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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 060_洛花の夜⑤

「・・・セト。」

『!』

「サラ・・・」

『『『グググルルルゥ!!』』』


「・・・全部燃やせ」


”魔法に飲まれた”・・・なんて。

そんな言い訳は通じない・・・



『!!』

『『『グブオ゙オ゙ォ゙ォ゙オーーー!!!』』』


・・・あの時。

私の瞳には確かに。


倒壊寸前の世界樹の麓・・・そして中腹に・・・


倒れ。

しがみつき。

叫び。

絶望するヒト・・・人間や魔族・・・忘れてはならない"彼ら"の姿が


確かに映っていた・・・



「・・・ファイアー」


・・・けれど魔女は

悪魔以上に悪魔な私は。


鬼畜な魔女は

悪意に満ちたヒトリの魔ノ(わたし)



ソレを無視して

悪意のままに



『『『ドガガガガガアァァァーーー!!!!』』』


3つの火星で森を焼いた・・・



「・・・」


・・【火星(マルス】は。

太陽(アポロン)】のような爆発力はないけど

【燃焼】という意味では、より、強力な魔法だ。


直視すれば水晶体を沸騰させるほどの赤外線を容赦なく放ち。

万物を焼きながらユックリ落下し・・・



『ズ…ッヴォン!!』


・・・と。

深夜の森に紅蓮の花を咲かせて

木々と毒素を焼き払い・・・



『グギャギャギャギャ!!!』


・・・7千年間積み重ねられた悪意の炎で

全て・・・そう、スベテを焼き尽くすまで。

燃え続ける



「・・・・・・」


冥王星(プルートゥ)】と同じく。“燃焼反応”をエネルギー源と

できるこの魔法は・・・自分で言うのも難だけど・・・


【魔導の極致】

だと、思う。



「・・・・・・んふっ・・・」


憤怒の炎・・・紅蓮の花は

もはや”生き物”・・・んーん。

”意思ある現象”といっていい存在だ。


発現すると、まず、周囲の可燃物に手当たり次第

襲いかかり。

ソレが無くなると、魔力を消費して燃料を自発的に

生み出すことで燃焼現象を維持する。


”世界樹”などという特大の燃料を飽食した

”この火星”の炎が消える日は、


きっと。来ない・・・



「・・・んふふふふふふふ・・・」


緑一色だった森は黒一色の灰に代わり。

毒付いた花壇は、清らかな紅蓮の花園へと代わる。


あぁ、なんと美しいことか・・・・



「・・・ざまぁ、みろ・・・・」


私を・・・私たちを

苦しめ、嘲笑った代償をとくと味わうがいい。


7,000年の努力がひと晩で焼失する様に

絶望するがいい。


魔女に手を出すと、どうなるか・・・



「・・・思い知るが。いい・・・」






「んふっ・・・」






「んふふっ・・・・・・」











「んっ、ふ・・・ふふふふふふ・・・・・・・・・」



・・・

・・





















……

………



「フォニアお姉ちゃん!!」


ソコはまるで

“地獄の釜の底”だった…



『ググゥ…』『クククゥワ…』

「近付くのは危ない…だって!?…そんなの見れば分かるよ!でも…ほ、ほおっておけないだろう!?」


夜明け前の空を照らした炎光と轟音…


…心当たりのあったぼくは大急ぎで

水龍に乗って…彼女に教えてもらった定理で…駆けつけた。

そんな、ぼくの

瞳に映ったものは

紅蓮の大地と憤怒の空の只中で…



「んっふふふふふふっ・・・!」


…破壊を愉しむ

ひとりの【魔女】だった…



「おねーちゃーん!!」


ココに壮大な森があったなんて…

いったい、誰が信じられるだろうか?


あったハズの里も。森も。近くの湖すら飲み込んだ紅蓮の海は

紅くドロドロと波打ちながら

水龍を躊躇(ちゅうちょ)させる熱を帯びて拡がり


空を妖しく染めていた。


現実味のないその景色に生き物の気配など

ある筈も無く…



「ふふっ、ふふふふふふ・・・んふふふふふ・・・」


…多重に重なり廻る

黒と紅蓮が織り成す魔法印の真ん中で

ただひとり(わら)う姿は

矮小(わいしょう)なヒトの想いや営み、積み重ね。

その、全てを嘲笑(あざわら)


【真理】

“そのもの”の(よう)にみえた…



『グ、ググゥ…』

「が、がんばるんだ!」


『ククゥ、クゥ…』

「あとっ…ちょっ、、っ、…ちょっ、ちょっとダケ!!」


なにか…見えない力が働いて

ぼくの水龍は近づく事さえ、

できずにいた…



『『『『『ブシュルルルゥ…』』』』』

「えっ…」


…さらに。



『『『『『ブシャアァァ!!!』』』』』

『『グクゥ!?』』


母星の周りを駆け回る【”水”銀の”星”】が!?



「うわぁっ!?」


5つの頭を

時に(つるぎ)に時に盾に。

時には蛇の姿に変えて

襲いかかってきた!?



『ググッ!』


母星の力を受けた蛇の星は

”操作”に長けた水龍さえをも…



『クゥッ!!?』


…う、上回り!?



「ロンワン!ローツェン!?」


ぼくに…め、溟王であるぼくの水龍に

傷まで負わせた!



「だっ、大丈夫!?!?」

『『グククゥ!!!』』


(さいわ)い…



「そ、そう…よ、よかったよ!」


…鱗が何枚か剥がれただけで。

無事だけど…



『『ゥゥゥ…』』


…これ以上。

【虹玉】で進むのは無理か…



「マズいなぁ…」


…まさか。

こんなに距離がある場所にまで影響を与える

超々大規模魔法を…しかも。コレほどの威力で…発現できるだなんて

思っていなかった…


魔法に飲まれている”せい”もあるケド。

でも、だからと言って…



「…コレじゃ。どっちが【溟王】だか分からないよぉ…」



…なんて。毒づいたけど

呑気に構えてもいられない。いくらお姉ちゃんでも、”これほどの魔法”を

長時間維持するコトなんてできないハズだ。


そう、遠くない内に魔力切れを起こしてしまうだろう。




「あのまま気絶でもしたら…」


マグマの海に…




「…」


…しかた無い。



「すー…」


手荒なマネは

したくなかったけれど…



「はぁ~…」


…正気に戻ってもらうには



「…『リブラリアの理第2原理』」


コレしかない!



「『綴られし定理を』…」


魔法を唱え始めると…



『『『『『ブシャアァッ!!』』』』』


すかさず!

“蛇の星”が襲いかかってきた!

けれど…



『『グクアァ!!』』


頼れるお供がついているのは、なにも

お姉ちゃんだけじゃない!!



「…『今ここに 海よ そなた命の坩堝(るつぼ)』」


母星の力を借りて自由に飛び回り・形を変えて襲いかかる蛇と

無数の水玉を操り・長大な身体で襲いかかる龍による

壮絶な戦いを瞳に捕えながらも…



「『せいの全てを育んで 死の(すべか)らくを受け止める』」


…集中を切らさず!

詠唱を続けると…



「…ふんっ!」


突如現れ

振り下ろされたのは…



「…!?!?」


…て、天使の斧!?



『パシャんっ…』


…さっ、幸い!?

水化(すいか)】して無事だったけど…



「…ふむ。ロードの力を借りてノーモーションで。ヒトの認識速度を超えた1p(ピコ)秒で攻撃したというのに…。コレはもう、速度云々(そくど うんぬん)の問題では無いな…」


こっ、この天使っ!!



「ぼっ、ぼくじゃなかったら死んでたよ!?」

「…ふむ?殺すつもりが無かったとでも思うのか?」


天使のせいで詠唱が中断しちゃったじゃないか!

コレじゃ、ジンを喚べないよ!?



『『『『『ブシュルルルゥ!!』』』』』

『『グクルルアァッ!!』』


ロンワン達は蛇の相手で

余裕がないっていうのに…



「…まあ。いい。」


…魔法に飲まれたお姉ちゃんの”魔法を完成させたい”

という強い思いが彼女の召喚獣を突き動かしているのだろう。


蛇と天使の動きは”暴走”と言っていいモノだけど。

その攻撃は的確で効果的で…”万象”の名に相応しい…


スキの無いモノだった…



「次は逃さない。母星(マザーアース)に落してやろう…」


…って!

考察してる場合じゃない!?



「し、『雫よ 天の恵みよ』ウォーターボール!!」


“あの”お姉ちゃんの魔法をまともに食らって

無事で済むハズがない!


魔法の水球を生み出して…



「…えいやっ!」


水化した身体を同化させて

飛び出し…



『…ッ』


…た



「…っくうぅっ!!」


直後!!

迸る魔力を背に感じ…



「まぁ〜けーるぅ〜かぁ〜!!」


…ながらも!

このままじゃ…お姉ちゃんだけじゃなく。

同士や、この大地まで失いかねない!?


諦めるワケには…






「…跪け。」

「っ!?」


…けれど。



「…悪魔めが。」


水化していた体が

何故か、人型に戻っており…



「ぐはっ!!!」


空中にあった体は地に落ち。



「つ〜…つっ…!!」


有無を言わせぬ力で



『ジュグゥゥ…』

「くはっ!?」


赤熱した大地に

膝立ちにさせられ…



「…貴様如きが”母なる星”から逃れられると思ったか?逃げ切れる…とでも?」


共に落ちた水は瞬時に気化し。



「くっ…があっ!!」」


ぼくの体からも白い湯気が立ち昇り…



「無力で無能な悪魔めが。ロードの物語を穢すな…」


…黒曜の天使が振り上げた斧を



「はあっ…はぁ…」


…ただ、見上げるコトしか

できなくて…






『ブフォンッ!!』

フォ…フォ、フォニアたん。

怖い…怖すぎるよ………

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