#3《チート能力者、大ピンチに!?》
……そして。
「はい、おてて出してくれる?」
「……なんで?」
「貴方が能力者かどうか確かめるから」
「……警察の人間は能力者かどうか調べる事が出来るって聞いたけど、どうやって調べるかまでは知らないんですよね。手を出すだけで調べられるんですか?」
「いや、そんなわけないじゃん。……調べる方法は血液だよ」
「へっ……? 血液?」
「うん、つまり注射ってこと」
「え!? 嫌なんですけど! なんで何も悪い事してないのに血を採取されないといけないんですか!」
「いやだって、そうじゃないと調べられないし」
「……絶対嫌です断固拒否します」
「じゃあ、貴方が持ってる情報を教えてくれるの?」
「情報なんて何も持ってないんですけど……」
「……私はそれが嘘にしか聞こえない」
「時には人を信じるってことも大事だと思うんですけどねぇ」
……さてさて、本当にどうしよう。
僕には今何も力がない。
この状態だと、能力が使えないからだ。
……使えたら、この場から強制的に逃げる事も出来るのだが…。
生憎と、今能力を使う事は出来ない。
このピンチ……どう切り抜けるか。
「そういうわけだからほら、早く手を出して。……血を採取して貴方が嘘を吐いてるかどうか確認するから」
「……注射苦手なんだよなぁ。まず、痛いのか無理なので、注射は勘弁してもらっていいですか?」
「それじゃあ貴方が能力者かどうか確かめられないじゃない。……能力者かどうか確かめるためには血を採取するしかないの。だから、早く手を出して。……出さないと、強制的に血を抜くことになるよ」
「……警察っていうのは本当に横暴な集団なんですね……。そうやって武力行使をして、心が痛まないんですか?……それでもしも私が能力者じゃなくって、ただの一般人だったら貴方は責任を取ってくれるんですか?」
「わかったよ、じゃあ責任者取ってあげる」
「……どんな責任ですか?」
「さぁね、貴方が望んだことをしてあげるよ?」
「……そうですか。じゃあ……」
どうしよう。
責任取ってほしいとも思ってないし、その責任をどんな内容にするかも考えてなかった。
……僕はただ、血を採取されなければいいんだけどなぁ。
「早く言ってくれる?」
「……どうしてそこまでするんですか? もしも違ったら、何かしないといけないんですよ?」
「だって、確信があるもの。貴方が能力者だっていう」
「けど、その証拠はないわけですよね?」
「ないね。だから勘だよ。勘で、貴方が能力者だって思ってる」
「……もしかして、そういう系の能力者だったりするんですか?」
「そういうわけじゃないよ。……私の能力は戦闘系だからね」
「へぇ……戦闘系ですか」
「だから、無いと思うけど逃げ出すような事があれば痛い目見るかもしれないから」
「……警察が脅迫をしていいんですか? 貴方は正義の味方なんですよね? 私たち住民を守るための存在なのに、住民を脅すって正直意味わかんないですよ」
「……確かに守るべき住民かもしれない。けど逆に、住民に危険を及ぼす能力者なのかもしれない。……あのね、能力者と犯罪者って意外と紙一重なの。使い道を誤れば、人間を死に至らしめる事だって可能。私たち警察は、その犯罪者を捕まえるのが仕事であり……それを起こさないのも仕事。普通の人間から見た能力者ってどんな印象か知ってる?」
「いや……僕普通の人間ですから知ってますよそりゃあ」
「じゃあ言ってみてよ」
「……僕から言わせて貰ったら、能力者は全員犯罪者予備軍ですよ。あいつらは能力者ってだけで威張ったりするし……普通の人間を下手に見てたりする。貴方のように警察の能力者だったらまだしも、野良の能力者は本当に恐怖でしかないですよ。能力者と人間は違う。……能力者は、人の皮を被った化け物だって、僕は思ってます」
「ふぅん……そうなんだ。君は、能力者が嫌いなの?」
「別に嫌いってわけじゃないですけど……。まぁ、好きってわけでもないですね」
「……私も?」
「もちろん、というより今のところ貴方は嫌いです」
「おぉ〜。言ってくれるねぇ」
「強制的に警察署まで連れてこられて、それで血まで抜かれようとされてて……そんな横暴な事をする警察は嫌いです」
「まぁ、確かにそうだね。私のやってる事は結構駄目だと思う。……けど、駄目な事をしないと駄目なんだよ。嫌われ役がいないと、救う事は出来ない。私が今やってるのはね、事前に犯罪を防いでるの。……貴方がもしも能力者だったら、私たちは貴方をマークする。貴方の言った通り、能力者は犯罪者予備軍だからね。何がする前に、事前に防ぐことも大切なの。だから、貴方に嫌われようとも私は貴方が能力者かどうか調べる。貴方に嫌われるよりも、人間を助けるほうが大事だから」
「……そうですか」
僕はため息を吐いて。
「わかりましたよ。じゃあとりあえず手を出せばいいんですか?」
と言って、僕は手を差し出した。
「……ありがとう。けど、もしも能力者でも別に何かするわけじゃないから安心して。別に貴方は犯罪を犯したわけじゃないから……」
そんな会話をしつつ、僕は血を抜かれた。
正直注射は苦手だし、能力者だってバレたくなかったが。
……まぁ、仕方ないだろう。どうせ言っても強制的に血を抜かれてただろうし。
そうして、その少女は一旦この部屋から出て行った。
どうやら…能力者かどうか調べに行ったようだ。
「……はぁ」
しっかしまぁ、面倒な事になったなぁ。
これで能力者だってバレたら……僕は警察に勧誘されるのだろうか。
いや、それは正直嫌だ。
僕は結局、警察が苦手な事に変わりはない。
入ろうと思わないし、仲良くなりたいとも思わない。
僕は、平穏に生きたいだけなのだ。
……能力者としてじゃない。ただの人間として生きたいだけだ。
……能力なんて持っていてもら人間から嫌われるだけだからな……。
と、そんな事を頭の中で思い浮かべていると……。
「……えっと」
その少女が、部屋に戻ってきた。
「とりあえず……ごめんなさい」
すると少女は、僕に頭を下げた。
***
……なぜ頭を下げているんだろうと疑問に思っていたが、その疑問はすぐに晴れた。
「……調べた結果、貴方は能力者じゃないってわかった。私の警察としての勘は外れてたみたい」
「言ったじゃないですか…僕は能力者じゃないって」
……どうやら、この状態だと僕は人間と判断されてるらしい。
まあ、よかったよかった。これで能力者だってバレて、警察からマークされてたら面倒な事になってた。
「……それじゃ、責任を取ってもらいますよ?」
「うぐ……そういえばそんな事言ってたね」
「もしかして……あの言葉を取り消すんですか?」
「いや、取り消さないけどさ。けど、どう責任を取ればいいの?」
「……それは正直考えてないですけど。まぁ、今度会うまでに決めておきますよ。とりあえず……今日はもう帰る事にします」
「あ、うん……わかった。寄り道しないようにね? 能力者に襲われたりしたら大変だから。君……可愛いんだし」
「可愛い……ですか」
嬉しくないなぁ、と思いつつ、僕は。
「ありがとうございました」
と、とりあえずそう言っておくのだった。
***
……それから、家に帰ってのんびりとしていたその時だった。
突然、スマホが鳴り響いた。
……どうやら誰かから電話が来たらしい。
僕はスマホを拾い上げて、耳にあてがった。
「……どうした?」
「あ…そういえばアンタ今女だったわね」
「そうだよ、能力使ったからさっきからずっと女だよ。……んで、どういう要件だ?」
「いや、ちょっとテレビつけてみなさいよ。……えっと、5チャンネル見てみて」
「……わかった」
そう言いながら、僕はテレビを付けて。
「……へっ?」
という変な声が漏れた。
やっていたのはニュース番組だった。
だがそれだけだったらまだよかった。
そこに、映し出されていたのが。
「僕、なんでテレビ出演してんの?」
「……ま、今回の現場を撮影してた人がいたって事よ。それで、アンタの化け物っぷりがバレて、テレビデビューしたってわけ」
「……えぇ…おいおいヤバいじゃん」
「ヤバいでしょ、普通に考えて。まあ、あれだけヤバそうな能力者を一瞬で沈めちゃう能力者がいたってなったらそりゃあこうなるわよねぇ。……案外あそこで介入しなかったほうが良かったかも」
「ほんとだよ……とうすんだよこれ」
恐らく、これで僕の存在は瞬く間に広がっていくだろう。
そして、確実に警察からもマークされてしまう。
……いやまぁ、悪い事をしたわけじゃないんだけどね?
どちらかといえば正義の味方のような事をしたのに……なんでこんな事にならなきゃいけないんだ……。
「まぁ、今回幸いだったのがいい意味で有名になった事かしらね。みんな、最強の正義の味方が出てきたって事で大喜びみたい。……ま、確かにあんな強いんだったら誰も敵わないし人間からしたら安心でしょうね。けど、考えないのかしら……そんな最強の正義の味方が敵になったら……」
「……ならねぇよ、僕は」
「アンタをよく理解してる私ならそれはないって言えるけど……ま、この話はいいわ。それでアンタこれからどうするつもりなの?」
「どうするつもりって……どうしたらいいんだろうな」
これで僕の顔は知れ渡ってしまった。
「外に出ないほうが良いよなぁ」
「いいと思うわよ。確実になんか色々と言われるでしょうし。……それに、警察と鉢合わせたら確実にアンタスカウトされるわよ。警察としては、アンタみたいな最強能力者を放置出来ないでしょうしね。警察に引き込んで、絶対に犯罪者にさせないようにしてくるでしょうね」
「……はぁ、面倒な事になったなぁ」
「けど……アンタにはそれを切り抜ける方法があるじゃない」
「切り抜ける方法……? なんだよそれ」
「簡単よ」
「……お前今絶対ニヤニヤしてるだろ」
「わかっちゃった?」
ケラケラと笑いながらそう言ってくる霊夢に、僕は言った。
「ある程度予想出来てるが、切り抜ける方法ってのはなんなんだ?」
「ふふっ…それはね。これから女の子として生きて行けば、全然大丈夫だと思うわよ?」
それを聞いた僕は、ため息を吐いて…。
「……やっぱそれしかないよなぁ」
と、呟くのだった。




