Chapter 051_フォレストサバイブ④
林檎です。本話もちょっと短いです・・・
ご了承くださいませ
「はぁっ、はぁっ、はぁ…」
夜…もしかしたら。日を跨いだ深夜…の
森の中…
「い、急いで下さいご令妹様!」
「もう少しです!」
「頑張れぇ!!」
ね様達が待っている(ハズの…)ローズの里を目指して私達は走っていた。
魔物に追われながら。必死に…
「はぁ、はぁ…き、木の上に避難は…」
「無理です!」
「私達を追っている果蝸牛はむしろ、樹上の方が速度を増します!」
「マ、マイマィ!?あれカタツムリなの!?渦巻きないよ!?それに…はっ、走らないと追いつかれちゃうホド速いよ!?」
「ソレは…この森に暮らす誰もが思う事ですが…」
「魔物ですから!」
「…オマケに。カタツムリですが肉食で凶暴です。自分より大きな獲物…もちろん。ヒトも…に群れをなして取り付き、生きたままボリボリと食べます…」
「ふえ〜んっ!テーの知ってるカタツムリと。ぜんぜん違〜うよー!」
ヘビちゃんを失った私達の旅は何倍も過酷なモノとなった。
魔物から隠れるコトも、戦うコトも。
夜眠るベッドも、テーブルと椅子も…ナイフさえ失って…
…私は、ようやく。
【サバイバル】
という言葉の意味を知った…
「ま、まほー…はぁっ!?」
「はいぃっ!?」
「魔物は効かないのぉ!?」
今になってみれば、
高位の召喚獣であるヘビちゃんでさえ、”やり過ごす”
ことを選んでいた魔物達が相手だ。
「み、水には弱いので…」
「カタツムリなのに!?」
「そ、そうみたいですね…。少しでも濡れていると取り付けないようです。ですので…」
「フォ、【孔穴魔法】に落として水魔法で水没させるのが有効とされております!」
「ご、ご令妹様はお出来に!?」
武器も装備も満足にない(私なんて寝間着だし!?)上。”私”という
お荷物を抱えた私達が敵うハズ無かった。
「は…は、走りながら第3階位の【孔穴魔法】なんて無理!水魔法は第1階位の【湧水魔法】まで!」
「我々3人は木属性と風属性しか…」
「「「「…」」」」
「「「諦めましょう!!」」」
「ふえぇ〜んっっ!!」
できるコトは
”隠れる”コトと”逃げる”コトしか、なくて。
昼も夜も逃げて隠れて。
隠れながら眠って。逃げながらご飯を口に入れて。
出遭った敵が諦めてくれるコトを
期待するしかなかった…
………
……
…
「ふぅ〜…ふぅ〜…」
「はぁー、はぁー…」
「ふーっ、ふぅー…」
当然…の。コトだけど…
魔物がいっぱいで。エルフの庭でもある森のさ中
隠れ続けて、逃げ続けるコトは難しい…
「…ごめんね。みんな…」
子どもの…しかも人間である…私が
夜の森を大人のエルフと同じに逃げるコトなんてできなかった。
力尽きた私はザイロフォンさんとリゾルートさんに
交互に背負われて…途中で居眠りまでして…
…そうして今を生きている。
もし3人と出会っていなかったら。
とっくの昔に…
「いっ、いえ…」
「ご、ご令妹さまっ…は…ま、」
「まだっ…子ども…なのっ。ですから…」
…はじめから分かっていたコトだし。
旅の中で何度も思い知らされたコトでもあるけど。
「っ…んぅ………」
でも…やっぱり悔しい。
ね様は。
今の私と同い年の時。既に魔女に命名されていて…
1人でダンジョンにも行ってたし。魔物も倒していたハズだ。
「…」
ソレに引き換え
私は………
「それに…」
魔物をやり過ごし…そのまま座り込んで休憩していた3人の隣で
「………う?」
悔しさに下を向いていた私に声をかけた
リゾルートさんは…
「…、」
玉の汗を流しながら。荒い息を飲み込んでから…
「…魔女様から私達を救ってくださるコトができるのは…ご令妹様。あなただけなのですから…」
唱え…
『…』
その時。
だっ。た…
「え…」
「…っ」
「?」
空が…森が。
急に明るくなって…
「…う?もう…朝?」
自分で言って難だけど…そんなハズは、無いの。
だって、
この”森”は深くて。
お昼になっても暗いまま。
朝日も夕日も届かない…ハズ…
「っ!」
疑問符を浮かべていた私の横でナニカに気付いた
グリッサンドさん…この中で、いちばん気配察知に優れている…が
隠れていた大きな木の洞から飛び出していき…
「そ…まさかっ…」
半歩たじろいでから…
「っ!」
…振り返り。
「にっ…に、逃げましょう!!」
そう、叫んだ。
「ど、どうしたのグリッサンド!?」
リゾルートさんと…
「そんなコト急に言われても、ご令妹様も…もちろん私も…困惑するばかりだ。事情を説明しろ、事情を…」
…ザイロフォンさんの言葉にグリッサンドさんは
「特大の魔法が来ます!」
その言葉に!?
「なっ!」
「えぇっ!?」
「うぅ!?」
驚く私達をヨソに
「間に合うかは…わ、分かりませんが!逃げる外ありません!!」
「え!えぇ!?」
「ちょっ、ちょっと…」
「まてっ…」
「さ、さぁ!はやく!!」
そう言ってグリッサンドさんは
私達を強く急かした
「う!?うぅっ!?」
特大の…ま、魔法!?
…でも。私…だけでなく。ザイロフォンさんとリゾルートさんも、その顔に困惑の色をたたえている。
グリッサンドさんは”魔法”と言っていたけど…
…明るくなったこと”の”コト…だよね…?
でも、魔法行使の気配。感じなかったんだけど…
でも、もし。
本当だとしたら…
…ソレはきっと。
ずっと遠く…効果範囲の遥か向こうで行使された魔法が
私たちに襲いかかるというコト
ソンなコトができる人物なんて…
「…」
も、もしかし。て…
『…』
次の瞬間
『ッ!!!』
お空が『カッ!』っと”紅蓮”に染まり
「ごっ…まっ!!」
「ふぎゃっ!?」
私の体は、
飛び込んできたグリッサンドさんによって地面に突き倒され!?
「おいっ!!」
「グリッサンド!?」
側にいた2人…ザイロフォンさんとリゾルートさんの叫び声に
反応することもできないまま…
「あ…あ…………」
震える指の。
その向こうで………
「…森。が………」
…紅蓮の閃光は
森を焼き。
天の緑は焼け爛れて。
晴れ上がり…
「え………!?」
「アツ…っ!」
久しぶりに臨んだ空の…
…その上に
「火の…星…」
でも…紅蓮?
「ね様………?」




