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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
431/476

Chapter 041_ひとりでも多く。1秒でも長く…

「・・・いくよ・・・」


2人を乗せた診察台の前で・・・



「はい!ロード!」


慈悲深い笑顔で大きく頷いた堕天使に



「・・・ん。」


小さく

頷き返して



「・・・」


力なく置かれた2人の手を握り締め



「・・・セト。」

『…!』


祈りを込めて・・・



「・・・ソーラーシステム発現。【満月(フルムーン)】」


唱える!



「わぁっ!す、凄い魔力だね…。さすが、お姉ちゃん…」


満月(フルムーン)】はサリエルとセトの合体技で


蘇生+全欠損修復+完全回復+全状態異常解除+精神洗浄+天使の加護+完治


という、

思いつく限りの治癒効果をもたせたオリジナルまほ・・・いや。

リブラリアの魔導的には、


魔”術”


だ・・・



「ま、眩しい…ですね!」


この魔法は見ての通り・・・ま、(まばゆ)い光を放つから

見づらいかもしれないけれど・・・


セトが生み出した重力圏でサリエルと私もろとも

対象を包み込み。

内部を高密度の(治癒効果のある)銀羽と(蘇生効果のある)ネクタールで満たすことで肉体的・精神的な・・・言葉通りの

【完全回復】を(もたら)す。



「はんにゃぁ〜…///…ご主人様のまほーは。いつ見てもキレーなのですよ…」


・・・2人の診断結果は

壊滅的・・・なんて言葉でも書き足りないくらい、

重篤(じゅうとく)なモノだった。



肉体的には、

外見はキレイなんだけど・・・”内部”は

”生物として”破綻していた。


どういうことか?と、言うと。

そ、その・・・っ・・・


・・・どうやら2人は拷問の一環として

お腹に肉食性の虫・・・魔物・・・を植え付けられたようだ・・・


“された”時期は、数千年以上昔のコトだと思う。

目的は拷問・・・と、いうより。陵辱だろう。


極限の痛みと恥辱と絶望を味あわせた後。


あろうことか、鬼畜で悪趣味な耳長は

食い荒らされた彼女達に治癒魔法を施した・・・


っ・・・

治癒を施した目的は・・・たぶん。

2つあって・・・


1つは”殺さない”ため。

もう1つは治癒魔法の"かかり"を悪くする為だ。


【不老】止まりのドゥーチェちゃんはもとより、

【不死】のカエン様だって肉体の構造は人間とさほど変わらない


生きたまま内臓を貪られて、無事であるハズがない。

本来なら、かなり早い段階でショック死(【不死】持ちのカエン様がショック死するのか?は、正直。分からないけれど・・・)する・・・ハズ。だった。


ケド・・・何が楽しいのか知らないけど、

悪趣味な耳長共は、彼女達に痛み止め(恐らく、精神安定剤や興奮剤。”麻薬”と言っていい・・・)を与え。治癒を施しながら・・・非常に手間をかけながら・・・苦しみ絶叫する彼女達を見て喜んでいたのだろう・・・


暇人どもめが・・・



・・・そして2つ目の理由。

知っての通り、

治癒魔法は回数を重ねる毎に効果を得にくくなっていく。そもそも、自分自身への治癒魔法は効果が薄いし、失敗もしやすい。


戦いの中で自分自身に何百回と治癒を施してきたドゥーチェちゃんは・・・とんでもない無理をしていたハズだ。


けれど彼女は、それでも頑張って。

戦いで傷付く自分と、そしてカエン様にも

治癒を施していた。


・・・耳長どもは。

そんな健気な2人の姿を目の当たりにして


笑っていたに違いない・・・



「…ったく!豪勢にやりやがって。後で倒れても知らねーぞ…」



精神的には、

鮮烈でシツコくてイヤラしいトラウマのフラッシュバックに度々襲われ、止まらない幻覚に常時苛まれ。

強烈な劣等感と敗北感と恥辱に埋め尽くされ・・・


・・・気が()れた方が何百倍もマシな

痛み止めと苦しみの渦の中にあった。


魔法とドラッグによって”狂えない”彼女達は

身に余る罪に苛まれ、

度を超えた罰に打ちのめされ、

罪でも罰でもなんでもない・・・単なる気まぐれで

犯され、侵され、更なる罪を着せられて。


1秒でも早く終わってほしいと思うような時間を

7,000年以上も過ごしてきた。


たぶん・・・

一刻でも早く。彼女達の夜を終わらせる事コソが



【究極の救い】

という、モノだろう・・・




外見”だけ”良くする【籠魔法】

寿命で死ねない【不老】

死ねない【不死】


そして、

ドラッグと陵辱と暴力と拷問と罪の意識による洗脳。


それらの相乗効果によって

彼女達は心も体も、意思も誇りも、歴史も未来も

物語の全てを真っ黒に塗りつぶされて。

要らなくなったら棄てられて・・・


それでも、終わるコトが許されない彼女達は

今もここで。


剥製はくせいのその身に『グチャグチャ』した罪と悪意を詰め込まれ。

マジョだ。アクマだ。と罵られながら


息をしている・・・





「・・・っ・・・っっ・・・」


こんなのって・・・ないよ。

いくらなんでもヒドすぎるよ。


エルフはきっと。

死ねない上、悪者に仕立て上げた2人になら”なんでも”していいと考え。度を超えた・・・もはや拷問ですらない・・・

猟奇的で悪趣味な、良心の欠片も道徳観も知性も無い。

最低最悪の幼稚なアソビをしていたんだ!


悶え。苦しみ。泣き叫び。

それでも死ねずに、助けも来ない2人の女の子の姿を見て・・・

よ、喜んでいたとでも、言うの!?



「っ・・・」


ふざけるな!!


人間を

魔族を

生物を

命を


馬鹿にするなっ!!!



「…ろーど。お気を静めて…」

『…、』

「っ!?ん、んぅ!・・・ご、ごめんね・・・」


すー・・・

 はぁ〜・・・


・・・ちょっと。

アツくなっちゃったケド・・・



「いいえ。でも…どうか、冷静に。2人の可哀想な患者様に…愛を。」

「・・・ん、んぅ!・・・」



・・・とにかく。

花のエルフは、確かに。

”あの”優しいカルマート様が嫌うだけのコトをしてきたようだ。


もちろん、全員が悪いヒトじゃ無いってコトは分かってる。

けど、その本性を知った今。

とてもヤツラを【森の賢者】などとは呼べない。


見聞を広めるための長い耳

母なる風を感じる為の銀の髪

父なる大樹を宿した琥珀の瞳


整った顔立ちに知性的な瞳をしたヤツラこそ、


醜く卑しい “悪魔” だ。



「・・・」

「…ろーど。」

「・・・」

「ロード。」

「・・・」

「…」

「・・・・・・・・・っ・・・」


しかも・・・



「…ロード。」

「っ・・・」


しかもっ・・・

こ、こんなのってっ・・・っっ・・・



「お気持ちは察します。悲しい…ですね…」

「っっ・・・」


こんな・・・のっ・・・・てぇ・・・・・・・っ・・・



「ですが…」


ないよおぉぉ〜・・・



「いや・・・」

「…ロード。あなた様にはまだ。すべき事が沢山あります。」

「ヤ、ヤょ・・・」

「コンナところで唄い止めてはなりません。」

「ヤ〜あぁ〜!!」

「ロード!」

「だっ・・・だってぇ、だってだってだって!!」

「ひとりでも多く。1秒でも長く…では、無いのですか!?」

「っ・・・」






「でも・・・」

「しかた…ないの。ですよ……」




「だっ。て・・・」

「…ロード。理は。ただ、ソコに在るモノです。可能性を示してはくれますが…心は無く。慈悲もありません。そして…"(かぎり)"が。あるのですよ…」





「ま、だ・・・」

「…いいえ。治癒魔法の守護者であり、理の堕天使である私、サリエルが宣言します。ここに治癒魔法は極まった。と…」





「・・・」

「…ロード。あなた様は本当によくやりました。手の施しようが無い2人に。最期の最期まで手を添え、祈られました。だから…ほら。2人"とも"。救われるではありませんか…」






「・・・」

「確かに…悲しみはございます。ですが同時に希望もあります!ソレをみすみす…見逃されるのですか?ソレは…できませんよ…ね?お友達の願いに…反して。しまいますよね…」





「っ・・・っっ・・・」

「…さぁ、ロード。コチラへ…。貴女の癒しの天使が。癒して差し上げますからね…」

「ひぐっ!・・・シャ、シャリエルゥ〜・・・ひぐっ、ひっくっ・・・」

「よし…よし。よしよし…」

「・・・いぐっ・・・ひっく・・・」

「よし、よし………」






「・・・っ・・・。。・・・」

「よし…よし…」











「・・・寂しく。なる・・・」

「っ…も、もぉっ!そんなコト…い、言わないで下さいませロード」

「寂しいよ。サリエル・・・」

「………っ……い、いつでも…。わ、私サリエルはロードの祈りとなって、翼となって。いつでも…い、いつも。側におります…」

「うえぇぇ〜・・・。。。」

「あぁ、もぉ…っ…ふ、ふふっ、ふ…。ほ、ホントにっ…っ。…な、泣き虫っ、ロード…なの。です。からぁ…っ………」



「ひぐっ・・・」

「っ…」



「ぐすっ・・・」

「…」



「・・・っくっ・・・」

「……よし…よし…」



「・・・」



「…落ち着きましたか?」


「・・・まだ・・・」


「あらあら…」






「っ・・・っっ・・・」


「っ・・・」


「・・・」


「・・・サリエル。」

「はい…」

「・・・必ず、彼女を救うのよ・・・」

「…えぇ。必ず…」

「・・・んぅ・・・任せた。」

「任されました…」



「…ロード。」

「う・・・?」

「ロードも…どうか。彼女に救いを…」


「・・・・・・・・・もちろん。」

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