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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
422/476

Chapter 033_首無し②

『ィーーーン………』


…不可避の。

槍と盾…



「ぐふっ…ゴブッ…」


くそっ…ドイツもコイツも



「オ゙…オ゙!…オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ーーー!!」


理不尽ばかり唱えおってぇっ!!



「ゴッ…ゴボッ…グブ…」


玉前回廊の中央で戦っていたオレは首無しの反撃を警戒して距離を…

長い玉前回廊の後端まで…とっていた。


…これだけ距離をとれば、さすがに技の射程外だろうと踏んだからだ。

しかし…



「オ゙ガッ!ガハッ、ガハッ…」


ヤツの槍…いや、ヤツ自身と馬もすべて。


数十m離れていたオレの首めがけて”瞬時”に”飛んで”来た。

本当に”飛行”していた…というワケでは有るまい。


恐らく、瞬時に移動する類の魔術だ…



「ゼハァー…ハァ…ハァ゛、ハァ゛…」


今回は間に合わず、

対処しきれなかった。



チャージを押し留めようと両手を伸ばしたが既に

首の皮が裂かれており。


爪を立てたが時すでに遅し。


両手で押さえ込んだ槍が止まったのは、

指1本分ほど筋を衝かれた後だった…



「ゔっ…ヴグッ…べッ!」


…どうやら。喉に穴をあけられ、

太い血管を穿(うが)たれてしまったようだ。


息をするたびに喉奥…肺にドロドロが垂れ落ち、(むせ)るが。

どうすることもできない。


自慢のこの体と再生能力で意識を留めている。が、



「ぜはぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ゴブッ、ゴホッ!…ブフッ…」


長くは…………






「…」


ヤツは。というと、

術の反動か(なに)か知らんが。

スグに攻める気は無いようだ。


押し退けてからというもの、

距離をとって大人しくしていた。



回復の時を得たのはいいが、

攻める機会を失っているのも事実。


時間はオレの敵だ…



「はぁー…」


いつまでもコウしているワケには



「…ふぅんっ!!」


いかぬ!!



「オ゙オ゙オ゙ォ゙!」


傷口を気合で塞いだオレは床を打ち!

ヤツに飛び込んだ!!



「…」


対する首無しは自然体のまま構えている。


さては…

例の理不尽をする気だな!?



「ハア゙ァ゙ッ…」


槍か、盾か…いや!



「…ア゙ァ゙ァ゙!!」


…誘うために。

えて愚直に拳を突き出した!


すると、



『キイィィーーーン!!』


いよっ…しっ!!



『ガキィンッ!!』


手の位置もスピードも無視した理不尽な盾が

拳の前に!



「ふんぬっ!!」


いいぞっ!

盾に弾かれた拳を瞬時に引き!



「ウヲラァッ!!」


もう一本の腕で!



『ガギィンッ!!』


撃つべし!!



「うんぬをらぁ!!」


引いた腕で!



「ウヲラァッ!!」


撃つべし!!



『ガギィンッ!!』


三度(みたび)



「ウラアッ!!」


撃つべし!!



『ガギィンッ!!』


撃つべし!!



「デオラァ!!」


撃つべし!!



『ガギィンッ!!』


撃ち続けたるぞ

をらぁ!!



『ガギィンッ!!』


ヤツの能力…



「ゼラアッ!!」



【不可避の盾】と、


『ガギィンッ!!』


いうコトは、

つまり!!



「ドゥオ゙ラアッ!!」



ヤツ自身も



『ガギィンッ!!』


“避けられない”というコトだ!



「ヴオラァッ!」


恐らく、




『ガギィンッ!!』


ヤツは理不尽を発現している最中、

他の動作に移ることができない!


確証はないが…しかし、現に今ヤツは

(反対の腕に持つ槍を振るおうとはせず…)オレの拳を愚直に受け続けている。


そうに違いあるまい!!



『ドゥオラァ!!」


ならば!



『ガギィンッ!!』


話は簡単だ!!



「ウヲラァッ!!」


避けられぬのなら



『ガヅィンッ!』


避けなくていい!



「デュオラァッ!!」


小細工無しに

真正面からぶつかって!!



『ガゴゥンッ!!』


ぶっ壊しちまえば!!



「ヅヲラアァッ!!」

『ドゴオォォーンッ!!』


ドゥということもっ



「ゼヲラアァ!!」

『バギイィーィンッッ!!』



ナい!!



「っ!?」


盾がひしゃげ!

真ん中から折れ曲がった瞬間!!



「ドッ」


衝撃を抑えきれず

反り返った懐に



「ラ゛ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッ!!」


突っ込み!!



「ぐっ!」


駄馬に乗ったその(てい)たらくを



「ぐぬっ!?」


地面に叩き落としてやろうとしたが

しかし




「ナンダぁ!?首無しぃ!キサマ、馬と繋がってるのかぁ!?あ゙ぁ゙っ!?」


それならば!!



「ゼアァァーーッ!!」


渾身の右ストレートを



「ア゙ア゙ァ゙ーーー!!」


ヤツのハラn…




『キイィィーーーン!!』


っ!?!?





















「ゲボバッ!!」


3(みたび)突き立てられた槍を

喉の筋で受け止めたオレは!!



「ッ…」


震える左腕で

喉に刺さった槍に爪を立てて



「ゴボッ…」


口から

鼻から

傷口から

ヘドロを吹き出しつつ



『ゴブッ……ブグッ!!!』


右腕にっ



「っ!!!」


獣の力を宿し!!



「ら゛っ!!!」


拳を



『ダガアァァァーーーン!!!』


前に!!



「ぐっ!?」



槍をへし折ったおかげで…ヤツめ!

コチラへ倒れてきたではないか!



「ブジュガアァ!!」


チャンスと見!

肩を握り潰して引き倒し!!



「オ゙オ゙ォ゙ォア゙ァ゙!」


倒れ込んできた馬面を



「ラ゛ッ!!!」


穿ち!



『ゴッ…ギィインッ!!』


折り曲げ!!



『ブジュアアァァッ!!』


血染めにして



「ズヌラアアァァッ!!!」


引き千切り!!!



「ブガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」


崩れ落ちた甲冑に向けて

穂先を生やした首を引き!!



「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッ!!」


体ごと!


前に!!



「ブッ」


渾身のおぉぉ!



「ガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ーーー!!!」


頭突き!!!



『ガドガア゙ァ゙ァ゙ンッ!!!!』


もういっちょっ!!



『ガギィィンッ!!!』


まだだっ!!



『ドゴオォンッッ!!』


まだっ!!



『バガアァンッ!』


まだ…



『ガゴォンッ…』




『ブジャアァァァッ!!』


ふっ…

ふふふふふふ…





『ズ…ズザッ……ガジャッ…ンッ……どジャッ………』


…やはり。



『ジャァアァァァ…………』


ち…ち、ちか…チカラ………



『ゴボッ……ゴボッ…ンッ……ドガッ…』


ご…ぞ……



「ふ…ふふ…………ぅ………」


パ…、

ァ゙……



………

……





















……

………



「う、うわぁ〜…」


反抗的な門番を下し、

廃墟に入った我々を待ち受けていたのは…



「こ、これが。悪魔同士の戦い…」


…死色に染め上げられた

回廊だった…



「うー…わぁー…」


散乱した肉片と金属片



「こ…こ、こんな化け物が。まだ何体もいると言うのですか…!?」


周囲に立ち込める死臭。(カビ)臭さ。

血と火花。鋼と肉。

ガラクタの古臭(こしゅう)と、野蛮な獣臭…



おぞ)ましい…」


廃墟に打ち捨てられた出来損ないのガラクタと

地獄から蘇った獣の一騎打ちは

かくも凄まじいモノだったようだ…


2天の悪魔が争っただけで。

この有り様…


魔王の解放まで許してしまえば、

もう、取り返しはつくまい。



…まさか。

数千年の時を経てようやく成し遂げた平和が

こうも唐突に…いとも容易く…崩れ落ちようとは…




「…急ぐぞ。」



魔王の復活は目の前に迫った危機。

一刻の猶予もない…



「「「はっ!」」」


…賊どもがいるであろう玉座の間に

向かう…



「…ま、待ってくださいオーボエ様!」


…私を。

呼び止めたのは…



「…」


無言で振り返ると、

小走りで近づいたモルデントは



「あ…あの…」


小さく震えながら…



「…ア、アレ。は…だ、大丈夫。なのですか…?」



…と。

首無しのガラクタと首無しの獣を

指したのだった。



「…」


ふむ…



「?…オ、オーボエ…さま?」


顎に指を当て残骸(ざんがい)に近づいた私は

モルデントの怪訝(けげん)な視線に気づきながらも



「…」


…まず。首無しの騎士を乗せた首無しの馬に。



「…」


…続いて。傍らに…皮一枚で繋がった頭を晒す首無しの獣を

瞳に映し………



「…使えそうだな。」

「…はい?」


ひとりごちた私は



「…え?オ、オーボエ様!?」


モルデントを無視し



「すー…」


矢を番えずに、弓だけ構え…



「…『リブラリアの理第4原理』」

「「「「!?」」」」


驚いた表情の(とも)をも無視し



「『綴られし定理を今ここに』」


2つの

悪魔を模した

首無し人形を瞳で捕え



「『人形の願い』」


「『()せて(ただ)成る土塊(つちくれ)に 大樹が芯根を巡らせる』」


「『時の渚に(うつ)ろわせ 枝は陽に伸び』」


「『葉は空吸(からき) 大樹が神酒(しんしゅ)を注がれて』」


「『大樹が幹へと運ばれん 花の森を這う』…」


使い捨てにはなるが

この先のことを考えると…


…多少は役にも、立つかもしれない。


”使えるモノ”は”使ってやろう”。

そう、考え…



「…ペトルーシュカ」


…唱えた。

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