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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
436/476

Chapter 045_混乱の坩堝

坩堝 → るつぼ


と、読みます!

「よくもシァヒアをーーっっ!!!」


ァイヒア…ハルピュイアは。 


臆病で考えるより先に行動… 逃げ…を選択する種族だ。


“狩り”は積極的には行わず、住処である森や林で

果物や昆虫をそのまま食している。


稀に獣の死肉や弱って動けなくなった獲物を見つけると

仲間と分け合いながら(むさぼ)()う。


ツメは岩肌や樹皮に取り付くのに向いており、先端がよく研がれており鋭い。

もっとも、”狩り”には()()使われないがな…


固有魔術【風斬(ウィンドスライス)】で空を”滑るように”飛んでいるらしいが、

これは飛ぶための技であって戦闘には使えない(と思われる)。

その他、風魔法などを宿しているとは、ついぞ聞いたことがない。


…要するに。

ハルピュイアは性格的にも。肉体的にも

戦闘には向いていない。



「や゛、止゛め゛っ…止゛ぁめ゛んがあぁぁー!ァイヒアア゙ァ゙!!」


我輩は彼女達を理解している…


「キエエェェーーッ!」


…つもり。であった。


「ァイヒア!?なっ、何をしている!?!?」


…戦闘を依頼したコトはない。

逃亡を糾弾したこともない。

羽の色以外はよく似た”白の”的スノーハルピュイアとの関係を

問いただしたこともない。


我輩たち魔族は、戦争のために…故郷を守る為に…集まった

少数民族(マイノリティー)の集合体だ。


過度の追求や干渉をするのは野暮というもの。



“この”戦争が終わり故郷を取り戻した(あかつき)には

また、元の日常に戻る…”つもり”である。


もう、戻せない部分があるのは否めないが、フ

ォニア殿…夜の魔女様…との約束(けいたやく)だ。


できる限りの努力はする。



「ァ…ァイヒアちゃま!?」

「ァイヒアちゃまが…竜を!?攻撃してるでしゅよ!?」


話がそれてしまったが…

戦闘能力がほぼ皆無の彼女達に”協力”を願ったコトは…

当時、反対意見も多く軋轢(あつれき)を生んだのは確かだが…結果的に

大きな成果を上げた。


1万2千年以上もの間、逃げおおせ。

仲間の行方(ありか)まで調べ上げたァイヒアの功績は計り知れない。


戦時でも、

戦場を俯瞰し連絡も欠かさない彼女達の瞳と翼に何度助けられたか知れない。



「じゃ、じゃあ…竜は?」

「マ族は!?」


陛下と殿下に対するァイヒアの忠義は本物であった。


どんな相手とも適切な距離をとれる彼女達の距離感は秀逸であった。


敗れ、捕まり、泳がされた名ばかりの【総裁】など比較にならぬほど

彼女達はこの国に…来たるべき未来に…貢献した。


だからこそ…



「「「「「敵でしゅね!?」」」」」


…なぜだっ!?



「「「「「ヒャアアァー!!!!」」」」」


なぜ、ハルピュイアは…



「キエェェェーーッッ!!」


…ァイヒアは!?

卿に襲いかかっているというのだ!?!?



「ま、まずい!卿!!」


…いったい、ドコにこれホド潜んでいたのか…?と思うほど

多くのハルピュイア…それも、黒と白が共に!?…が嵐となって

巨竜を覆い尽くしていた…



「卿ーっ!!」


その名を呼ぶが…



「キエエェェーーッ!」

「「「「「ヒャアアァ!!!」」」」


猛烈な叫びと羽音。そして、風斬音が

周囲を覆い尽くし



「くっ…!?」


彼方の音は…そして此方の声も。

とてもではないが届かない!



「ラバーラ!…おい、ラバーラ!!」


聞いているはずのラバーラに急いで

交信を試みてみると…



「は、はい!聞こえっ…」


…逐次此方の状況を探っているハズの彼女はスグに答えた!

彼女が言い終える前に…



「ボルレアス卿に繋げ!」


…叫ぶと



「へ?おじいちゃん?…そばにいるんじゃ…」

「問題発生だ!急げ!!」


我輩の声から



「わ、分かったわ!」


状況を察したラバーラの答えを聞いた矢先



「卿!だいじょ…」


卿に呼びかけると…



「…きゃあっ!?」


帰ってきたのは卿の声…ではなく、

ラバーラの悲鳴!?



「な、なんだ!?どうし…」


驚き呼びかけると!?



「ア゙ぐぅっ゙…ギャアア゙ァ゙!!」

「ラバーラ!?」

「ボ、ボル…お、おじい…っ!!…ヒギッ!」


尋常ではない叫びに…



「まさか…」


…くそっ!



「ラバーラ!今すぐ卿との繋がりを()て!」

「で…」

「いいから断て!…っ、諦めろ!!」


ラバーラは触れた相手の皮膚を微振動を”聞き取り”、

” 振動させる”事により通信する事ができる一方、

その相手が肉体的なダメージを負うと”痛み”を共有してしまう。


おそらく。彼女の叫びの理由は…



「っ…ごっ、ごめっ…ごめんねっ!ごめんねっ、おじいちゃん!!…っ………っはぁ、はぁ、はぁ〜…」


卿っ…



「…ラバーラ!」


…いや!



「は、は…い…」


まだだ!

まだ、できる事はあるはず!


竜を…いや、卿を!



「マスバラスエ卿にボルレアス卿救出に向かうよう、伝えてくれ!」


信じろ!!



「…はぁ、はぁ…んぐっ…っ。…マ、マスちゃんは…そ、側に…い、いな…?」

「あぁ、見えない!」


ァイヒアがボルレアス卿に襲いかかる直前まで側にいた

マスバラスエ卿だが、いつの間にか姿が見えなくなっていた。



「な、なら…既に向かってるんじゃ、ない…?」


ようやく…息を整えたラバーラの言葉に



「そうかもしれん…が。一応伝えておいてくれ!」

「…わ、分かった…」


彼女の答えに、

更に、



「それと、ラバーラ!」

「う、うんっ!?」


言葉を繋げた我輩は



「フォニア殿…夜の魔女様の。お連れの”風の”エルフ様に繋げてくれ!」


恥をしのんで…頭を下げる覚悟を決めて



「…え…え?え!?…た、確かに”いろいろと軽い”エルフ君…フルート君?…にも。タッチしたから…。連絡しようと思えばできるけど…な、なんで?」


疑問を述べたラバーラを急かすように



「救援要請だ!…急げ!」


…唱えた



………

……





















……

………



「…はぁっ!?」


…ソレは。

魔族共の反乱が始まり数時間が経った時分…

ローズの里に()()()()()()叫びが鳴り響いた後のコトだった…



「…うん。うん…。はぁー…あのねぇ…」


魔族が用意した隠れ家に移動した我々…ご主人様のご令妹様と家臣様。そしてチューリップの里の我ら3人と、案内役の魔族…が外の様子を注意深く伺いつつ息を潜めていると。

│風の《ウィンド》哲学者様が耳に手を当て。

誰かと話しでもしているかのように、声を上げ始めた…



「…ちょっとぉ…。うるさいですよ。エロフ…。」


その様子を、侍女長様が…



「…魔族から通信か?仕方ないとはいえ…テーが起きる。声を抑えろ。」


…そしてゲオルグ様が注意した。

すると、



「あっ、ごめっ…」


…と、哲学者様はひと声謝罪の言葉を告げ、

さらに



「…!」


何処かに待機させているという

召喚獣を呼び寄せ



「…よし。」


空気の…壁?

辺りに”そよ風”が吹きわたり。

そして…



「…、…!…、、」


…それっきり。

哲学者様の声は聞こえなくなったのだった…



「…」


魔族から…通信?

ご主人様の従者…では、あるものの

我らチューリップの里から来た3人は

作戦の詳細は教えられていない。


何か、魔族と通信する術でも

あるのだろうか…?



「…、…!」


疑問に思いながらも…



「…何かしら?」

「さてな…」


寝息を立てるご令妹様の横。

侍女長様。そしてゲオルグ様と共に



「…!…、!っ、…。」


…何やら。激しく口論している

哲学者様を見守っていると…



「…、…」

「…!?」

「。…。」

「、…」


自身の召喚獣とひと言ふた事話した哲学者様は…



「…。」


侍女長様とゲオルグ様に視線を移し、




「…はぁ〜………」


…と。再び声を取り戻し。

深いため息を突いてから…



「…ピンチだから。助けてくれってさ…」


…と。

お唱えになられた。



「…ピンチですって?」

「仲間のひとりが裏切って混乱してるんだって…まったく。勘弁してほしいよねぇ…。身内の世話くらい自分でしろ!ってはな…」

「…どういうことだ?なぜお前に…?」

「…裏切った理由が分からないんだって。でも、大きな貢献をしているから殺すに殺せなくて…ぼくに連絡よこしたのは。生け捕りにして欲しいから…だ。そうだよ…」


困った顔の召喚獣を背に、呆れた表情の哲学者が

事情を話すと…



「…で?どうするツモリなの?」


窓の外…騒がしい里の灯りを眺めながら

侍女長様が尋ねた。

すると…



「…はあ゛あ゛ぁ゛ぁぁ〜あぁぁ~………」


…哲学者様は。

呆れを含んだ長いため息を突いて…



「…行ってくるよ。」


弓…ただならぬ気配をさせた…を手に。矢筒を背負いながら

答えた哲学者様は…



「疲れて帰ってくるマシェリーに余計な仕事させられないだろ?それに…」


ドアに手をかけ

振り返りながら…



「…本当にちょっと。ヤバそうだからね…」


…唱えられた。

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