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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 027_首無①

「ふふふ…ずっと。”こう”してみたいと思っていたぞ…」


月光差し込む

玉前回廊・・・



「…」


・・・ソコには1人の

誇り高き騎士がいた。


大盾と(ランス)を携え、

文字通り”人馬一体”となり。


暗闇に佇み

光の理の成すがまま・・・銀光で甲冑を濡らし、


朽ちた栄華を永久(とわ)に護る


首無(くびなし】の騎士 アスラム様



「コイツはオレの獲物だ。いいな…」


一方の

【獅子王】レオン様は


無手で。

私が目覚めさせた時のまま・・・

ボロボロの布切れを纏い。


太い腕と足と胴体と首筋の筋肉を張り、

血管を浮き立たせ。


荒い呼吸で。今か今かと

本能に従い暴力(やせい)を開放する時を

心待ちにしていた・・・



「・・・は、はい。お願いします・・・」

「あぁ…」


言っちゃ難だけど・・・

私が戦えばこの勝負は一瞬で終わるだろう。


セトがアスラム様を無重力空間で包むのが先か?

アスラム様の刃が私を貫くのが先か?


・・・もっとも。

最速を越えるナイフとショーテル。

私に迫る全てを斬り落とす剣。

盾で矛で暗器で身代わりですらある5条の(みずがね)・・・


果たして、あの方の刃は

その全てを貫けるだろうか?


勿論、答えは・・・唱えた通りに。



「僕…も。要らないね?リオン?」

「ワハハハ!…よく分かってるじゃないか。」

「何万年の付き合いだと思ってるのさ…」


でも、もちろん。

そんな野暮なコトを言うツモリは無い。


意義も効率も無視した

”意地と意地のぶつかり合い”・・・


俗に言う、

”男の戦い”?



「・・・みんな。行くよ」


ソコにはきっと、女の私には理解できない

”ひとつの理”が横たわっている。


何千何万何億とある戦記には、必ず1つくらい

本筋を外れた”戦いの為の戦い”なんてモノがある。


そんな非現実的な感情論の戦いが

飽きもせず繰り返し綴られてきているのだからきっと、


ソレは理屈を超えた理・・・つまり、

【真理】なのだ。


そんな偉大なモノに立ち入るホド、私は

野暮じゃない・・・よ?






「ニャンですよ!」


私の提案に体ごと頷いたシュシュは前へ・・・



「・・・?」


ではなく。

私の側に『ピュン!』と走ってやって来て



「に…」


私だけに聞こえる声で



「…ライオンさんが戦い始めるまで待ってくださいです。今は…とても。通れないのです…」


・・・なんて囁いた。



「・・・」


アスラム様に・・・俗名の通り。”本当に”首が無いから

表情を伺う事ができない。


だから分からなかった・・・と、いうのも

あるけど・・・



「・・・わ、分かった。」


そんなに緊迫していたのね・・・



「・・・ま、任せるね。」

「任されましたですよ!」


更に、



「…おい。」


左の王子様が



「ひゃっ///」


私の手を『クッ…』と引いて・・・



「…お前の足じゃ切り抜けない。抱いていく。」

「だっ///!?」

「いいな?」


・・・なんてコトを仰られた



「・・・う、うん・・・///・・・お、お願いね・・・」

「…ったく。世話のかかる…」

「にゅう!文句言うなですよ!」

「…へーへー…」


「む、むぅ〜・・・///」


・・・そこまで話すと



「…ん。」


・・・っと。

ルクスは手にしていたルフ様を



「み゛ぃ…」


片時も、アスラム様から目を離さない

シュシュに手渡し・・・



「貴様は変わらんな首無。オレ達が何の為にここまで来たか知った上でソレか…」


・・・リオン様と



「…」


アスラム様・・・



「それではモノと同じでは無いか?姫様の前に置かれた”意志無き”盾と槍…ちがうか?あ?」

「…」


2人の睨み合いに耳をそばだて。



「ソレで護りきっていればカッコもつくが。無様にやられてしまっては。なぁ…」

「…」


“その”



「情けなくはないのか?…ハリボテ騎士ぃ」

「……」


時を・・・



「魔女の小娘に敗れ。姫様を見殺しにし。無為(むい)に蘇り。やることも無く。情けなく家に帰り…ただ、突っ立っている…」

「………、」



「「!!!」」

『キイィィーーーン………』



・・・

・・





















……

………



「ぬをおぉぉおぉぉぉーーーー!!!!!」


アスラムの固有魔術【首無(ビヘディング)】は

回避不可能だ



『ギャギャギャッ!!』


僅かに蹄を動かすだけの前動作の直後、

相手の首にチャージランスを突き入れる・・・


この魔術の致死率は非常に高く。

初見での攻略は恐らく無理だろう。


…化け物魔女は除いて。な…



「ゼハアァッ!ハァ、ハァ、ハァ…」


“回避不可能”というのは誇張でもなんでも無く。

恐らく、この魔術の特殊効果だ。


ヤツが槍を構えた瞬間には

既にランスの穂先が首筋に触れており、

13魔天中 最速を誇るァイヒアですら


「…ヒャァアァッ!?…と、途中が見えなかったでしゅぅ〜」


と、言ったくらいだ。


(やかま)しジジイと同じ

理不尽(ズル)に決まっている!



「…ハァ、ハァ………ッ、ハッ!!ハアァーハアァァーッ!!ガアァーッッ、ハッハッハッハアァァ−−!!」


…あの魔女がどうやって攻略したのかは知らぬし、

知ったトコロで真似できないのは目に見えている。

仮にできたとしても、

オレの”好み”に合うとは思えん。



「…」


大事なのは…オレだ。

オレの肉体だ!


ツメとキバと筋肉だけが武器であるオレが

”どう”コイツの理不尽をねじ伏せるか?

だっ!!!



「アアァ…ッ!耐えたあぁ!耐えたぞおぉっ!!」


避けられんのなら耐えればいい!


耐えきれるのなら

ドウということも無かろうがあぁ!!




「ガハッ!…ガア゙ーッハッハッハッハアァァー…」


力で理不尽をねじ伏せるこの感覚…っ

最高だっ!!


コレだから戦いは止められん!!



黒の魔女にはしてやられたが…

あの、もう1人の黒の魔女。【夜の魔女】には

感謝せんとな!



「ハァ…ァ首無いぃ!」


しかし…だ。



「覚悟せいよおぉぉおお!!」


瞳の前の首無は…もちろん。


いつか、あの喧しジジイも!

ドラゴンジジイも!


そして…魔女”ども”も!





「…アァッーッ!次あぁ!オレの番だぁ…」


この爪に…そして、この牙で!




「っぞ、オラァッ!!」


倍返しだオラァ!!



「っ…」


ツメの痕を残し、血を滴らせたランスを

”むんず”と掴み取り



「っずをラアァァーッ!!!」


ぶん投げる!!



「くっ…!」



まだまだアァッ!!



「ぜっ!!」


ランスを手放さず、体勢を崩した首無の

ガラ空きになった横っ腹に



「っア゙アッ゛」


左フック!!



『ガギンッ!』


体制を崩しながらも…首無が向けた

盾に阻まれるも



「どゥヲラアアァォッ!!」


本命の右ストレートを!

首無の盾を持つ腕に!!



『ギイィィ…ン…』


かーらーのーぉー!!!



「むンッ!!」


衝撃で…動かなくなったヤツの腕から

盾を掴み取り



「うをラア゙ア゙ァァッ!!!」


体を捻って!



『ブビュルルルヴヴゥ!?』


馬のハラに蹴り!!



『ガンッ!』


しかし、

次の瞬間



「ぐふをっ!?」


首無のヤツめ!


盾にしがみついているオレを

馬の首にぶち当たるだと!?



「いっ…でぇーじゃ、ねーか!」


報復は即時!



「ん゛な゛ろおお゙ぉ゙ぉぉ!!」


盾を握る両手に

(パワー)を!



「ふん゛っ!」


体を無理矢理

ズリさげ、



「うヲッ!」


脚を突いて(りき)み上げ!



「ラ゛あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ーっ!!!」


ヤツの盾を放り上げ…



『ガシャアン!!』


…と、思ったが!?



「うをぉっ!?」


盾を手放さなかった(ひょっとすると…手放”さない”ではなく。手放”せない”か?)

ヤツは鎧を軋ませながら、馬上で大きく仰け反り。

(盾を手にしたまま)オレの腕から逃れた



「…ふ、ふんっ!」


よ、予定とは違うが…構うものか!



「うヲオォッ!」


そのまま!

床にヒビが入る程に下半身に力を込めて


「どぅr…」


馬の前脚の間に掌打(しょうだ)



『ギイィィ…ン…』


…んなっ!?



「!?」


あの体勢から

盾でのガードだとっ!?


コレも理不尽かっ!?



「くうぅぅ…」


馬脚の間…という、無理のある位置に

ヤツの盾は突如。現れた…



「はぁ、はぁ、はぁ~…」

「…」


はあぁぁー…まったく。

盾まで理不尽ができるなんて聞いてないぞ!?



「…」


さらに…



『キイィィーーーン………』


…次の瞬間っ!!

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