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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
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Chapter 022_敗者の咆哮②

「ッ…」


…ボクら鳥人族(ハルピュイア)は弱い。



「…ごめん。ごめんよみんな…」


固有魔術の【眠歌】は中断させられることが多いし

上空からの急襲が有効なのは最初の1度きり。


大きな敵にはダメージを与えられない…

かと言って、小さ過ぎると的を絞れない。


結局、ボクらにできるコトといえば。

偵察と撹乱。あとは伝書鳥のマネゴトくらい。



…つまるとことろ鳥人族とは、

強者のお(こぼ)れを(ついば)む野鳥の群れ。

邪魔でウルサイ羽虫の群れだ。


自分で言うのも悲しいけれど、

“空飛ぶ卑犬族(コボルト)”…という蔑称(べっしょう)

的を射ている…



「ァイヒアしゃま、ァイヒアしゃま。魔女ちゃま達は無事にお船に乗れましたれしゅ!エルフは気付いてないのれしゅ。アュリアとミァヒア。あと、チュリアが追っかけてるれしゅ。次のホォコクはユーラカーラ湖を越えてからなのれ〜しゅ!」


ボクらは弱いけど、でも、その分

“逃げ飛び”には自信がある。


飛行を阻害されない限りは

大抵、逃げ切ることができた。



けれど…

仲間のみんなは、飛び続けられるワケじゃないから

本気で追われたら逃げ切れない。


加えて、

果物が豊富で温暖な森や林でしか生きていけない

ボクらが住める場所は限られていた。


アノ天変地異と、ソレに続いた戦争は

ボクら鳥人族にとっても生存をかけた戦いだった…



「うん…ありがとうヒァリア。ラバーラに伝えておくから…あなたは持ち場に戻って。」

「さ〜、ぃえっヒャぁー!」


姫ちゃまと”そーさい”には悪いけど…


【魔族】

【神族】


勝者なんて、

どっちでもよかった。


ボクらはただ、

瞳の前に迫る”絶滅”の2文字から逃れようと

必死だった。



一族を2つに分けたのもその為…

【鳥人族】という”種”の補完の為の。

苦肉の策だった…


 ブレードハルピュイアのボクが魔族に。

 スノーハルピュイアの妹が神族に


アノ戦争がドウ転んでもいいように、

ボクらはそれぞれ組みしたのだ。



勝っても・負けても

恨みっこ無し。


あの日から連絡もとらず、

ボクと妹は”別種”として生きてきた。


魔族のブレードハルピュイア と

神族のスノーハルピュイア


風斬のァイヒア と 残雪のシァヒア

黒いハルピュイア と 白いハルピュイア

敵 と 敵


ソレが、鳥人族の選んだ道だった。


今を生きる…代替わりをした…子孫達は、もう、

元はひとつの“鳥人族”であったコトを知らない…



「っ…、っっ…」


…それでいい。

悲しい思いをするのは。ボクと妹ダケでいい…



「っ…シァ…………ど、どうか…ここには。居ないでおくれ…」



…どうかまた。

ひとつになれますように…


………

……





















……

………



「さ。て…」


空中戦は卿に任せておけばいい。

問題は…



「そそそそ、そーさい!」

老樹族(エルダートレント)がマホーでキャンプファイヤーされちゃったれしゅよ!」

「回復係の青癒珠(ケアルスライム)たまは人間のマホーツカイが唱えた砂嵐で消えちゃったれす!」

「「「ピーピー、パァパァー!!」」」


…コチラの地上部隊。

か…



「…とりあえず落ち着け。」

「「「でもぉ!?」」」

「ひとつずつ整理して解決しょう…な?」

「「「は、はいれしゅ…」」」


鳥人族は…言動と思考は幼いものの…素直な性格をしており数も多いので偵察要員としては最適だ。


本作線では、

陽動部隊に参加しているほぼ全ての種族を監視させている。



「…まず。お前は…」

「ニィリアなのれしゅ!」

「…そうだったなニーリア。何かも…」

「違うのれしゅ、そーさい!”ニー”じゃなくて”ニィ”!“ニィリア”なのれしゅっ!」

「お、おぉ…す、済まなかったな”ニィ”リア。」

「はいなのれしゅ!」

「それで…」

「は、はい!ニィリアが追っかけてた【蛇ノ目族(サーペントデビル)】が消えちゃったれしゅ!」

「消えた?…そ、それは固有魔術の【隔ノ目(アイソレーション)】を行使したからなのではないか?」

「消える前にお歌を唄ってたので、たぶん、その通りなのれしゅ!」

「それは…ヤツラの作戦であろう?別に報告せずとも…」

「ニィヒアも見失っちゃったのれしゅ!見つからないれしゅ!?そーさい!ニィヒアどうしたらいいれしゅ!?」

「………」


…知っての通り。

魔族は少数部族の連合体。

【魔族】などと、ひと言で纏めるのは乱暴に過ぎる。



「…蛇ノ目族は攻撃の瞬間、術が解ける。ニィヒア。ヤツラを見失った場所に戻って目を凝らし、無事を確認するんだ。ピンチになったり、どうしても見つからなくなったら、また報告に来い。」

「さ〜、ぃえっヒャぁー!」


鳥人族がそうであるように

部族ごとの個性が強く。見た目も性格も思想も様々だ。



「…で。お前は…」

「ッュリアなのれしゅ!」

「…ツ、ツユリ…」

「ッュリアぁ〜!」

「…す、すまん。鳥人族の名は発音が…」

「歯の間に舌を入れたまま”テュ”…って発音すればいいのれしゅ!」

「てゅ…テュ…ッ、てっュリア…」

「う゛〜…まだ違いますけどぉ〜…ヒャぁ…。…ま〜、よしとしましゅれしゅ!」

「…す、すまぬな…」

「仕方ないのれしゅぅ…」


…コレでも鳥人族は【ァイヒア】という“長”がいる分

マシなのだ。


ソレ”すら”いない十数名…中には、ひとり・ふたり…或いは逆に数万から数百万人…という種族を(まと)め戦争をしないといけなかった当時は

本当に苦労させられたものだ…



「…そ、それで。っュリア。お前は…老樹族だったか?ヤツラには土魔法と水魔法に()けた【泥蛙族(マッドフロッグ)】を付けておいたハズであろう?」

「カエルさんは木のおじいちゃんを跳び越えて先に行っちゃったれしゅ!とーくの人間と戦ってるれしゅ!」

「あいつらぁ…」


少数部族は自己主張が強く協調性がない連中ばかりで

正直。上手くいかないコトの方が多かった。


しかしソレでも、やるしかなかった。

生き残るためには。戦うしかなかったのだ…



「………仕方ないな。…ッュリア。お前の班は何人だ?」

「…3人(しゃんりん)れしゅ!」

「では、こうしよう。まず…ッュリア。お前はこのまま泥蛙族の上に飛んで「殿下に怒られたくなければ戻れ!」と伝えろ。」

「う、うヒャぁ〜…そーさい。キチクれしゅぅ…」

「それ程のコトをしたと分からせてやれ!」

「わ、分かったのれs…」

「ま、まて!まだ話の途中だ!」

「hゅ…?」

「ッュリアの班は班員で役割を分担しろ!ひとりが老樹族を。もう一人が泥蛙族を見張り、離れそうになったら注意しろ。最後のひとりは連絡係だ!…分かったな?」

「さ〜、いえっヒャぁー!」


諦めようと思ったコトも。投げ出しそうになったコトもあった。

しかしソレでも


「…ならぬ。独りぼっちの寂しさは、余。ひとりで十分じゃ…」


…そう言った陛下を見捨てるコトなど。

できるハズがなかった…



「リッヒアっしゅ!」

「…リッヒア。お前は…」

青癒珠(ケアルスライム)たまが消されちゃったれしゅ!でも、緑葉珠(リーフィースライム)たまと黄茸珠(オーカーマッシュライム)たまが(ひかえ)ていたのれ。”くっつけて”青癒珠たまにしたいのれしゅ!…いいれしゅか?」

「は?くっつけ…そ、そんなコトできるのか!?」

「本人…ほ、ほんじゅ?が、できるって言ってるっしゅ!」


断じて毒花に感謝などせぬが、

戦争の”おかげ”で我輩たちが飛躍したのは事実だ。


ソレまでほとんど無関心だった隣人を

知り

対話をし

文化を学び

協調を目指す…


…ソレが

飛躍でなくてナンだと言うのだ?



我輩たち不死の魔族は成長できないが、

記憶と知識を頼りに前へ進む。


“できない”のなら学べば良い。

何が大切かを…思い出せば良い。






「…そーさい。総裁!」

「…どうした?ラバーラ?」


…音なき通信が耳の奥を震わせたのは



「大物のご現臨(げんりん)だよ…」


…ちょうど。

空を征したボルレアス卿が

燃え盛る大地に降り立ったトコロだった…



「…」


その様子を毒花の里の城壁から見下ろしていると、

耳の奥でラバーらが…



「フォルテピアノ…」


…小さく。

呟き…



「…【魔花】を宿せし、花の哲学者サマだよ。」


…我輩。

そして…



「ボル爺も…聞いてるわよね?」


…卿にとっての。

宿敵の名を投じ



「………頼んだよ?」



我輩ら2人に



「「無論だ!!」」


筆を託したのだった…

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