ある深夜の事
コーデリアがイルミ達と共同生活を始めてから数日が経った深夜の事。
慣れない『双児宮』で労働をした疲労のせいで毎晩、朝までグッスリ眠っていたコーデリアであったが、相変わらず失敗が多い事は変わりないが、少しだけ慣れたのか、今夜は朝が来る前に目が覚めた。
窓の外を見ると、月明かりだけが夜の街を照らしている。
「……トイレ」
まだいつも起床する時間ではないコーデリアは寝惚けながら、部屋から出てトイレへと向かう。
「?」
眠り目のままだが、コーデリアは向かいにあるイルミの部屋のドアが少し開いている事に気付いた。
「んー?」
その時は特に気にする事なくコーデリアはトイレへと向かうが、すぐに帰ってきたコーデリアは、少し覚めた頭でイルミの部屋のドアが開いている事がやはり気になった。
そっと中を覗いて見るがイルミがいない。
――どこに行った?
トイレに自分が行った時、一階には人の気配も無かったはず。
――家の外?
部屋にも一階にもいないという事は外出しているという事だ。たが、こんな深夜に一体どこへ――
「リーアーちゃん」
「ひゃうっ」
音もなく背後から名前を呼ばれながら急に抱きつかれ、珍しく悲鳴を上げるコーデリア。抱きつかれた背中には、ふくよかで柔らかい感触がした。
「あはは。可愛い悲鳴ー」
「り、リディアさん……」
振り向くとそこには『双児宮』の店員である双子の妹――リディアがいた。
悪戯っぽく笑うリディアはその豊満な胸を更にコーデリアに押し付けて抱き締める。
「こんな所で何してたのかな? まさかイー君を夜這い? 見かけによらず意外と大胆だねー?」
「いえ、これは……」
客観的に自分の状況を見て、深夜にコッソリと同級生の部屋を覗いている女性。言い訳が立たない事もないが、なんとも苦しい状況であった。
「ふふ、冗談よ。イー君の事が気になったんでしょ?」
答えに困っているとリディアがコーデリアの行動を勝手に解釈してそう言った、
「……はい」
イルミの事が気になっていた事は間違ってもいなかったのでリディアの解釈を肯定する。
「うんうん、リアちゃんはイー君のパートナーだもんね」
コーデリアから離れたリディアは
「いいよ。ついて来て」
「……?」
――どこへ? と疑問に思うコーデリアだったが、ついて来てという事はやはりイルミは家の外にいるようである。となると、俄然気になってくるのは外、こんな深夜に彼が一体何をしているのかであった。
――ついて行けば分かる……かな。
リディアに言われた通りコーデリアは黙って後ろからついて行くのであった。




