聞いたダケさ…」


…玉のような汗を流しながら軽く笑ってみせる

ひとりのエルフだった…



「…ソレでもお礼を言わせてくれ。君がいなかったら今頃…」


彼と彼女が来た途端。

勢いを失った炎と星を見ながら唱える…



「…ま。本音はマシェリの気が済むまで暴れさせてあげたい所なんだけどね…」


…と!?



「ええっ!?」

「だってソウだろ?裏切りモノしか居ない、こんな大陸。いっそ、滅んでしまえばいいんだよ!」

「………」


…ヒ、ヒトの気も知らないで…と、思いながらも、何も言えずに。

ジト目で見つめていたけれど…



「まー…でも?」


…続いた彼の。



「妹ちゃんの言葉も無視できないし…なにより。その方が”マシェリの為”になるからね…」


その言葉に…



「…」


「…。…故郷に帰っても追われる身なんて…可哀想だろう?」

「…」


振り返ったぼくに



「…溟王君。君は…」


…彼は。

初めて耳にする声で、顔で。


「…君は。…”ダレのせい”でコンナコトになったのか…分かっているよね?」

「…」

「…幸い。この現場を見ていた者はひとり残らず死に絶えた。”見ていた”世界樹も焼け落ちた。」

「…」


…”冥府の大海”に恐れをなさない



「この意味…分かるだろう?」

「…」


2つの翠風は…



「誰が。罪を。背負うべきか…分かるだろう?」

「………」


”青海”をまっすぐに見つめ…



「お礼を言いたい…だっけ?それじゃあ…」


紅蓮の光を失い、黒に帰した空と大地の只中で



「…ソレを。行動で。示して…欲しいな…?」


怒れる嵐を伴いながら



「…ねぇ?魔国シアリアの王子…殿?」


唱えたのだった…



………

……



………

……



………

……



















……

………



『コッ、コッ、コッ…』


…最近。

新しい本の出版がガクッと減った。

たぶん…



「…あの子とあの子が。大暴れ…」


溟王(笑)は、ともかく。

夜の魔女ちゃんは頭が良いうえ、実行力もある。


毒花を翻弄して今は、きっともう、

欲しい物を手に入れた後だろう。



「…無事に逃げ延びてくれれば。いいのだけど…」


…なんて。

巻き込んでしまった私が言う資格。無いのだけれど…





















「…え…」


…それはソウと。

今日は久しぶりに新刊が出ていたので

本棚までやってきた。


本のタイトルも内容も。知りたいと思えば手に

取らなくても分かるんだケド…久しぶりだったので。


ページをめく)りたくて。

やってきた…



「…こ。これ…?」


…そして。

私の楓色の瞳が捉えた本には…



「…【烙花の夜】…?」


…と。

銘打たれていたのだった…



「…コレは…問題作。の。予感…」



ヴェルム・ウェルム大陸で本を出版するには

毒花の検閲を抜けなければならない。


…もちろん。

裏ルートで流す事も出来るけど…そういった本は発行部数が少なく

認知度も低いから大図書館の”収蔵条件”を満たさない。


…だから。毒花が絶対に許さないであろう、

”こんな”タイトルの本が並んだというコトは…



「…」


…そ、そういう。

コト…?



『ス…ギッ…』


…早る気持ちを抑えて。椅子に座り…



『パラ…』


…綴られし

ページを

捲る…



………



「えっ…」


……


『コポコポコポ…』



「…そ…そ。そ…」





















「…」


【烙花】…とは。文字通り

烙花という意味だった…



「…」


封印されていた溟王が蘇り。魔王の力を呼び覚まし。

世界樹を焼き払った。か…



「…」


…”あの子”が。

”こんなコト”を書かせるとは思えない…



「…きっと、あの子を大切に思う”ダレカ”の。入れ知恵ね…」


…本によると。

世界樹が焼き払われたのは3ヶ月も、まえの事だ。


あの子達が天空回廊に出発するのを見計らってから…

…魔族が罪を背負うのだ…と、いう事を悟らせない為に…

タイミングを見計らって出版した可能性が高い。



「…”あの”魔王様を助けだしてくたのだもの。それくらいの面倒は…背負って当然。かもね…」


…魔族にとって【魔王】は、

 エルフにとっての【世界樹】のような存在なのだそうだ…


生まれも育ちも姿形も信じる神さえ異なる、少数民族の寄せ集めに過ぎない

【魔族】が、ひとつに団結できたのも【魔王カエン】のカリスマ性あってこそ。


…逆に言えば、

魔王が居なければ魔族は【魔族】じゃ、ない。

彼女は魔族の拠り所…アイデンティティ…であり。

魔族”そのもの”と言っていい存在だ。


ソレを手に入れる為ならば。

全エルフを敵に回しても…



「…もっとも。」


…あの子のことだ。

ちゃっかり、何かしらの”(けいやく)”をしているとは。

思うけど…



「…ふふふ…」


…まあ、魔族のことなんてこの際、どうだっていい。

大事なことは…



「…面白い物語を。ありがとう…魔女。ちゃん…」


…この、退屈な日常に

大きな刺激があったコト。


長年の恨みが…その1つが…晴れたコト。





















「…ざまぁみろ。毒花…」


…とんだ喜劇が。あったものだ…



「…ふふ。ふふふ…」


…笑わずには。

  いられない…

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