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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
10th Theory
407/476

Chapter 019_嵐の準備②

同日 夕方・・・


「ガハハハハ!」

「うきゃあ!?」


ルクスに(もた)れて”うつらうつら”していた私を襲ったのは、

倉庫を揺らす豪快な笑い声だった・・・



「なにっ!!」

「わきゃ!?」


何の前触れもなく聞こえたその声に

慌てたルクスは私を抱き締めて下がり・・・



「うにゃーん!!」


・・・そして。シュシュが飛びかかった

その先・・・



「ガハ…おぉっと!」


倉庫の入口を見てみると



「ぎにゃ!?」

「フハハハハ!速さは素晴らしいな小娘!しかし…軽い。軽いぞっ!そんな軽い攻撃では我に傷1つ負わせられん!」


ソコには・・・



「ぎにににぃ…」

「ガーッハッハッハッハァー!!!」


シュシュのナイフとショーテルを正面から浴びながら

腰に手を当て、笑い声を上げる



「・・・シュシュ。そのヒトは味方よ。」

「みぃ!?」

「刃を仕舞って・・・」

「に、にゃん。です…」


大きな体に立派な(たてがみ)

モフモフかと思いきや、ゴワゴワの毛並みをした

二足歩行のライオン様は・・・



「・・・こんにちは。リオン・ヴァルパ・ヴィネ=リオーナ閣下。ご機嫌麗しゅうございますか・・・?」


魔国イチの武闘家

【獅子王】こと、リオン様だ!



「み…」

「おー、お嬢!好調には好調だが…」


リオン様は・・・

見た目は大きなライオンで。



「”かーなーりぃ”…暴れ足りないぞ!…がーはっはっはっはあぁーーー!!」


中身も概ねライオンだ。



「・・・左様でございますか・・・」

「「「「「…」」」」」


固有魔術は特にないらしいんだけど、

魔族の中でもピカイチの肉体を持っており。


爪と牙。そして筋肉を武器に、そして鎧に

敵に特攻する。恐ろしい格闘家だそうだ。


今回はその攻撃力と突破力を活かして私達と同じ

潜入部隊に参加してくれる。


・・・う?

どうして脳筋っぽいリオン様が陽動部隊じゃなくて。

潜入部隊に参加しているのかって?

ソレは・・・



「・・・間もなく作戦時間です。その後は、よろしくお願いしますね。」


・・・なんでも。

()抜けのエルフを相手にするより

陛下やドゥーチェちゃん。そして魔王城に今も残る

2人の(同僚である)13魔天と戦いたい!というのが

理由なんだって・・・



「オォウ!任されよぉ!!」


・・・要するに脳筋である。


封印された時も、無策にドゥーチェちゃんに特攻して。「あっ!」という間に

斬り刻まれて。そのまま封印されちゃったらしい。

搦手には極めて弱いとか。なんとか・・・



「ガッハッハッハ!血が騒ぐワイ!!」


今回の作戦を話し合った際、

部隊編成変えた方がいいんじゃないの?

という意見が多かったけど・・・


ま。いろいろあって。最終的にはヤマ様の

「好きに暴れさせてやればいいだろう。…最悪。シアリア島内でエルフに見つかった時。いい目くらましになるからな…」

・・・という意見が通った。



「・・・んふふふ。頼もしいです・・・」


つまり、

おとr・・・



「ガーッハッハッハァー!オウとも、頼れ頼れぇいっ!」


・・・んーん、

なんでもない。



「・・・んふふふ・・・」


大事な仲間だよ・・・





















「…嬢。」

「っうをっ!?」

「・・・う?」


そして・・・



「・・・そ、そういえば!ご挨拶がまだでしたね、」


目立ち”まくり”のリオン様がシュシュの警戒を潜り抜け

倉庫まで来られたのには理由(ワケ)がある。ソレは・・・


「・・・ご機嫌麗しゅうございますか?ルフ・アンラムンラ・アイム=アオトロム閣下・・・ルフ様っ!」


今しがた、リオン様の手から空箱に置かれた

不思議なランタン。ソレが・・・



「…やぁ。ボチボチだよ…」


【灯火】という”そのまんま”な異名を持つ

13魔天のひとり。


ルフ様だ!



「…こ、このランプ…しゃっ、喋るのか!?」

「・・・ん。・・・ルクスが驚いたように、私も最初はビックリしたよ・・・。・・・あと、ルフ様は”ランプ”じゃなくて”ランタン”だからね。間違えちゃメよ?」

「…違いが分からん。」


ランタン・・・生きるランタン!?

・・・それって、戦力になるの?


と、思うかもしれないけど。

ルフ様の固有魔術【灯色(ステンドグラス)】は攻防から支援まで、何でもできる万能技。


ルフ様は魔王軍でも屈指の戦力を誇る

頼れる大隊長様だったそうだ。


派手で目立つリオン様が”コッソリ”ここまで来られたのも、

ルフ様が魔術で気配を消してくれたお陰!



「ふふふ…”ランプ”と”ランタン”の違いなんて意識しないものね。…まぁ、言葉の定義なんて気にせず。好きに呼べばいいから…」

「…お、おぉ…は、はい…。…た、助かります…」


「よろしくお願いしますですよ!」

「…よろしくね。リオンに恐れず挑んだ、勇敢でキュートな子狐ちゃん…」

「に…にゅふふふっ!褒められちゃったのです…」


魔王軍で一番の紳士。ソレは

“ランタン”で間違いない・・・・



「・・・そ、それで・・・ルフ様」


話が逸れちゃったケド・・・



「・・・お声がけいただきましたが・・・ご用で?」


さっき確か、話しかけられたよね・・・?



「…うん。少し、聞きたいことがあってね…」

「・・・なんなりと!」


ルクスに解放して貰い。

しゃがみこんでルフ様と目線(?)を合わせると・・・



「…今回の作戦。教えてくれるかな?」

「・・・う?作戦は手紙に・・・」


今回の【魔王様救出作戦】は

決行日まで時間がなかったけれど、


ァイヒアちゃまが事前に。長い時間をかけて

封印されている13魔天の居場所を調べ上げてくれていた。


だから、

今回の作戦は私とヤマ様。そしてアミちゃんとァイヒアちゃまの4人で

話し合い。事前に決めたコトを紙に綴り。

封印を解いた時に皆さんに手渡し・・・


・・・今日、ここに。

現地集合してもらったのだ。



「…せっかく嬢たちが手紙を書いてくれたのにね。僕、読んでいる途中でリオンに掴まれてココまで来ちゃったから。内容把握できていないんだよ。」

「・・・あ。ええと・・・は、はい。分かりました。では、ご説明致します・・・」

「ごめんね。リオンに聞いても無駄だったから…」

「・・・ん、んぅ・・・」


すると・・・



「あはは…」


・・・いつの間にかお昼寝から目覚め。

私達の話を聞いていたアミちゃんが・・・



「…みんな変わらないね。懐かしいなぁ…」


・・・と、センチな言葉を呟き。

そして・・・



「よしっ…っと!」


腰掛けていたヒュドラベッドから

『ピョン』と飛び降りて



「…みんな。集まって!…最後にもう一度、作戦を確認するよ!」

「「「「「了解っ」」」」」


唱えたのだった・・・



・・・

・・





















……

………



「急げっ!」


私たち調査部隊が出発した日の夜…


荒い息を吐く精馬から飛び降りた同僚が息も絶え絶え

語った言葉に。そして手紙の内容に


息を呑んだ…


「ヤマラージャだけではない!ボルレアスにリオン…マスバラスエまでもが解き放たれた!」


…ソレが意味する所はひとつしかない。

コトは急を要した…



『ヒッ、ヒッ、ヒッ…』

「えぇい、何を呑気にやっている!鞭をくれてやれ!!」

「は、はいっ!」


陸路を進んでいた私達は急遽、船でシアリアを目指す事にした。

道中の集落で水夫となる下種を捕まえるのには苦労したが…


3,000年以上前に製造された(世界樹の枝を用いた)高速船が

生きていたのは幸いだった。


このペースなら明日早朝には

シアリアにたどり着くだろう…



「に、兄様!」


…船尾に移り、

盛り返した白波を見つめていた私の背中に

慌てた声を投げかけたのは

調査隊として同行させたモルデントだった



「…なんだ?」


振り返ると彼女は

私に小さな製紙を差し出し…



「ロ、ローズの里が救難連絡を寄越した!と、ベラドンナから”銀の鳥”が届きました!」


銀の鳥…と、いうのは穴熊共の魔法である【銀翼魔法(シルバーウィング)】で造られた

鳥の”おもちゃ”だ。


速さと信頼性を考えれば駿馬に乗って進むのが一番だが、

手紙を届ける先が船上で。しかも、今日のような嵐の日であれば有効な手だ。


…おそらく。

ローズの里からベラドンナの里へは

非常時以外の行使が禁止されている楓魔法の【蓮伝魔法(ロータス)】で連絡がなされ。

ベラドンナの里から私達へは、父上か誰かが下種に命じたのだろう…



「…見せろ。」

「は、はい!」

「ふむ…」


…手紙によると。


やはり、ローズの里ではシアリアに伸びる橋の入口に設けられた

茨の門に兵を配置。厳戒態勢を築くとのコト。

そして…



「…私達はこのままシアリアへ向かい。魔族に先んじて魔王を解き放て。…との御達しだ。」

「ま、魔王を…?」


「…あぁ。」

「っ…」


…おそらくモルデントは

”こう”考えているのだろう…


魔王の復活を目論む魔族共に

みすみす、当の魔王をぶつけるなど無謀ではないか?

まして向こうには、契約魔法を無効化する術者がついているというのに…


…と。

しかし…



「…安心しろ。」

「え…」

「…魔王の自由を奪っているのは【契約魔法】ダケではない。たとえ術を破られたとしても、寝返ることはあるまい…」

「そ、そう…なのですか?」

「そうなのだ。呪術師のスケルツァンド様が施術なされた。間違いはないだろう…」


我々の作にハマり。戦の序盤から打ちのめされていた魔王は

追い打ちとばかりに魔女に倒されたことで

完全に意思を挫いていた。


弱り切った心に重ねられた。隷属魔法・洗脳・薬に、虐待の数々…

…ヤツは、既に。ヒトではない。


心を持たぬ。「炎」という名の現象だ…



「スケルツァンド様が!?…な、なら!安心ですね…」


スケルツァンド様は

族長=森人(ガーデナー)=父様…ヴィオローネ様”の”母君であらせられ、

この森の…“影の”長だ。


知識も経験も、誰よりも勝る

あの方が言う事だ。間違いはないだろう…



「…加えて。魔女と魔王の側近もいる。」

「そ、そうですね…」

「ローズの里の連中も簡単には落ちまい…」

「そう…そうですよね!」


戦争(ナニ)も知らぬ幼い妹を…



「…分かったら行け。手紙に狼狽えた兵達を安心させてやれ」

「はいっ!兄様!!」


…配置に戻した私は



「…」


嵐にかき消される程のささやき声で



「…(わざわい)(もたら)す。悪魔どもめがっ…」


…ひとり。

治まらぬ胸騒ぎに憤っていた…

憤っていた…

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