表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
444/476

Chapter 053_繚爛たる花の森

「来たか…」


世界樹を臨む美しい庭・・・



「・・・」


族長宅の

幾つかの扉を通った先の裏庭には街の喧騒も届かず。

葉擦はずりの音と小鳥の歌小川のせせらぎが

平和を奏でていたのだった・・・



「…座れ。」


屋敷の随所に見られた警備も侍女も

ココにはおらず。


庭の中央に置かれたテーブルセットの椅子を引く、

ひとりのエルフだけがいた。



「・・・・・・」


『気をつけて…』

お供達の声を受けながら、



「…」


言葉少なに私を待つその椅子に・・・



「・・・」


腰を下ろすと



『…』


僅かな土擦れ音と



「…」


甘い花の香りを感じさせながら。



「・・・」


銀の長髪をなびかせるエルフと視線を交え

ベラドンナの花が添えられたテーブルに向き合う・・・

 


『コポコポコポ…』

「・・・」


エルフは・・・慣れた手つきで・・・テーブルに用意されていた透明のカップに


2回

お湯を注ぎ



「…”()”の茶…【花茶(ホアチャ)】だ。」


・・・まず、私の前に。

ついで向かいの席の前にカップを置いて



「・・・」


警戒する私に一瞥もせず、

優雅な仕草で席に着き



「…心配せずとも毒など入れん。」


・・・と。

咲いた花がくゆるカップに口を着け・・・



「そんな無粋な事…」

「・・・」


「…茶に。失礼であろう…?」

「・・・・・・」


「…」

「・・・」



・・・

・・






『カチャッ…』


美味しい・・・・





















「…名は?」

「・・・・・・・・・フォニア。」


「…」

「・・・」


「ヴィオローネ・ガーデナー・フラゥル・ベラドンナ。」

「・・・ガーデナー・・・族長様でしたか。小娘相手に光栄でございます・・・」


「ふっ…。”ただ”の小娘ではあるまい。魔王を解き放った魔ノ女ではないか。」

「・・・それは・・・御生憎様で。」


「っ、、、。…まったく。とんでもないコトをしてくれたな小娘。溟王の魅了に当てられたか知らんが…私達がどれほど長い時間と努力と血をもって、平和を勝ち取ったと思っているのだ?…それを。僅か数日で…」

「・・・お気の毒で。」

「ッ!!」


感情を突沸させた族長殿は立ち上がり

私に向けてカップを・・・



『『『ブシュるるるぅ!!』』』



・・・ケド。



「っ!?」


指輪のヒュドラが傘になって

ソレを弾き。

更に・・・



『『『『グクリュリゅりゅぅーー!!』』』』


上空で待機していた4橋の水龍が

一斉放水



「ぐはっ!?」


『ズベシィーンッ!!』と、

族長殿は、世界樹に打ち付けられた・・・



「・・・お茶に失礼・・・なんじゃ、なかったの?」


ヒュドラと水龍たちに目配せし、

ひと息ついた私は・・・



「ぐっ…っ…」


・・・びしょ濡れになって立ち上がり。

ヨロヨロと歩み寄る族長殿を・・・




「・・・」


・・・ボンヤリと。

眺めながら・・・



「・・・ふぅ~・・・」


お茶を一口。そして・・・



「・・・見た目もキレイで味もいいのに・・・免疫を持っていないせいで。私たち”異大陸人には毒”になるだなんて。勿体ないわね・・・」

「…まったく。言葉遊びでロードを騙そうとするなど小賢しい…」

「・・・んふふふ。まぁ、まぁ・・・コレくらい覚悟してたんだから。良いじゃない・・・」


『そっ…』っとやって来た、

ウリエルと共に


『ドサッ…』っと、倒れ込むように座り直した

族長殿を見下ろし・・・



「…ず、ずいぶんではないか小娘。妹がどうなっても…」

「・・・冷静さを失っておられたので頭を冷やして差し上げたダケですよ?それに、人質をとりたいのなら・・・ちゃんと。”リリーの里”の者に命じて連れてきてからにして下さいね?」

「………」


なんと、このエルフ!

ティシアを人質にとった・・・という脅迫文を送りつけておきながら、

肝心の人質を”まだ”手に入れてないというではないか!?



「・・・”リリーの里”・・・と、いうとフォルテピアノ殿・・・哲学者(フィロソファー)殿の生家ですね?・・・”親”魔族派の筆頭であるあの家が裏にいたのなら【陽月】の幹部が誘拐に加担していたのも納得です。フォルテピアノ殿を失って危うくなったため、ベラドンナ家に近づく強硬策に出た・・・と。いったところでしょうか?」

「…」


図星。か・・・



「はぁ〜っ・・・。種の存続がかかっているというのに。こんな時にまで権力争いだなんて・・・【賢者】が聞いて呆れますね。」

「…」


「・・・”お父様”もきっと。呆れていますよ・・・」

「…」



ふむ・・・この人。

なかなか(したた)かだな・・・


交渉を有利にしたくて”子どもたち”を見せたけど、

むしろ、手の内を探られちゃったか・・・



「それより…小娘。ひとりで来い…と。記したハズだが?」

「・・・この子達は”契約”した召喚獣よ。紛うコトなき、私の一部。」

「ふっ…詭弁だな。」

「・・・ソレが理というもn・・・」

「妹がどうなっても…?」

「・・・」


「ココに”は”いない…と、言っても。手の内にあることに変わりはないのだぞ?」

「・・・・・・」


むぅ・・・



「…私が言っている事の意味が解らぬ訳ではあるまい?」

「・・・・・・・・」


水龍はともかく・・・ウリエルと。

なにより、仕込み刀であり盾でもあるヒュドラを見せちゃったのは

マズかったなぁ・・・



『も、申し訳ございません。ロード…』

『『『りゅりゅぅ…』』』

「・・・」


ま。

やっちゃったモノは仕方ない・・・・



「小娘。貴様は”心”を読むというから先に言ってしまうが…もし私にナニカあれば。ソレは即座に全ての子らに伝わり。その場で処分する手筈になっているからな。」

「・・・そ、そんなコトできな・・・」

「契約属性魔法を宿している貴様なら分かろう?…そういう”規則”だ。」

「っ・・・」


規則魔法(コンスティテューション)を宿す術者が・・・?



でも、たしか・・・

ウリエルが前に。高位の契約属性魔法を宿した人物は、歴史上ひとりしかいないって・・・



「・・・」


真相を確かめる為に心の中で

ウリエルを問い詰めると・・・



『…』

『・・・う?・・・ど、どうして答えないの・・・?』

『…』

『・・・まさか・・・熾天使の”あなたを”縛る契約!?』

『…』

『・・・そんな・・・』


コープルー家・・・奴隷商人ギルド・・・が実際にやっていた通り、

契約属性魔法”で”契約属性魔法を縛ったり、

ルールを改変する事は可能だ。


だとしたら・・・



『っ…し、しかしロード!”コチラの”契約属性魔法は”コチラの住人”にしか通用しません!異大陸出身のロードに通用するのは…』


規則魔法が行使されている・・・と、いうことは【約束の塔】も【熾天使ウリエル】も。


そして、他の契約属性魔法の知識も”ある”と

思ったほうがいいだろう。



「・・・」


だとすると・・・



「…先ずは…そうだな。邪魔な召喚獣を全て”還せ”」

「っ・・・」


還せ・・・か。

・・・ま。まぁ・・・さすがに。

体内のヒュドラには・・・



「…おっと。先程の”銀の蛇”…黒の魔女と同じだな?」


むぅっ・・・



「だとすれば…”同じコト”をしておろう?…体の中”も”。還せ。」


バレてる・・・



「っ・・・」


ヒュドラは私の魔力に”なじんで”いるから・・・


仮に、素知らぬフリして”隠したまま”にしていても

バレる可能性は殆ど無い。

けど・・・


・・・万が一。

その状態で術が解けてしまうと魔法核である”水銀”が

体内に流れてしまうので非常に危険だ。


そして、残念ながら・・・

5つあるヒュドラの頭のうち。ティシアに持たせた1つダケを残す・・・なんて、器用なコトは

できない・・・



「・・・はぁ・・・。・・・ツィーアン、ツィーウー。フーウェン、フーシェン。ヒュドラに・・・ウリエル。・・・みんな。還りなさい・・・」


私の言葉と共に・・・



『『グクルルルゥ…』』

『『フピリュリュゥ…』』


・・・水龍達は。心配そうな眼差しを残して

空の青に霧散してゆき・・・



『『『『りゅりゅぅ〜…』』』』


(こうべ)を垂れたヒュドラは

悲しげな声と一塊(いっかい)の銀水を地面に残して

気配を消し・・・



『…』


・・・最後に。

熾天使は・・・



「・・・」


(うやうや)しく跪いて

姿を消したのだった・・・



「コレで…全てだな?」


毒花のその言葉に



『…』


帽子を揺らし、



『『『…』』』


”預かりモノ”を指に嵌めて



「・・・ん。」


緊張で『トクトク』早打つ胸を

ひた隠しながら・・・



「・・・それで・・・」


・・・あくまで、冷静に。



「・・・私に。何を望む?」


余裕たっぷりに



「・・・唱えてみろ。毒花。」

林檎です!


すっごい久しぶりに活動報告書きました!

小説のコトほぼ(まったく)書いていませんが・・・


・・・そ、それでも良ければご覧ください。


・・・よろしくね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ