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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 030_赤と黒

「・・・!?」「っ…?」


大図書館で読んだ記録と魔導書から

2人が【籠魔法(バードケージ)】という魔法に閉じ込められている事は分かっていた。



「・・・セト!」

『!』


彼女達を閉じ込めていた【籠魔法】は、

“外”からは 簡単に開け閉めできるし壊せるけど、

“内”からは 絶対に開けられないし、壊せない。


そして、籠が存続する限り

中に入った生物を永久に”美しく”保ち続ける・・・


・・・という。

閉じ込められた生物の”時間”を奪う

利己的な魔法だ。



『…ヒュン!』

「っ!?」


この魔法は【隷属魔法】と(すこぶ)る相性がいい。


奴隷に「籠に入って扉を閉めろ」と命令しておけば、

後は魔法がオートでやってくれる。


奴隷に自力で逃げる術はないし、

多少の傷なら籠魔法が治してくれる。


【不老】でしかないドゥーチェちゃんが、数百年間

なんの補給も受けずに生きているのは・・・この為。






『ガギィンッ!』


”籠”から逃がす・・・それ自体は簡単だ。

問題は、隷属魔法に加えて薬と拷問と洗脳によって

2人とも、完全に正気を失っているコト・・・



「ルク・・・」

「ばかっ!油断すんな!!」

「んっ、ぅん!」


まだ燃えている籠から飛び出して来たのは

抜刀したドゥーチェちゃんだった!


過去の記録から彼女がスピード特化型である事はわかっていたけど、

準備していたセトの重力圏が発現する前に

効果範囲を飛び越えて来られちゃうと


対処のしようがないよ!



「えにゃー!!」


けれど、私には仲間がいる!


彼女の刀がルクスの剣に止められた瞬間、

姿勢を低くしたシュシュが彼女に飛び込んだ!



「・・・、」


けど、



「あにゃん!?」


彼女は、

シュシュがキメたアクロバットな連撃を

『ハラリ』と避けて



「・・・」


刀の切っ先に触れて・・・



『ブシュアァァ!!』


あれは・・・

ヒュドラ!?



「にゃ!?にゅ、にょー!!」


けど!

シュシュは5頭の連撃を(速すぎて私には見えない)身のこなしで避け・・・



「『茨の願い』!」


って!

シュシュ!?


「『花の森を這う』」


部分変化済だったの!?

振り向きざまにドゥーチェちゃんに

ナイフを向けたシュシュは



「ニードル!」


唱えた!!



「・・・」


対するドゥーチェちゃんは

顔色ひとつ変えず!



「あにゃっ!?」


シュシュの棘を半歩で避けて



「ニードルニードルニードル!!」


続く棘の応酬も、

舞でも躍るように軽々避け



『ッ…』


棘で満たされた足元に見切りを付けて。

軽い動作で舞い上がった!


そして・・・



『ダァンッ!!』


足元から!?



「「「「「!!!」」」」


無詠唱で!?



『グウゥヲオォォォ!!!!』


炎を纏った召喚獣うぅ!?

本にあった煌獅サラマンダーね!!



「…」


しかもっ!?




『グギョオォォンッ!!!!」

「「「「「はあぁっ!?!?」」」」」


もう1頭!?って、

アレは・・・



「…、」


カエン様のぉ!?



「ニャン!」


猛攻を受けたシュシュだったけど、

2頭のクロスカウンターを『シュパッ!』と避け



「ニードル!」

『グガッ!』

「ニードル!!」

『グギォ!?』


2頭の三ツ首ドラゴンの頭をひとつづつ潰して!



「お耳ちゃん!」


私の斜め後ろで

水玉に化けたアミちゃんが叫ぶと



「ニャンッ…ですよっ!」


煌獅にアチコチ燃やされていた身体のまま、

赤熱して溶け出した柱に見切りを付けて跳んだ

シュシュは



『バシャアァンッ!』


迷いなく水玉アミちゃんに飛び込み!

火を消し衝撃を殺し



『ブルルルルルゥ…っと!』


スグに、

『ブルブル』で水を払いながら水玉から飛び出し



「にゅう…。隙が無いのですよ…」


・・・などと、講評したのだった。



「…あの魔女ちゃん。嬢と同じヒュドラに加えて。姫と、同じ…煌獅まで”出しっぱなし”にできるのか…」

「・・・あんな燃費の悪そうな精霊を維持できるなんて・・・魔力量は私より上かもしれない」


過去の資料から予想は立っていた・・・とはいえ、

実際に戦った今なら、ドゥーチェちゃんの強さがよく分かる。

私以上の魔法の実力と、シュシュと同等のスピードと技量。


ハッキリ言って、反則である。



「姫…も。昔のままだね…」

「まさか、姉様のサラ…煌獅に。牙を向けられる日が来るなんてね…」


もちろん、

厄介なのはドゥーチェちゃんだけじゃない。


籠が”あった場所”から動いていないカエン様は

彼女の発動子である”扇子”を手に。体中から炎を焚き上げ、虚ろな瞳で私達を見つめていた・・・



「…で?作戦通りでいいのか?」


・・・とは、ルクスの言葉。



「・・・ん!相性的にも、ソレしかないよ!」


2人にかけられた呪いを解く為にも、

先ずは2人を無力化しなければならない。



「・・・シュシュ。ルクス。お願いね!」

「「願われた(ましたです)!」」


スピード特化で万能型のドゥーチェちゃんと、

威力重視で殲滅型のカエン様のふたりは、とてもバランスがいい。

加えて、長年一緒に戦わされていたいただけあって

息もピッタリだ。



「・・・ルフ様!」

「任せてくれよ!」


だから!

2人を無力化する為に私達がやるべきコトは!



「いくよ!【静謐(せいひつ)の蒼】!!」


反撃の第1声は、

ルフ様の【灯火(ステンドグラス)】!



「…お。」

「にゃっ!?ホントに火の勢いが治まったです…!」


【静謐の蒼】は、所謂(いわゆる)デバフだ。

敵の放った魔法や魔術の効果を2割くらい低下させるコトができるらしい。


因みに、ルフ様の固有魔術は”対象”を選択できるから

カエン様及びドゥーチェちゃんと同じ効果範囲にいるのに、

私達にデバフは罹らない。



「さっすが、ルフ!…頼んだよ!」

「恐縮です王子!頼まれましたとも!」


ソレにしても・・・

効果範囲があるのに対象が選べたり。

他人の魔術に干渉できたり。

魔族の皆様が扱う魔術はアドゥステトニアで学んだ

魔導の常識を覆すモノばかりだ。


どういう原理なのか?

こんど教えてもらわなきゃ。



「フォニアお姉ちゃん!」


っと!

ソレより今は



「ん!いくよ!」


別のコト考えてる場合じゃなかったね!



「せーのぉ!!」


アミちゃんのかけ声で切り替えた私は

意識を前に向けて



「「『噴水よ』」」


唱える!!



「「『そなたは命の泉 余りある生の飛沫上げ』」」



アミちゃんとデュエットを始めたのは、

水属性第5階位 【噴水魔法(スプラッシュ)】だ!



「・・・、」

「にゃっ!とぉー!…にゅふふっ!行かせないのですよ!」

「っ・・・」


「「『大地に実りを』」」


詠唱が少し長いから・・・



「…」

『グギョオォォンッ!!!!」

「あちちっ!…ったく!あぶねーなぁ!おぃ、ギロチン!炎を斬れ!!」


「「『高らかに』」」


みんなの援護を受けながら



「「スプラッシュ!!!」」


発現っ!!!



「にっ!」

「よっ…」


ドゥーチェちゃん、そしてカエン様と鍔迫り合いをしていた

シュシュとルクスは作戦通り、

魔法印が現れる前に離脱!



「くっ・・・」

「きゃっ!?」


けど!

2人の相手をしていたドゥーチェちゃんとカエン様は反応が遅れて

水柱に飲み込まれた!



「・・・2人とも!お願いね!」

「にゃんですよ!」

「ヤレヤレだ!」


溟王であるアミちゃんとデュエットした噴水魔法には、

普通の人なら体が千切れちゃうレベルの水勢があったんだけど・・・



「くっ・・・!」

「っ!」


でも・・・やっぱり。と、言うべきか。

今の攻撃で、ドゥーチェちゃんとカエン様が倒れることは無かった・・・



「お姉ちゃん!」

「ん!せーのっ!」


・・・とはいえ。コノ結果は予想通り!

噴水魔法はあくまで牽制(けんせい)だ。



「「『雫よ』」」


ルクスとシュシュを避けようと離れたドゥーチェちゃんと

私達に反撃をしようと意識を向けたカエン様を



「「『天の恵みよ』」ウォーターボール!!」」


この魔法で、



「あっ・・・」

「きゃっ…」


更に引き離して!!



「かくごー!!」

「…せいっ!」


「ちっ・・・」


ドゥーチェちゃんを

シュシュとルクスに任せ、



「・・・アミちゃん!」

「う、うん!」


「…」


私とアミちゃんでカエン様を引き受け、



「にゃー!」

「せいっ!」


「セト!」

「ウォーターボール!!」


2対1 ✕ 2組で。

各個撃破だ!!

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