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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
432/476

Chapter 042_夜櫻①

林檎です!



本話。短いです。

ご了承くださいませ・・・

「お姉ちゃん!」

「嬢!」

「ご主人様!」

「おっ…」


39分51.18秒間、天使と一緒に

光る翼の中にいたご主人様は。

『サヨ…』と開かれた翼の…羽の隙間から



「・・・お待たせ。みんな・・・」


肩や頭から

光る羽を散らしながら…



「「「「…」」」」


…以外なモノを両腕に抱え。

足音をたてずに現れた…



「お、お姉ちゃん!その子は…ね、姉様は!?」


そんな、アミちゃん様の言葉に



「・・・」


慈悲と寂しさを湛えた夜は…



「・・・カエン様はコレから・・・長い長い。眠りに()くコトになるわ・・・」

「へっ!?」

「・・・彼女が負った痛みは【満月】を持ってしても。スグに消し去るコトができなかったの・・・。だから、暫く・・・たぶん。100年か・・・もしかしたら1,000年くらい・・・この【卵】の中で眠り。ゆっくりゆっくり、回復して貰うことになる・・・」


…そう言って振り返った先には、

開け始めた夜に淡い銀光を放つ。翼を丸めて作られたタマゴが…



「こ、この中で…?」


…耳を澄ませていると聴こえてくる

微かな…けれど、温かい鼓動を



「み…」


感じていると…



「100年から…せ、1,000年!?そんなにかかるの!?」


隣のアミちゃん様が声を上げた。



「・・・1,000年・・・と、いうのは。途中で邪魔が入ったり、不測の事態が起きた場合の最長の見積もりよ。何も無ければ100年か・・・長くて300年くらいだとおもう。」


100年、300年…という時間はシュシュ達にとっては物凄く長い時間だけど…



「そっか…そ、そっか!それくらいなら!!」


魔族の…不死の…アミちゃん様にとっては、

大した問題じゃ無いのかもしれない…



「し…し、しかし嬢!我々はいいとして…嬢は?あれは…嬢の。魔法…ま、魔術?…で、ですよね…?」

「・・・心配いらない。この魔術・・・【満月(フルムーン)】には【完治】という特殊効果がついている。」

「かんち?」

「・・・ん。治癒が完了するまで発現が止まらない・・・と、いう。特殊効果・・・」

「す、凄まじいですね…」


…にゅふふふ!

ご主人様がそんな見落としするわけないもんね!



「・・・おまけに。この【卵】はかなりの強度があるし。最悪、破られても中にいる堕天使サリエルが患者様を守りながら逃げるから。万が一おそゎ・・・」

「そんなコトさせないよ!」

「そうです!姫は我々魔族が一丸となって。全身全霊をかけて御守りします!」

「・・・そう、してあげて・・・」


…すると。

それまで黙って柱に(もた)れていた…



「…で?」


…ドレー、が…



「…そっちの。黒の魔女はどうしたんだ?」

「・・・」

「………ソイツだけ…早く治せたって。コトか…?」


ドレーの話を



「・・・・・・・・・」


黙って聞いていたご主人様は…



「っ・・・」


一瞬。

泣きそうな顔をして。

心臓を『トックン!トクン…』と、打ち鳴らして…



「っ!?お、おい…」


慌てて駆け寄ったドレーを



「・・・だ、だいじょ、ぶ・・・」

「…」


言葉と視線で、押し留めて…



「・・・すー・・・」



息を吸って…



「・・・ごめんね・・・」


視線を落として…彼女の顔を見て…小さく小さく

呟いて…



「はぁ〜・・・」


息を吐いて



「ん」


お顔を上げて。



「・・・彼女・・・ドゥーチェちゃんは。助けられなかった・・・」


小さな背中で朝を背負い。

明けきらない夜を見つめて…



「・・・生まれた時・・・いいえ。”在った”時から【不死】のカエン様や、”そういう精神”をもち。宗教観による覚悟もできている【不老】のエルフと違って。ドゥーチェちゃんの心は悠久の時に耐えられるように”できていなかった”。」

「できて…いなかった…?」

「・・・ん。ドゥーチェちゃんは魔女でも悪魔でもなんでもない。ただのひとりの女の子だった・・・って。ことよ・・・」

「…」


「・・・エルフが盛ったドラッグが彼女の心を狂わせているから、彼女は今も生きているけど・・・ソレを解毒した途端、止まっていた(とき)が一気に彼女にのしかかる。彼女の心は、その重みに耐えられずに”狂死”してしまう。・・・コレは、急速な”老化”・・・と、言っていい、現象だった。だから・・・。・・・っ、・・・ど、どうすることも。できなかった・・・」

「な、何か手はないのかい!?」

「・・・私も。サリエルも。いろいろ考えたんだけどね・・・。」

「そ…そう。そう………」


「・・・彼女の心はもはや、ドラッグ無しでは1秒だって保たないトコロまで来ている。解毒しないと支配から解放してあげられないのに。解毒した途端・・・」

「…皮肉だな。」


「・・・あと、私がしてあげられることは・・・最期は。本当の彼女で居させてあげられるコトくらいしか。無かったのよ・・・」


ご主人様のその言葉に…



「ホントの…です?」


続けると…



「・・・本当の。よ・・・」


ご主人様はその場にしゃがみ込んで

お姉ちゃんをお膝に乗せて・・・



「・・・解毒して。彼女の心を解放する。持てる魔力の全てで痛みと苦しみと絶望を肩代わりする。最期は・・・この手で。」


その手を強く握り締め、

朝陽射し込む瞼に



「・・・Sakuraちゃん。今、楽にしてあげるからね・・・」


唱えたのだった…


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