バレンタインの答え
年末年始はあっと言う間に過ぎてしまった。その間に小鳥遊家を訪れなかった訳ではない。お正月にはお節もご馳走になった。しかし、彰に対して何を言っていいのか分からず、彰の言葉に甘えて答えを保留にしている。自分の気持に気が付いてからは何だかんだと彰を意識してしまい、顔に血が上る回数も増えている気がする。
(このままじゃダメだよね)
分かってはいるが、どんなタイミングで彰に気持ちを伝えていいのか分からない。そして、そんな瑠璃が頼るのは、恋愛の先輩である星奈であった。
「彰君に気持ちを伝えるタイミング~?」
「うん」
「そんなの、とっておきのイベントがあるじゃない!」
「イベント?」
「分からない?バレンタインだよ。バレンタインこそ絶好のイベントじゃない!」
バレンタイン!2月にそんなイベントがあった事すら忘れていた。昨年までは、友チョコのご相伴にあずかるだけのイベントであったが、元はと言えば好きな人に気持ちを伝えるイベントであった。そのことに今、気が付いた。
「そっか。バレンタインって気持ちを伝える日だったね」
「そうそう。良い機会じゃない?」
「そうかも・・・」
星奈の言う通りだ。バレンタインに私の気持を彰君に伝えよう。でも、それには準備がいる・・・。
「星奈・・・」
「何?」
「簡単に出来るチョコレート教えてください」
「そうくるか」
誰かのために料理などしたこと無い瑠璃なのであった。
星奈の協力でブラウニーなるものを作れるようになった瑠璃。とうとうバレンタインの当日である。そして今日も「母の作ったチョコレートケーキを食べに来てください」と小鳥遊家に誘われているのであった。
小鳥遊家に到着した瑠璃。真と遊びびつつ、ブラウニーを彰に渡すタイミングを計りかねて居た。
(このままじゃダメ・・・)
「あ、彰君」
「なんですか?」
「ちょっと2人になれないかな?」
瑠璃の顔はもう真っ赤である。気を利かした彰が自分の部屋へ瑠璃を誘った。
「どうしたんですか?」
「これ、バレンタインのチョコレート。ブラウニーなんだけど・・・」
「わあ。ありがとうございます」
本当に嬉しそうにラッピングされた箱を受け取る彰。
「そ、それでね。この前の、クリスマスの答えなんだけど・・・」
真っ赤な顔に更に血が上る。答えなきゃ答えなきゃ。
「私。彰君のこと好きだと思います。けれど、まだ実感が無くて・・・だから、私にもっと恋させてください!!」
やっとの思いで言い切った瑠璃。彰の方を見やると彰も瑠璃に負けず劣らず顔が赤くなっていた。
「ありがとうございます。僕、頑張ります」
「うん」
「瑠璃さんに、もっと恋させてみせます」
「うん」
「だから、たくさん会ってくださいね」
「うん・・・身長も高くなってね」
「もちろんです」
その後、お互い無言になった。二人の無言の時間は小鳥遊夫人が二人を呼びに来るまで続いたのだった。ただ、食堂へ向かう二人の手は繋がっていた。
何事もなかったように、と瑠璃は振舞っているが顔はまだ赤みがひいていない。それは彰も同じであった。そんな二人に気づいているのかいないのか、小鳥遊夫人が瑠璃に尋ねる。
「瑠璃ちゃん。ケーキはどう?」
「美味しいです。甘すぎなくて、いくらでも食べれます・・・」
「ありがとう。あら彰?あんまりケーキ食べないの?」
「・・・ちょっと心がいっぱいで」
「?」
「あの!お義母さん。今度、ケーキの作り方教えてください」
「まあ、良いわね。娘と料理するの夢だったのよ」
時間は穏やかに過ぎて行った。
雲雀丘瑠璃。高校1年生。婚約者有。ただ、婚約者は小学校6年生。
「親に決められた婚約です。でも、好きです」
だからと言って。
「ショタコンと呼ばないでください」
最後までお読みいただきありがとうございました。