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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 048_フォレストサバイブ①

『グヴルルルゥ゛…』


…ソレは。

突然やって来た…



「っ…」


「魔物!木登る、急ぐ!!」

ね様”の”によく似たその字を書いたヘビちゃんは


驚きの悲鳴を上げるより先に私を飲み込み。

そのまま巨木に『ニョロ』っと登り。


木の上の…かなり高い場所で…私を吐き出し



『シュルルルル…』


静かに…しかし、鋭い金色の瞳で

”ななめ下”を睨み。


数十秒後…

木の合間に”毛むくじゃらのナニカ”がチラッと見えた途端、

再び私を飲み込んで。


今度はそのまま、

”木のコブ”みたいに擬態して。


体の内側…私の目の前に(たいら)で銀色の…文字盤…を生み出して。

ソコに文字を浮かび上がらせて…



『…強い。このままやり過ごす。呼吸を最小限に。絶対に意識を向けないで。身動き一つが命取りになる。』



…と。

伝えてきたのだった…



「っ…」


やり過ごす…


ヘビちゃんのその言葉には、ココにはヘビちゃん1頭だけしか居ないとか、

ね様の助けが無いとか、私がいるとか…


そういったコト全部踏まえての”最適解”に違いない…



『コ、コクコク…』


ソンナコト言われて

反論できるはずもない。


私はただ素直に従って。

両手でお口を塞いで



『ズジュッ…ズズゥン…』


…重く。



『メキッ…バキンッ!』


鈍い足音に…



「…っ………」


…うち震えていた。

そして、その音がいよいよ間近に…足元まで迫り…



『ブヒュッ、ブヒュッ…』


ひっ…

…さ、探してる!?




『っ!?』

『!!!』


私の意識が…

ほ、ホントに!ホントの一瞬だけ…




『ブブアアァォーーー!!!』

「っ!!」


魔物に向いちゃった…



『りゅ!?』


その瞬間



『ボコンッ!』


銀色の…『トプトプ』とした水みたいになって

崩れたヘビちゃんは



「ゴボッ!?」


私を、乗っていた枝をすり抜け

流れ落ち!?



『ブシャアアアァァ!!!』


枝の下、

鈍く光を放つ槍に変わって!?



『ブブアアァォーーー!!!』


巨木を揺らして登り迫る魔物に…

真っ直ぐに!



『シャアアァァァーー!!』


突き下りた!?



『ブッ!!』


その刃に!

木を登っていた魔物は


太く鋭い爪を!?


『フォンッ!!』


振り上げ…



『シャ!』


…た!ケド!



『ブファ!?』


魔物の爪が触れる直前!!



『ブシャルルアァ!!』


…と!?シーツみたいに!?

大っきな布状に拡がったヘビちゃんは



『ブワァッ!?』


魔物を包み!?!?



『ズッ、シャン!』


『ボコボコ』と歪な皺を作りながら鋭い金属音を上げ



『ブギュア゙ア゙ァ゙!!?』


魔物の悲鳴と共に!?



『ジャギン!!』

『ブブォ!』


『ギンッ!!』

『ギュボッ』


『シャギィン!!』

『ゴボッ…』



…へ、ヘビちゃん。が…

魔物を覆っているから…



「っ…」


…直接は。

見えないけど………



『ギンッ!!』

『ギュボッ』


…ボコボコと蠢く銀の布。

肉を穿つ金属音…



『シャギィン!!』

『ゴボッ…』


空中に…そして巨木に飛び散る赤と

地面に落ちる苔むした黒茶の剛毛と…赤。赤アカ(あかい)…ナニカ



『ジャキンッ!』


落下しながら…悲鳴すら聞こえなくなっても…刺突を止めない

高位精霊と



『…ズズゥン!』


…ナニカの塊



「っ…っっ……」





















『ブシュルルルゥ…』


…や。

やがて…



「っ…ひっ………」


…静かになって。

遠く…風と木々と生き物の声だけがスる。静かな森に戻って…



『るるる…』


スベテを終わらせた魔女の魔蛇は、

螺旋を描いて巨木を登り…



「っ、っ…。。。」

『…』


…幹にしがみつき。

驚愕と悔しさと心細さで泣きベソをかいていた私を



『る〜…』


…そっと。

お包みして…



『………るる、るる…』

「っ…っくっ…」

『……るる、るるぅ…』


冷たい…でも、柔らかい。

“あの”お手で私の頭を。ゆっくり、ゆっくり…



『…るる…るる………』


…私が落ち着くまで。

なで続けてくれた…



………

……





















「わ!わーっ!!…ザイロフォンさん!リゾルートさん!?グリッサンドさんも!!」


巨木から下ろしてもらった私は「見つかっちゃうから…」と。街道に近付きたがらないヘビちゃんを


「最低でも街道沿いに歩かなきゃ!森の中をいつまでもウロウロしちゃうでしょ!」


と、説得して。

ヘビちゃんの先導で森の中を歩くこと…た、たぶん。

1分くらい!


想像以上に近くにあったエルフの街道にたどり着いた!

そして…



「「ご令妹様!?」」

「…と。蛇様。も…」


森を貫く真っ直ぐの道にボロボロな身なりで。

道端に落ちていた枝を手にした3人のエルフが…



「わーわー!3人も(さら)われてたのね!?私だけじゃなかった!」


心細かった私が3人に駆け寄ろうと…



『ブシュルゥ!』


…した途端?



「…う!?」


…何故か。

ヘビちゃんは私を守るようにトグロを巻いて



『ブシャアァッ!!』

「「「…」」」


エルフ3人に

牙を向けたのだった…



「…う?う?…ど、どうしたの?ヘビちゃ…?」


…そんなヘビちゃんの顔を見上げると



「蛇様は…我々を。疑っておいでなのです…」


ヘビちゃん…では、なく。

ザイロフォンさんが答え…



「…疑ってる?」

「そ、そのぉ…」

「ご令妹様が彼等…ど、同氏である”花の(フラゥル)”に襲われた時…」


…ソコまで言って。



「「「…」」」


下を向いた3人は…



「…我ら3人は抵抗しなかった…で、できなかったのです。」

「できなかった…?」


「…ほ、本当に御免なさい!ご令妹様っ…」

「…う?」


「恩知らずにもゲオルグ様とローズ様を見捨て…ご、ご令妹様が奪われる姿を傍観(ぼうかん)し。浅ましくも…」

「…ボ~Can?ましくも?えっと…ごめんなさい。難しい言葉は分からなくて…」

「は?…はっ!?い、言いかえます!…ご、ご令妹様が奪われるというのに。それを、ただ見ていて。…け、軽率に…い、”いやしくも”…」

「あー…うん。分かった。…”ナンもしなかったって”コトだね…」

「は…はい…」


「か、”解放してくれる”と言う彼等に。素直に従ってしまったのです…」

「あ…」


…なるほど。



『ブシャアァァー!!』


ヘビちゃんは。ソレを見ていたから…



「…ソレでも3人を殺さなかったのは…”契約”があったから?」


視線を移して尋ねると…



『りゃっす!』


さらに…



「…ね様のモノである以上。ヘビちゃんは手を下せないもんね…」

『りゅ〜…』


…その結果。

“森に放置”という答えが導き出されたのだろう…



「ふむー…」


…エルフの3人は。

ね様から私達を守るようにお願いされてたハズだ。


でも、ローズさんがときどきボヤいている通り。

ね様は自分の奴隷に、あまり強く命令しない(ルクスお兄ちゃん除く)し、する時も「お願い」とか「して欲しい」といった言い方をするコトが多い(フルート君も除く)の。


だから、命令おねがい(スキ)だらけで。

破ろうと思えば破れちゃうんだと思う…



「…ね、3人とも。ソレならさぁ…」


ね様は敵とみなせば躊躇なく殺しちゃうコワイ魔女だけど、身内に対してはトコトン甘いお姉ちゃんだ。


ね様にとって”自分の奴隷”は

敵じゃ、ないんだと思う。


裏切られる可能性なんて考えてないのかもしれない。


ソコはね様のダメなところだし…同時に。カワイイところでもある。



「…この森を抜け出すまで。私を守ってよ。」

『ブシャッ!?』

「「「えっ!?」」」


「ヘビちゃんは強くて頼りになるけど…でも。食べ物とか。帰り道とか。夜寝るときとか……エ、エルフと遭っちゃった時…とか。…ヘビちゃんじゃ、対処できないコトもいっぱいあるし!」

『りゅ!?…りゅ〜りゅぅ!ぶしゅ…』


「その点!花のエルフである3人はこの森での生き抜き方を知ってるでしょ!?…ね様のいる。ローズの里の場所も…」

「そ、それは…」

「まぁ…」


「無事にね様の所に帰れたら。私からね様に3人を助けてあげるようにお願いしてあげるよ!」

「…そ。」

「れ。」

「は…」


3人は、ね様に無理矢理奴隷にされちゃったんだから、

「死にたくない」「解放されたい」と願うのも当然だ。


ゲオ様とローズさんを見捨てたことに関しては悲しいけど…でも、

そもそも3人は敵さんなんだから…ソレは、もう。

”仕方ない”


ね様がする事は、いつも無茶苦茶ばっかり!

だから…”仕方ない”。


魔女様のワガママは。

ドコカでダレカが許してあげなきゃ…”仕方ない”。


…もちろん。

ね様の家族じゃないヒトは”ソウ”は思えないだろうけど…


私は…ほら。

ね様の味方で、”魔女の妹”だからね…



「それとも…3人は逃げ切れると思ってるの?万象の魔女…夜の魔女様の。おっきな瞳から…?」


こんな脅迫(いいかた)するのはズルいだろうけど…でも、

本当のコトだ。



「そ…」


ヘビちゃんから話を聞いたね様は、きっと

3人のことを許さない。


けど…



「…それ。は…」

「っ…」


…例えソレが。魔法の力であったとしても。

昨日まで3人が私達に尽くしてくれた事実はリブラリアに”綴られたコト”だ。

ソレを無下にするのはカワイソ過ぎる。



「さぁ…」


それに…



「…どうする?」


生き物が”生きたい”と願うコトは…きっと。

”理”だから…

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