Chapter 014_今は昔①
「では…フィリア殿。まずは【獅子王】リオンの呪いを解くところから始めましょう!」
「・・・う?」
契約を破棄したヤマ様はコレまでの経緯を話した後に
ソンナ事を言い始めたのだった・・・
「…リオンは何処にいるんだい?」
「ヤツの目覚めの地で”その時”を待っているそうです…」
「”その時”?…なら、だれか行って起こしてやれば…」
「ソレはそうなのですが。あの性格ですので…」
「…あぁ。察し…」
話を続けるアミちゃんとヤマ様を
「ちょっ、ちょっと待って・・・!」
慌てて止めた私が
「・・・まさか。私に他のヒトまで解放させるつもり?」
問いただすと・・・
「…うん?あぁ…ヤマラージャ。全部で何人?」
「ろく…いや。5人ですな。…行方知れずの者もおります故。全員とは…」
いや、そうじゃなくて!
それ以前の問題として!!
「・・・カエン様救出のために詳しい情報が必要だったからヤマ様は助けたけど。他のヒトを助けるつもりはないよ!?」
「「えっ…」」
アミちゃんとヤマ様が他の魔族のヒトを助けようとしている理由は明白だ。
だからこそ、
ココはハッキリ言っておかないと・・・
「・・・アミちゃん。」
「う、うん…?」
「・・・約束は、カエン様を助けるコトであって。エルフとの戦争や、魔国を取り戻すコトじゃ無かったよね?」
「それは…」
故郷を奪われた魔族や、エルフに搾取されているヒトビトに
同情しないワケじゃない。
でも・・・
「・・・アミちゃんとカルマート様を信じたから”紙を介さなかった”のに・・・ソレを無碍にするつもり?」
「…」
・・・彼らの戦争は7,000年以上昔に”終わっている”
不老不死のヒト達はソウじゃ無いのかも知れないけど
でも。この大陸に住まうヒトや動物や植物…イキモノは
悲しい歴史を礎にして、新しい環境に適応して。
頑張って”今”を生きているハズだ。
ソレを今更・・・しかも、
異大陸人である私の力を使おうなんて。
そんなの・・・
「…べ、別にフィリアに戦ってもらおうとは…」
「・・・やっぱり!報復戦争をするつもりなのね!?」
「あっ…」
「・・・カエン様救出のために、最低限の戦いはあると思ってた。ソレは、覚悟してる。でも・・・”戦争”・・・は、違うよね?アミちゃんのホンネがソレなら。私は協力できないよ!」
キッパリと告げた私に
「そ、そんなコト言わずに、さぁ…」
アミちゃんは・・・
「お願いだから。ねぇ…?」
下手に出て。
潤んだ瞳で私を覗き込み・・・
「…お願いだよ。お姉ちゃん…」
・・・深い青で。
「・・・」
私をしずm・・・
『キンッ!』
・・・その時!?
「…ったく!」
アミちゃんの首に金一閃!?
そして、
『バシャァアンッ!!』
「殿下ぁっ!?」
水しぶき!?
「わ!?」
ほぼ同時に
私は・・・
「…っと。」
「ル、ルクス・・・?」
(さっきまで目の前にいたのに、今は後ろにいる)ルクスに
抱き留められていて。
しかも、かなり後ろに遠ざかっていて・・・
『ゴポポポポポ…』
「で、殿下…」
先程までいた場所ではアミちゃんの着物を着た人型が
首から水しぶきを上げており、
傍らには、”なんとも言えない”表情のヤマ様が・・・
「ロードォ!?」
「ロード!!」
さらに更に!?
「・・・うぅ!?サ・・・」
「スグにお手当しますね!」
「うぅ!?け、怪我なんて・・・??」
サリエルの温かい手が私の目を覆い・・・
「ロード!」
「うぅっ???」
ウリエルも。
大きな腕で私を包み・・・
「…おい。どういうツモリだ?」
2柱に私を預けた
ルクスは・・・
「ル、ルクス!?」
サリエルの腕を払ってみると、
アミちゃんとヤマ様に切っ先を向けている!?
さすがにやりすぎ!
止めようと腕を伸ばしたんだけど・・・
「ロードォ!」
「わ!?」
再びサリエルに目隠しされて、
引き戻されて・・・
「…ロード。今の一瞬。悪魔はロードに呪いをかけようとしたのですよ?」
「・・・・・・う?のろ・・・い・・・??」
ウリエルが・・・
「【魅了】いう…精神汚染の魔術ですね。私と天使Bの祝福が効いていますし、下僕がスグに引き離したので”未遂”で終わりましたが…」
「・・・ちゃーむ・・・?」
・・・そして、サリエルが。
「…ったく!面倒かけさせんなよ!」
「・・・うぅ!?・・・ご、ごめ・・・ん?」
ルクスと、そして2柱の反応からして
本当のコトなんだろうけど・・・
「・・・今のが?」
「…も。申し訳ございませんでした…」
「・・・ヤマ様・・・」
サリエルとウリエルのされるがままだった私に
声をかけたヤマ様は…
「…ほら。殿下も謝罪してください!今のは失礼を通り越して宣戦布告に等しいですよ!?」
「わっ!?」
水から生み出されたアミちゃんの頭を
「い、痛い!痛いよヤマラージャ!」
「これくらいの罰は当然ですぞ!殿下!」
「ちょっとフザケただけ…」
「魅了をアソビで唱えてはなりませぬぞ!」
『ギギギ…』と、下に押し付けて…
「なんだい!ちょっとくらい…」
「これ以上我儘を言うなら、後で陛下にお伝えしますよ!」
「えっ…っ!ず、ずるいぞヤマラージャ!」
「弟君が我儘放題と知れば。カエン様もさぞかし失望されましょうなぁ…」
「っぐ、ぐぅ…」
「…ご理解頂けましたか!?わかったら…ほら!フィリア殿に謝るのです!」
「・・・」
・・・え。
えぇとぉ・・・
「ぶー…」
「殿下っ!!」
ふ、2人のやり取りは。
なんていうか・・・
「…ごめんよ。フィリア…」
「・・・は、はぁ・・・」
「…フィリア殿。我輩からも紙を介した謝罪をさせて頂きます………」
「・・・・・・」
・・・こ、子供と。
お父さんみたいだね・・・
「「…」」
サリエルとウリエルは、
祝福の確認が終わっても私の両側で武器を手に
アミちゃんを睨みつけ・・・
「…」
・・・ルクスも。
剣を向けたまま微動だにせず。
「うぅぅ…」
「…」
私は・・・
「・・・」
この場を治めるには。
”沈黙”するしか
なくて・・・
・・・
・・
・
「・・・」
1分くらい。
かなぁ・・・
「…ありがとうございます。フィリア殿…」
「・・・んぅ・・・」
“ようやく”ヤマ様が・・・
「…ぐずっ…ご、ごめんね。ごめんよ”フォニア”…」
・・・そして。
途中から涙を流し始めたアミちゃんが。
私の”名”の事も忘れて、
『グズグズ』言いながら顔を上げたのだった・・・
「・・・えと。も、もう。しないでくださいね・・・」
「もっ、もちろんだよっ!」
・・・ま、まぁ。
今後も警戒しておいた方が良さそうだけどね・・・
「その…」
「・・・う?」
怖い顔をした2柱を見上げ、警戒を止めない
ルクスの背中を見守っていた私に・・・
「…ワケをお話してもよろしいでしょうか?」
ヤマ様が。
アミちゃんの頭にポンと手を置いて告げたのだった
「・・・ワケ?」
「なぜ殿下が。先程のような短絡的な行動に出てしまったのか?で。ございます…」
「・・・」
ソレは性格なんじゃ・・・?と、
思いつつも
「・・・お聞かせください。」
このままでは彼方も此方も治まりそうもないので
そう言うと・・・
「殿下…殿下に限らず。我々”【不死】の魔族”というモノは。”成長”できないのです…」
・・・う?
「・・・成長できない?」
「【発現】…”皆様”におきかえると【誕生】…して以降。肉体的にも精神的にも”当時のまま”なのです。”時が止まっている”…と、言っても良いかもしれませぬ。」
「・・・・・・そんなハズはない。アミちゃんとヤマ様の体を診断したけど。肉体的には・・・メ、機構的には・・・人間と大きく変わらなかった。」
「…おや?そうなのですか?」
「・・・間違いない。アミちゃんの体もヤマ様の体も”代謝”をしていた。ソレは生物学的に「生きている」という意味であり。同時に・・・」
「…」
「・・・」
・・・成長も老化もする。
という意味である・・・ハズ。
「…同時に?」
そのハズだ・・・
「・・・」
でも、エルフの【不老】の例もある。
アミちゃんの【水化】という超常現象も目の当たりにしてきた。
【代謝】が・・・なんだというのか?
そう言いたげな【リブラリアの理】が瞳の前に・・・
「…治癒術の事は分かりかねますが…」
・・・答えられないでいた私に
ヤマ様は口を開き・・・
「…少なくとも我輩は。記憶のある2万年ほど前からこの姿のまま…」
「・・・に、にまん・・・」
「…殿下も陛下も。他の者も同じです。憶えている”記憶”の長さに差こそあれ。みな、初対面当時と同じ姿。同じ思考をしております…」
「・・・」
「…無論。時を経る度に知識は増えていきます。しかし…
…どんなに知識を得ても。思考…
…考え方や、言葉・行動の選び方。
熟考できるか否か?その深さ、そして速さ。
何かに依存したり。特別な嗜好があったり…
…おそらく他の種族の皆様…いえ。
【不死でない】皆様が時間経過によって得るであろう
“経験”というモノを我々【不死】のモノは”省みる”コトができないのです。」
「・・・えっ・・・・・・とぉ・・・」
「…殿下は。見た目の通り、心も体も…皆様から見れば…【子供】である。と、いうコトでございます…」
「あ、あはははー…」
「・・・つ、つまり・・・
・・・どゆこと?」
林檎も わぁかんなぃ・・・
少し遅れて活動報告上げました!
・・・よろしくね。(追記:2024/04/14 16:35)
* * * * *
す、すみません!
Chapter No.を間違えていましたね!?
修正しました。(2024/04/20 15:30)




