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レベル0のポーションマスター ~どん底に落ちた没落貴族、レアスキルに目覚めたので自分の領地を手に入れる~  作者: 雉子鳥幸太郎


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月明かりの下

「ひゃっほう! ふっかふかーっ!」

 クロネが大きなベッドに飛び込んだ。


「おい、あんまり乱暴にすると壊れるぞ?」

「へーきだって、こんなに丈夫だもん」

 調子に乗って、バムバムとベッドの上で跳ねている。


「……ったく、子供みたいに」


 やれやれと頭を押さえていると、

「やだ、また汗かいちゃったみたい、もう一度お風呂いただいてくるわ。二人とも先に休んでて」と、リターナが言った。


「あ、ああ……、わかった」

「いってらー」



 * * *



 ベランダに置かれたテーブルでワインを傾けるリスロンの前に、リターナが音も無く現れた。


「おや、飲みたりなかったのかな?」

「いえ、十分ご馳走になったわ」


「何か私にご用でも?」

 リスロンは小さな肩を竦める。


「さっきのエルフ達、あれは……『NONAME(ノーネーム)』ね?」


 リスロンの耳がピクリと動いた。


「ほぅ……君は大変物知りのようだ。だが、それを聞いてどうする?」

「……教えて欲しいことがあるの」


 リスロンはワイングラスをテーブルに置き、おもむろに立ち上がると、テラスの隙間から外を覗いた。


「私は小さい……。外の景色を見るのでさえ、こんな隙間から覗くことしかできない」

「でも、貴方は、他人には見えない景色を見ることができるわ」


 リスロンは否定も肯定もせず、ただ小さく笑った。


「何が知りたい?」

「数十年前、ある北東の山村で、秘密裏に行われた儀式の参加者を知りたいの」


「知ってどうする?」

「別に? 貴方に迷惑は掛けない」

 リターナはリスロンが置いたワイングラスを手に取り、月明かりに翳した。


「賢者複製計画か……」と呟くリスロン。

「ええ、エルフとも繋がる貴方なら知っているはずよね……栗鼠王?」


 リターナはリスロンの耳元で囁いた。


「飲み過ぎじゃないか?」

「あら、そんなに警戒しないで、私は仲間よ?」


 あっけらかんと答えるリターナに、リスロンは小さく息を吐き、

「いいだろう。私の知っていることは教える、だが知らないものは知らない、それでいいか?」

「もちろん」


「ルドニック・ネルリンガーは知っているな?」

「ええ、四大貴族の一角、北東の山岳地帯を治めるネルリンガー家当主ね」


 リスロンは小さく頷く。


「……あれは、ルドニックが極秘裏に進めた計画だ。事の発端は、最後の賢者アルハザードの聖遺骸(左手)が奴の手に渡った事から始まった。そして数十年前、占星術師であるルドニックは、ある重大な事実に気付いた」


「何に気付いたというの?」

「儀式に必要なカードが全て揃っていることにさ」


 リスロンは続けた。


「賢者の聖遺骸、三百年に一度の惑星直列(グランドクロス)、3月3日生まれの双子の姉妹……奴は再び賢者の職能を強制的に復活させようと試みた」

「でも、儀式は失敗」


「その通り、その儀式の失敗でネルリンガー領の村が一つ消えた。厳しい箝口令が敷かれ、今では知る者も少ない」


「双子については?」

「村と一緒に消えたと聞いている」


「生き残った可能性は?」

「……ないだろう。実際に村を見た同胞がいる、とても人が生き残っているとは思えない有様だったそうだ」

「そう……」

 リターナは静かに目線を落とした。


「すまないね、私が知っているのはそれくらいだ」

「ありがとう、お礼はどうすれば?」


「この後ゆっくり、と言いたいとこだが……生憎、私は毛深くてね、君をくすぐってしまうといけない」

「ふふ……、優しいのね」


「お礼なら、その一言で十分さ。ほら、夜風は身体に悪い、また明日話そう」


 リスロンがそう言うと、リターナはそっとハグをした。


「本当にありがとう、おやすみなさい……」

 そう言って、いつの間にか消えたリターナ。


 リスロンは葉巻に火を点ける。

 おもむろに月を見上げ、ため息混じりの煙を吐いた。


「栗鼠王、ねぇ……」



 * * *



 朝食を済ませた俺達は、屋敷からそう離れていない村の建設予定地に来ていた。


「へー、ここに造るんだ?」


 クロネが言うと、リスロンさんが頷く。


「ここなら、メンブラーナからの通り道だし起伏も少ないからね」

「確かに良さそうですね」


「おーーーーい!」


 遠くで呼ぶ声が聞こえる。

 待ち合わせていたバロウズさんが飛脚竜に乗ってやって来た。


「バロウズさーーーん!」


 俺は手を振って応える。

 バロウズさん以外にも若い男が同行していた。


「ふ~、いや、老骨には堪えるわい」

「またまた、そんな風には見えませんよ」


「ここが予定地かの?」と、辺りをぐるりと見回す。

 するとリスロンさんが、

「ええ、そうです。是非ともお力をお借りしたい」と会話に入ってきた。


「これはこれは、リスロン殿……。こうしてお会いするのは何年ぶりですかな?」

 バロウズさんは目を細め、リスロンさんと握手を交わす。


「六年、いや……七年になりますかな?」

「ふぉっふぉ、年は取りたくありませんなぁ……、ああ、ご紹介します。今回の開発に関わる者です。私同様、気兼ねなく使って下され」


 後ろに立つ若い男が、一歩前に出た。


「ウォルフ・シュタイナーと申します、リスロン殿の()()はかねがね」


 自身に満ちた瞳、身体も引き締まっていて、商人というよりは冒険者の方が似合いそうだ。


「参ったね、彼女(レディ)達には口止めしてあったのだが……」

 リスロンさんはおどけて見せる。


「ははは、これは一本取られましたな」

 場が和んだところで、バロウズさんが俺をウォルフに紹介した。


「彼がクライン、今回の仕事はすべて彼の紹介によるものだ」

「どうも、ご紹介にあずかりましたクラインと申します、メンブラーナの皆様の協力を心より感謝いたします」


「この度、若輩ながら開発に携わらせていただく、ウォルフ商会のウォルフ・シュタイナーと申します、主に職人の差配、工具類などを扱っております」

「まずは資材や職人の確保かと思ってな」

 バロウズさんが、ウォルフを見ながら言う。


「それなんですが、バロウズさん達には、村の区画案と現場の指揮を執れる人材の派遣をお願いしたいのです。というのも、資材は森から、人夫(にんぷ)は獣人の方々にお願いする予定ですので」


「なるほど……、それでしたら早速、腕利きを手配して参りましょう」

 ウォルフは自信満々に答え、俺達に軽く会釈をすると、飛脚竜に跨がり街へ戻っていった。


「ふぉふぉ、若いと行動が早い。では、我々は商談と参りましょう」


 バロウズさんはにっこりと微笑んだ。

新作を始めました!

今度はローファンに挑戦です。


【タイトル】

世界初の憑魔術師に覚醒したので会社を辞めようと思います! ~ハズレ職かと思いきや二重覚醒していた俺、美少女悪魔を憑依させて戦う最強の力でリア充を目指す!~


覚醒者と非覚醒者の格差が広がった世界で、派遣事務員の主人公が覚醒者になるお話です。

初日は12・16・20時の三回更新します、ぜひ、ぜひ、読んでみて欲しいので、どうぞよろしくお願いします~!


下にあるリンクから飛べますので、よろしくお願いします!

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