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この戦闘からは逃げられない

「おい、どうする?」


「いや、どうするもなにも……」


 男子生徒二人が物陰に隠れて、イルミ達の様子を伺っていた。


 ザイド達のチームと戦って消耗してくれる事を望んで見ていたが、早々にザイドは剣を納めて去っていってしまい、しばらくして失格を告げる花火が飛んだ。


「俺達含めて残り3チームだぞ? ここまで上手く隠れてやり過ごしてきたけど、そろそろ限界じゃないか?」


 開始からずっと身を潜め戦闘を避けてきた生き残った二人は、最後の最後、戦いで消耗したチームを叩き、美味しい所だけを頂く――そんな算段を立てて、この模擬戦大会に臨んでいた。


「まあ、待て。後、もう一チームいる。誰が残ってるかは知らねえけど、俺達と同じように隠れているような奴じゃなければ、ここまで残ってるんだ。相当な実力者だろう。お互いに潰し合ってくれれば万々歳だろ?」


「はぁ……なんとも情けねえ作戦だな」


 自分も了承した作戦ではあるが、改めて聞くとこれほど他人任せで気概のない作戦もなかった。


「仕方ねえだろ? まともに戦って俺達がコーデリアに勝てると思うか? それに見たかよ『レベル1(ザ・ワン)』の動き、間違いなく俺達よりも強いぞ」


 遠くでザイドとイルミの戦闘を見ていた、二人は驚愕していた。初めは単身でイルミがザイドに仕掛けた時は、無謀だと嘲笑っていたが、そんな考えは戦闘が始まってすぐに掻き消された。


「自分で言って情けなくねえのかよ、お前は? 一応、冒険職だろ? 戦闘に対するプライドとかないのか?」


「うるせえよ! これに勝てば俺達はコーデリアに勝ったと大々的に言えるんだぞ? こんなチャンス滅多にねえだろ!」


「そんなに上手くいくかねえ……」


「大体ここまで誰にもバレずに生き残っているのがすでに僥倖(ぎょうこう)よ! これは神様が俺達に勝たせようとしてくれてるのさ!」


 興奮して声が大きくなるのを嗜めるように


「ちょっ、分かったから声がでかい――」


「ふーん、それじゃあ、アンタ達はもう神に見捨てられたみたいね」


「たく、せこいマネしてんじゃねえよ雑魚共が」


「「あ――」」


 二人の声が重なる。


 ヤバイッ――と、一目散に逃げ出そうとするが



――この戦闘からは逃げられない!



 エンカウントしてしまった二人の死神に為すすべなく男達は轢き殺されるのであった。


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