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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
438/476

Chapter 047_静かな朝


「・・・っ!!」


翌朝

カレント2,187年 恵土の月 16日

天気は晴れ・・・



「まじょさ「黙れっ!!」っ…もっ、申しわ…」

「黙れって言ってる!!」

「っ………。」


静かな朝だった・・・


「・・・役立たず!!」

「…」

「嘘つき!!」

「、………」


広場の(さわぎ)は魔法仕掛けの雷雨で煙さえ上げず。

力尽きたナニカが山積みにされ。

デコボコの地面では濁った水溜りが太陽の光を

鈍く反射していた・・・



「…それくらいにしておけ」

「でもっ!」


・・・ローズの里に帰った時。

ルクスの背中で眠りこけていた私は

揺さぶられて目を覚まし。


目覚めに・・・



「…聞こえんだろ。ふたりに…」


・・・2人の。

ゲオルグ様とローズさんという瀕死の家族を・・・



「ぅ・・・」


・・・治癒して。”ナニがあったのか?”を説明されて。

今に至る・・・



「…ご、ごめんよ。ごめんよお姉ちゃん。君は約束を果たしてくれたっていうのに…」


・・・昨夜

私がシアリアで戦っていた間に

魔族に匿ってもらっていた私の家族は襲われ。


里の下水道で瀕死の重傷を負って倒れているところを

発見されたらしい・・・



「っ・・・だっ・・・てぇっ・・・」


騒ぎ(ハルピュイアが居ないのには気付いたけど、そんな騒ぎになっていたなんて知らなかった・・・)を治めたフルートがみんなを迎えに行ったら・・・誰も。

隠れ家には居なかったそうだ・・・



「お、おい…」


ラバーラさん経由で捜しても見つからなくて・・・



「だって・・・だって。だってっ!」


隠れ家に下水への入口を見つけたフルートが捜索したら

瀕死の重傷を負った2人と。沢山の・・・


魔族と。

エルフの。


瀕死の重傷者と、幾つかの遺体。


そして、虫の息の2人を

見つけたそうだ・・・



「ひぐうぅっ・・・ティシ・・・あぁ、あぁっ!ティシアァ・・・」

「…っ……っはぁ〜……よ、よし…よし…」

「ティシアァ!」

「よしよし…」


妹は・・・見つからなかった



「・・・ひぐっ。えっく・・・」

「…ったく。キツネとチビも捜しに行ってんだ。すぐにみつか…」


「まだ見つかって無いじゃない!っ・・・っっ!ティシアァ・・・ごめんね。ごめんね。お姉ちゃんのせいで・・・に、2度。も・・・」

「っ、………すまん。」


フルートは・・・”とても”責任を感じてくれたみたいで・・・

ルクスの背中で寝ぼけていた私に

「ごめんよ…」と。『チュッ』とだけして。


スグに飛び出して行ってしまった・・・



「お、お姉…」


シュシュも。

フルートとほぼ同時に走っていったようだ・・・



「…っ!ヤマラージャッ!捜索は!?」


現場にはエルフの死体もあったけど。

大半は魔族”の”だったとか・・・



「そ、それが…」


・・・その上。

そもそも皆が匿われていた隠れ家はヤマ様が想定していたのとは”違う”小屋だったそうだ。

下水道へ通じる道があることも、当然。知られていなかった。

フルートが・・・風を読める彼が・・・居たから()()見つけることができた。


つまり、私の家族を案内してくれた魔族(それも、【デイジーの里】から一緒にやって来た【陽月】の幹部!)は最初から・・・



「なにやってるのさ!?ヤマラージャ!!しっかりしてよね!!」

「返す言葉も…」


・・・私がバカだった。

彼等を信じ過ぎていた。


エルフがそうであるように・・・魔族だって

一枚岩じゃない。


長くエルフの支配が続いた今。

魔族の中にだって、

魔王様に復活されては困る種族や個人が居るだろう。


近づくヒトの心は、概ねチェックしていたけれど・・・



「ぅっ・・・うぐっ・・・」

「!?…お、おい!ホントに大丈ぶ…」

「・・・だ、メ・・・かも・・・」

「おい!」

「・・・気持ちわるいぃ・・・」

「うをっ!?」

『『『るるぅ〜…』』』


相手の心の声が読める・・・とはいえ。ウリエルにできることは

今当(いま まさ)に考えている声を読む”だけであって。


唱えない限り、深層心理までは入り込めない。



「…蛇。もうちょっと低く…」

『りゃっす!』

「・・・あり・・・」


『『『りゃぁ〜…』』』

「・・・あ、あり・・と・・・うっぷ・・・」

「おいっ!!」

『『『りゅぅ!?』』』


質問するなり、何なり。

此方(こちら)から意識させて”考えさせ”ない限り

欲しい情報は得られない。


あの時はコンな可能性(コト)

少しも考えてなかったから・・・



「…横になってろ。後のことはやっとく」

「うぅぅ・・・」

「…よし、よし…」

「・・・ふぎゅぅ・・・」


・・・後悔。先に立たずとは、

当にこのコト・・・






「・・・ティシア・・・っ。。。」


ティシアが無事なのは間違いない。

でも、居場所は全くわからない。


ローズの里に隠れている可能性も無くはないけど・・・たぶん、違う。



「・・・ティシアぁ・・・。。。」


もしかしたら。本当に・・・



・・・

・・





















……

………



「くー…」



肌寒い風…



『ギャアギャア!』

『ギュヂュヂヂヂィ…』


ナニカの叫び…



「…すー………」






(テー)の。

“いつもの”目覚めはとっても贅沢なモノだった。


だいたいいつも、寝たいだけ寝かされて。

目が覚めると隣にシュシュちゃんかローズさん。そして、たまー…に、ね様が


微笑んで見守ってくれている。



そしてみんな今日最初の。

今日いちばんの笑顔で言ってくれるの


「おはよう」

って…



『トプンッ…』


…寝床はいつも。

シュシュちゃんが背負う魔法のリュックに入った

天蓋付きの大っきなベッドなの。

3人くらい寝れちゃうフカフカベッド!


寝る時はローズさんかゲオ様がお話ししてくれる事が多くて。

寒いと、シュシュちゃんがキツネさんになって温めてくれる。

暑いと、フルート君が魔法で涼しくしてくれる。


ね様はいつも。そんな私の様子をちょっとダケ見て。

「・・・お休み。」ってだけ言って。

そのまま自分の寝床に行っちゃうの・・・


・・・で、でも!でもね!

時間は短いケドでもね!!


ね様はいつも。

とってもとっても優しい…私を包み込む…大っきな瞳を向けてくれるの。


まるで、お母様みたいに…



「んんぅ…」


…旅のなかでも。

砂漠のど真ん中でも。

海の底でも見知らぬ土地でも。


私の夜は

思い出のルボワのソレと同じ。


柔らかくて温かくて。

不安なんて欠片も感じない


大きな引力の内側なの…



「…ふわぁ〜」


…そして。

その(はて)に迎える静かな目覚め。

それが【朝】というモノだった…



『るぅ〜…』


…少なくとも。

昨日までは…










『…』

「…ぅ………」


『る〜…』

「………ぅ〜…?』


「…?」

『…う………』


『…?』

「…?」


「…う?」「…る?」


…静かな朝

だったの…



「…ヘビ…ちゃん?」


深〜…ぁい。森の中…



『るるぅっ!』


トグロを巻いた銀色ヘビさんの『トプトプ』ベッドで目を覚ました私は…



「…」

『…』


ペロを『チロチロ』尻尾を『ひゅっひゅっ』と

動かす瞳の前のヘビちゃんに…



「…お」『るょ?』


…とりあえず。



「…おはよー…こしゃりましぃ………」


朝の



『ブシュルルゥ!』


ご挨拶を…





















「ふひゅーっ!」


その後…



『シュルル、ブシュルゥ!』


(おけ)”になった蛇ちゃんに【湧水魔法(スプリング)】で水を生み出し、

お口を濯いで。お顔を洗い…



「…あ、ありがと…」

『りゅりゅー!』


…タオルになった蛇ちゃんで

拭かせてもらった私は…



「でも…困っちゃったね。太陽も見えないから方角も分からないし…」

『シュルルルル…』


蛇ちゃんが”誘拐犯”さんから奪い取ったという

魔法鞄(ストレージバッグ)に入っていた

”葉っぱ包み具入り色おにぎり”を食べながら…



「…ね様とお話も…」

『りゅぅ〜…』

「…できないのかぁ…」


テーブルと椅子を兼ねながら

(肌の一部を文字盤として)文字を浮かび上がらせる(ね様と違って私はヘビちゃんの『ブシャア!』とか、『るぅー』…って。鳴き声の意味が分からないから。会話は”筆談”なんだよ!もっとも、ヘビちゃんは私が声に出した言葉の意味が分かるから。私が書く必要は無いけど…)へビちゃんと



『ルー。ぶしゃるるるるぅ…』

「もにもにもに…」

『シュルルル…』


コレからどしよ?

…そもそもココドコ?

なにがあったの?


って、お話を。

”読ませて”もらった…



「…もっくん。…ん。そ…だね…」

『る!』


それによると…



「…あ、ん。ご馳走様でした…」

『りゃあぁ…』


…ね様から離れると、ヘビちゃんは本来の力を発揮できないらしい。

その上、1頭しかいないから、私を守るので精一杯。



『ぶしゃるぅ…』


奇襲されたローズさんやゲオ様を助けるコトまでは、

できなかったんだって…



「ソレは…仕方。ないよ…」

『る〜…』


…だから。(さら)われた後。

敵さんが休憩の為にキャンプを張った”この場所”で。

疲れた敵さんが寝静まったのを見計らって…



「…あ、あれ?でも…う、馬も。エルフさんの姿も見当たらな…」

『…』


…そ、そういえばヘビちゃん。

敵さんの魔法鞄持ってたし…



『シュルルル…』



向こうに見える…掘り返し・埋め戻したようような…

”こんもり”とした地面は…



「………」


…さ、察し。

だよ…



「………そ、それにしても!」


わ、話題を変えようね!

うん!!



「…私。拐われて……う、馬にまで乗せられたっていうのに。ずっと寝てたの!?」


私はコレでも、今年で9歳だ。

勉強はゲオ様と、最近はルクスお兄ちゃんが。

礼儀作法はローズさんが。

運動はシュシュちゃんとフルート君が。

そして魔法は、綴られし魔女様が教えてくれる!


まだまだ子供…では、あるけど。

でも!



『ぶしゃ…』


…さ。

さすがに…



「…う?」


ソコまで鈍くは…



『しゃるるぅ…りゅりゅう!りゃあぁ〜…』

「…そなの?」

『りゃっす!りゅ、ぶしゅるるるぅ…』

「…う、ぅん!か、必ずね様に診てもらうね!」

『りゅりゅー!』


…な、なかった!!



「…はぁ~。…なら、よかったの!」

『ぶしゃぁ…?』





ーあとがきー



「・・・な、何で止めるのよルクス!はーなぁ〜しーて〜よぉー・・・!!」

「何で。じゃ、ないだろバカ!!「イマイマしい森め!焼き払ってやる」…なんて言いながら飛び出すヤツを放置できるワケ無いだろ!」

「むー!!バカじゃないもん!マジメだもん!!」

「余計悪いだろ!?…いいか、冷静に考えろ冷静に!!」

「私はいつだってレーセーだもん!!」

「どこがっ!?…ったく!いいかフォニア!お前が焼こうとしているのはエルフの森だぞ!?」

「そーよ!当然でしょ!?・・・どんなに寄せ集めても、所詮はセルロース!ソーラーシステムの【火星(マルス)】でひと唱えに・・・」

「あのなぁ…ったく!…いいか?お前の妹がいるかもしれないんだぞ!?…この森に。」


「・・・う?


・・・

・・






・・・あ」


「っ、たくっ…」


「わ、私・・・私っ!ナンテことを!?・・・っ、」

「だあぁっ!?泣くなっ!!」

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