#4《ヤバ過ぎるチート能力?》
……そうして。
僕は全国で放送された次の日、霊夢の家の庭掃除をしていた。
……まぁ、アレだ。
約束してたことだから掃除をしに来たってわけだ。
ちなみにもちろん、今は男の姿じゃない。
能力が使えない状態。……そう、女の姿だ。
まぁ、流石にあの姿で外を出歩くわけにもいかないからな。
「お〜っす、元気してる〜?」
「……元気してねぇよ」
「いやぁ、一躍有名になっちゃって。羨ましいわねぇ、このこの」
「……嫌味かよ」
「いや嫌味ってわけじゃないけどさ。けどアンタ、普通に大変そうよねぇ」
「そりゃあ大変だよ……あんなことになっちゃったんだからな」
全国的に報道されてしまい、僕の顔は知れ渡ってしまった。
「昨日は警察に連れて行かれるわ、全国的に報道されるわで。というか、警察に捕まった後どうなったの?」
「……どうなったかぁ……。簡単に言うと能力者かどうか調べられて、何もなく終わった」
「あ、普通に何も無かったんだ。……けどアンタ、能力者でしょ? どうやって切り抜けたの?」
「いや……どうやら今の状態だと能力者だって判定されないらしいんだ。だから、調べられても能力者だってバレなかったし、謝られたな」
「へぇ……そんなことあるんだ。じゃあアンタは今の状態だと普通の人間って認識でいいのかしら?」
「ま、そうらしいな。……多分、男に戻ったら能力者だけど、女だったら人間になるって感じだと思う。……しかしまぁ、変な警察だったよ」
「どんな感じに変だったの?」
「……なんか、思ってた警察と少し違ってたって感じかな」
「思ってた警察と違った? どゆこと?」
「そのまんまの意味だよ。……なんか印象が少し変わったかなって感じ。まぁ、もうあの警察と会うこともないだろうし、いいんだけどな」
「ふぅん……じゃあアンタ、ようやく警察に入る気になったの?」
「んなわけねぇだろうが。……印象が変わっても僕が警察が苦手ってのは変わらねぇよ」
「ま、そうでしょうね。んで、アンタって結局これからその姿で過ごすつもりなの?」
「そうするしかないだろ……あの姿で外歩くの怖すぎるし」
「よね〜。盗撮されてSNSにアップされてそう」
「……んで拡散されて警察に目を付けられる、か。いやまぁもう目を付けられてるわけだから、ばれないようにしないといけないな」
「けどアンタ、あれからもう二十四時間経ってるわよね? なんでまだ女の子の姿なの?」
「簡単だよ。……家を出る前に能力を発動させて、この姿になったってだけだ」
「……それ、なんかシュールな光景ね」
「まぁ、わからなくもないけど……。仕方ないだろ、そうしないと姿を変えられないんだから」
「なんか、ちょっと不便よねその能力」
「僕だって好きでこの能力を持ってるわけじゃねぇよ……。僕も、貰えるんだったらお前みたいな使えそうな能力が良かったなぁ……」
「あのねぇ……そう言われても私の能力ってそこまで良いわけじゃないわよ? ただ空を飛べるだけ。……本当にそれだけの能力なのよ? 確かに傍から見たら羨ましいと思っちゃうかもしれないけど、私からしたら当たり前のものだから。特別良いと感じないのよねぇ」
「まぁ、それが当たり前になっちゃったんだったらそうなるだろうな。……とまぁ、雑談してたら庭掃除が終わったわけなんだが……帰っていいか?」
「うーん、せっかくだしうちの中入る? 霊歌も、アンタに会いたがってたし」
「……元気にしてるのか? 霊歌は」
「鬱陶しいくらいには元気よ。あの子ったら元気が有り余ってるから正直テンションについてけないのよねぇ」
「僕だってテンションついてけないが……。まぁ久々に来たし顔見せに行く程度のことはしておくかぁ」
「そうして頂戴。……んじゃ、私ちょっと出かけるから戻ってくるまであの子の面倒をよろしくね」
そう言ってそそくさとその場を立ち去る霊夢。
「……赤の他人に妹の世話を頼むなよなぁ」
と呟きながら、僕は家の中に入るのだった。
***
そうして僕が、家に入った瞬間だった。
「おぉ! 今日は女の子なんだね! なんで今日は女の子なの?」
「いやまぁ……色々とあってだな」
「色々ってなぁに? 教えて!」
「うぅん……まぁ僕が色々と有名になっちゃったから顔を晒せなくなったんだ。だから当分は、女の子の姿で生活することになる」
「ふぅ〜ん、なんか大変そうだねぇ」
「今は本当に大変だからなぁ……」
「けど私よくわかんないや、子供だから」
「……ま、わかんなくていいと思うぞ」
この少女の名前は博麗霊歌。
霊夢の妹であり……元気いっぱいの女の子だ。
……こいつは僕の能力について知ってる数少ない人物だ。
まぁ、子供だから知ってるけどあまり理解してないって感じなんだろうけど。
「そういえばさ、まったりっていつお姉ちゃんと付き合うの?」
「……お前はいつも僕と霊夢を結婚させたがるな」
「だってお姉ちゃんとまったりが結婚したら、私たちは家族になるってことでしょ? それってめちゃくちゃいいことだと思うんだよねぇ」
「残念だったな、僕と霊夢が結婚をすることはない。絶対にな」
「えぇ〜? なんでぇ〜? 結構二人お似合いじゃん? なんで付き合わないわけ???」
「お似合いって言われても、僕らはお似合いじゃないと思ってるからな。……だから、僕らは付き合わないし結婚もしない」
「……じゃあ、私がまったりと結婚する」
「そんなことをしたら僕が霊夢に殺されるから勘弁してくれ」
「殺されないよ、まったり最強だし」
「あくまで能力を使ってる時が最強なだけであって、今みたいな状態だと最弱だよ。その弱点を知ってる霊夢は、僕を殺そうと思えば殺せる」
「じゃあ私も殺そうと思ったら殺せる?」
「まぁ、殺せるだろうな。……けどだからって殺さないでくれよ?」
「寝込みを襲って殺しちゃうことあるかも」
「……勘弁してくれよ」
そんな感じで、霊歌と僕は会話する。
ちなみに、霊歌は能力者だ。
……だが、その能力を使うことはできない。
なぜならば……彼女自身、能力を知らないからだ。
能力者かどうか調べる検査をした結果、彼女は能力者だということが分かった。
……だが、どんな能力かは判明していない。
彼女自身が、どんな能力を使えるかわかってないから。
……まぁ、僕のように妙な能力でないことを祈るのみである。
***
「……なんか、結局ぐうたらしちゃったな」
「なんかアレよね、もはやもう一つの家よねここ」
「……だな、居心地が良すぎる」
ちなみに霊歌は寝てしまった。
僕と話しすぎて疲れてしまったらしい。
「しっかしまぁ、なんでこんなにもアンタに懐いてんのかしらねぇ」
「さぁな、どういうところが気に入ってるのか知らんが」
「……話しやすいとかじゃない?」
「僕ってそんな話しやすいか?」
「正直普通かしらね」
「……だろ」
「もしかしたら、最強の能力ってところが好きだったりするのかもね」
「……子供心くすぐられるだろうな。まぁだが、僕は今最弱だからな」
「そうね、能力者と戦えばすぐにやられちゃうでしょうね」
「最弱であり…最強、か。なんか漫画とかでありそうな能力だよなぁ」
「確かにねぇ、完全に主人公じゃない。けどまぁ、アンタそれなりの活躍してないけどね」
「今回しただろ、人間を守ってテレビに出演して有名人になったぞ」
「言われてみたら……確かにそれも活躍と言えば活躍ね。ま、アンタからしたら嬉しくない活躍なんでしょうけど」
「……まぁな。あの時能力者から人間を守ったせいで、今こうやって有名人になってるわけだからな」
「けど、助けなくてよかったとかそういうことは考えてないんでしょ?」
「……どうだろうな、流石にそれは考えてないと思うけど。僕が手を出してなかったらさらなる被害が出てたかもしれないからなぁ。しかしまぁ、許せないのは撮影してたやつだよなぁ。普通に考えて盗撮だし、それを全国ニュースに流すって……駄目じゃないか?」
「駄目でしょうけど……まぁこの国に住んでる以上許容しないといけないんじゃない?」
「……まぁ、それもそうだな。みんなが忘れることを祈るしかないな」
「大丈夫よ、どうせみんな一か月後にはそういうこと忘れてるでしょうから」
「どうだろうなぁ、忘れてほしいもんだが……」
案外忘れられなさそうな気がするんだよなぁ……。
「……んまぁこれから女として生きていくって決めたし、ぐちぐち言ったって仕方ないんだけどな」
「……覚悟できてるの? 女の子として生きる覚悟」
「……するしかないからな。だからしたよ、覚悟」
「……なんか、みんなが忘れてもアンタ女でいることに慣れちゃってそのまんま女として生活しそうで怖いわね」
「……ワンチャンありそうだから否定できないな、それ」
「まぁけどいいわよねぇ、アンタって。女の子だとめっちゃ可愛くなるんだもん。ほんとなによこの髪」
「やめろっての……髪触られるとなんかくすぐったいんだよな」
いちいち髪を触ってくる霊夢に僕は冷たく突き放す。
「……はぁ、なんか腹立つわねぇ。世の中の女の子は必死に可愛くなろうとして努力してんのに、アンタは一切努力してないんだから」
「仕方ないだろ、そういう能力なんだから」
「……あーあ、可愛くなる能力とかが良かったなぁ」
「……それって能力じゃなくてもよくね?」
「……確かに、言われてみたら」
などと会話をしながら、霊夢はスイッチを入れてテレビをつけた。
「……うーん、僕かよ」
「アンタもほんとに大変ねぇ。……けど、この騒ぎようを見る限り、本当にアンタみたいな最強チート能力者ってこの世界にいなかったのね。アンタ以外にも一人や二人いると思ってたけど……いないもんねぇ」
「なんで僕だけそうなんだろうな……」
「運が良かったからとかじゃない」
「つまり、僕はラッキーって事か」
……まぁ全然ラッキーと思ってないわけだが。
「けどよ、もしも霊歌の能力が僕みたいなチート能力とかだったらどうする?」
「そんなの……隠すしかなくない? それを公表したら絶対に面倒なことになるのは目に見えてるし」
「……確かにな、そん時はその選択が一番いいと思う。だが……自分の能力がわからない能力者か。普通に考えて……なんかヤバそうだよな、こいつの能力」
「もう……怖いこと言わないでよ。私みたいにちょっと使えるような能力であることを祈るわ」
「例えばどんな能力だ?」
「……お金を生み出す能力とか?」
「お前の頭には金しかないのか?」
と、頭の中に金しか入ってなさそうな霊夢に僕はそう告げるのだった。




