Chapter 038_寸劇
「ご主人様!」
「シュシュ・・・!」
気を失ったカエン様を回収するとスグ、
「にゃーっ!」
「わ・・・んふふふっ!」
傷だらけ・・・けれど元気なシュシュが飛び込んできた。
腕を拡げて抱き留めると・・・
「にゅふふふぅ〜///」
「・・・///」
尻尾をフリフリ、頭をスリスリ。
私の胸から飛び出す度に『ヒョンッ!』と撥ねる
お耳の飾り毛がプリチー&キュート!
「み〜///」
今夜も可愛さ大渋滞である!
「・・・いい子。いい子・・・」
「みゃふぅ~…///」
「・・・///」
・・・と、と。
愛でてばかりも居られない
「・・・ん、んぅ・・・シュシュ。治癒するよ・・・?」
見たとこ、大事はないようだけど・・・
「みゃぁ〜?…シュシュは。大丈夫なのですぅ〜…」
「・・・メよ。擦り傷に切り傷・・・火傷までしてるじゃない。無理しないの・・・」
シュシュは魔法も織り交ぜたハイブリッドな戦いをするけど、
メインはナイフとショーテルの2振りだ。
敵の懐に潜り込むから、どうしたって怪我が多い。
本人は平気と言っているけど・・・
放っておくと細菌感染して化膿しちゃうカモだし。治りも遅いからね・・・
「み〜…」
「・・・いい子だから。大人しくしてるのよ?」
「にゃ〜…ん。で〜す…」
まして相手は、あのドゥーチェちゃん。
服の端がコゲているしアチコチ火傷の痕もある。髪も荒れてる。
激しい戦いをしたに違いない・・・
「・・・頑張ってくれてありがと。シュシュ・・・」
「にゅふふふ…褒められたのですよ…///」
・・・
・・
・
「はぁ〜…ヤレ。ヤレ。だ…」
少し遅れて・・・
「・・・お疲れ。ルクス。シュシュは治癒したけど・・・あなたは?怪我してない?」
「うをっ///」
戦いの熱気が冷めやらないのか・・・顔を赤くしたルクスが
ドゥーチェちゃんを抱えて現れた・・・
「…だ、だいじょ…」
「・・・むぅっ!怪我してるじゃない!」
「だっ///…ち、近っ…」
「・・・もー!強がらないのっ!すぅ・・・『右手に針を 左手に糸を 祈り込めて縫い合わせる』ケア!「いでっ!」がーまーんー!「ぅ…」」
「・・・んぅ、ん。・・・ん!・・・もう、いいよ・・・」
「…あ、ありが…」
『ポフッ…』
「っ…///」
「・・・んふ。ふ・・・無事で。良かったよ・・・」
「…あ、あぁ…。お、おま…フォ、フォニアもな…」
「んぅ・・・んんぅ・・・」
「っ//////…っ、たくっ…///」
・・・ひとしきり。
みんなの無事を喜んだ私は・・・
「・・・ん・・・。」
ルクスの胸から
顔を上げ・・・
「…。」
無言で差し出された
その手を取って
「・・・ありがと・・・」
体を起こし・・・
「・・・それじゃあ・・・」
ボロボロになった床・・・では、
可哀想だったので。
土魔法で作った診察台に乗せた
2人の大先輩に・・・
「お、お姉ちゃん…」
「嬢…ど、どうか姫を…」
「・・・任せて。」
「ご主人様…こ、このお姉ちゃんも…」
「…」
「・・・もちろん。」
向き合い。
「・・・それじゃあ・・・」
手を触れて
「・・・『祈り込めて
擁する』」
敬意と知識の
限りを尽くして
「ダイアグノーシス」
唱える!!
・・・
・・
・
…
……
………
「『祈り込めて』・・・」
私は、フォルテピアノ様…我らが哲学者様…ほどでは無いが。
木魔法には自信がある。
「いたぞ!あr…」
第11階位の【弄魔法】を宿しているし、
棘魔法の発現速度も1級品…花のエルフの中でも。2番手…だと
自負している。
もちろん、実戦闘においても自信がある。
…現に、巨体かつ鉄壁。
底なしの再生力とタフさで有名…だった。あの門番を
…仲間と共に…とはいえ…葬り去ったのも
私だ。
『ブシュッ!!』
だから…
「ぐはぁぁっ!!」
崩壊した玉座の間に立つ標的…術者である小娘…を見つけ。
効果範囲まで近付く
その。遥か手前で…
「…ご主人様がお唱えしてるのです!」
まさか…
「おーしーずぅ〜かーにぃー!…ですっ!!」
こんなにも…
呆気ない
とは。
夢にも…
………
……
…
…
……
………
「『火の粉よ』!」
…オ、オーボエ様…お兄様は。
いつの間にか”ソコに居た”獣人の湾曲した武器(剣?)の一撃に
倒れ伏し。
泡を吹いて小刻みに震えだした…
「んなぁっ!」
「じゅ、獣人!?」
オーボエ様は一流の術者だ。
獣人相手…とは、いえ。知覚さえできぬまま
問答無用の、致命の一撃を受けるなんてコトは…
「『災い振りまき』」
「か、考えてる余裕はない!!」
「射れ!射れぇーー!!!」
まずい…マ、マズイ!!
この子…きっと、北のエルフから取り寄せた資料にあった
魔女の奴隷に違いない!!
獣人は魔法を宿せないハズだけど…
け、”契約魔法を宿している魔女の駒”である事を考えると…
「『仇となせ』」
一刻の猶予もなっ……
「ファイアー…」
精鋭揃いの仲間が放った矢の雨を。
「…」
冷静に見つめ。
跳ねて、
屈んで、
『カキンッ…』
極太のナイフで受け止めた奴隷は
「…アロー…」
苦も無く魔法名を唱え。
『シュルルッ…』
ソレに合わせて、
矢の形をした炎が装填され!?
「…」
その身に似合わぬ太いナイフを
「…射貫け。」
無慈悲に我らに
突きつけた!?
「逃げっ!!」
まだ…まだよっ!!
あの魔法ならばむしろ、奴隷より遅い!!
避けきれ…
「っ!?」
そう思ったのと。
同時だった…
「にゃー」『っ』
夜を駆ける白い影…いや。
白い悪魔が
「にゅー」『、』
炎の矢が動き出す前に
「にょー!」『 』
同志の首を…
「みゃっ!」
次々と。
一片の迷いなく。
”鮮やか”と言っていい捌きで。
「…にゅふふふ!…マホーにばっかり。気を取られ過ぎなのですよ!!」
同志の。そして………
『っ、」
…私の。
首を…断…
『ボフヮッ!』
“意識ある首” と、 ”その肢体”
に火を放ち…
「ご主人様からは「・・・ひとりいれば十分かなぁ・・・」…って、言われてるです!!それ以外は要らにゃいのですよ!」
『『『『『ドサッ…』』』』』
「みっ?…あっちにイル…アル?のは…」
…数秒で。
私達への興味すら
逸し…
「…ラィォンさ…うにゅ〜???…しんぞ…にゃ…ので…みぃ〜…???」
『『『『『……。。。』』』』』
「みぃ〜…よ…、で。ドレ……で…よ…」
『、… 』
『『『『…』』』』
…こ、こんな………
…こんな。終わり方が…
『『。… 』』
『『『…、…。』』』
あっ。てぇ………
『『 』』
『… …、』
い、い…の………
『、 』
か……………………
『 』
………
……
…
…
……
………
「アレはドレーに任せるのですよ!」
「はあっ!?」
「エルフさんがいるですよ!」そう言って駆け出したお耳ちゃんは、ものの十数秒で…おそらく、毒花達に知覚させる暇さえ与えずに…全員を無力化(遠目で見たダケだけど…彼女の動きは容赦が無かった。おそらく全員…)して帰ってきた。
そして、剣の彼に向って
今の言葉である…
「アレってなんだよ!?分かるように言えよ!」
「み〜?…もしかして。見えてないですか?」
「廃墟と焼死体しか見えねーよ!」
「死体の向こうです。…あと、殺した後に燃やしたから”焼死体”じゃなくて。”燃えた死体”なのですよ!」
「なあっ!?くっ…どっかの魔女みたいなコト言いやがって…」
脱線している2人の会話は…い、いいとして。
ソレより、お耳ちゃんが言っていた”アレ”とは何のことだろう?
彼女が指した方に目を凝らしても、何も見えないんだけど…
「…狐君。君が言うアレとは…?」
お姉ちゃんが治癒に集中してくれている今、
細事はぼくらで処理しなければならない。
ルフが2人の会話に割って入ると…
「に!」
パッと、彼女は振り返り
「途中まで一緒に来たライオンの悪魔さんと、途中ですれ違った騎士の悪魔さんです!」
「「…は?」」
ライオンの悪魔と騎士の悪魔…だって!?
まさかっ!
「…おい。獅子のオッサンは首無し騎士と戦ってたんじゃないのか?」
「そ…そ、そのハズだけど…?」
「どっちか片方なら分かるが…両方だと?…どういうことだ!?」
「そ…」
そんなコト…
ぼ、ぼくに聞かれたって分かんないよ!
そう思って、
お耳ちゃんに視線を送ると…
「2人とも死んで…えぇと。悪魔さんは死なないのですよね?だとすると…えーと、えぇと…い、息してないし。心臓も止まってるです!」
「…は?」
息をしてない?
心臓も……
「はぁっ!?」
く、首無しのアスラムは…わ、分からないけどっ
リオンは”生き物”だから当然、息もしているし、心臓も動かしている。
ソレが…ない。だって!?
思ってもみなかったソノ言葉に驚くぼくの横から
「狐君。」
ルフが…
「ソレは…し、死体って。いうんじゃないかな…?」
尋ねると?
「シュシュもそう思うです!」
お耳ちゃんはアッサリ認め
更に…
「”2つ”からは。強い魔力の残渣…にょろい?を感じるですよ!」
「「「なっ!?」」」
呪いだって!?!?
「たぶん…操られてるですよ。」
「「「はあぁぁぁっ!?」」」
操られてるぅ!?!?
林檎です!
シュシュたん・・・つ、強すぎるよぉ!?
現状、フォニアを倒せる
数少ない人物の一人が彼女でしょうね。
・・・ま。”なでなで魔法”にドップリ浸かって
依存症まで発症している彼女が
フォニアに刃を向ける日なんて。
来ないと思いますけど・・・
お、思い・・・ま・・・・・・




