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王子みっしょん  作者: シラ猫


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初ミッション

スマホの予測変換で誤字になる時があります。チェックしても抜けてる場合あり。

教えて頂けると助かります

 窓にうっすら写っている姿を見てにんまりしてしまう。この日の為に全身を黒で統一している服装は、我ながらとても格好いいと思う。初めて指先が出ている手袋を着けた時なんて感動で震えたもんな。


 当たり前だけど、自分以外の隊員にも支給した。俺は平等を愛するからな。


「こ、こちらジーンです。ターゲットが指定場所に来ました。アルマさま……あっ、すいません。た、隊長……作戦を実行しますか?」


 左の耳たぶに付けているイヤリング型の魔道具からジーンの声が聴こえてきた。


 これは相手との通話を受信するもので、サファイア色の小さな魔石がダイヤ型にカットされている。パッと見はお洒落に見えるので、誰も魔道具だと思うまい。


 魔道具の通称は受信デンデンだ。名付けはもちろん隊長である俺だ。


 それにしてもジーンは緊張してるのか口調がたどたどしかったな。


「うーん、彼女は我が部隊で俺に次ぐナンバー2なのだからちゃんとして欲しいな。こればかりは経験が浅いから仕方ないのか」


 ぶつくさ言いながら上着の胸ポケットから小さなエメラルド色の丸い魔石が付いた送信用の魔道具(通称:送信デンデン)を取りだした。


 送受信魔道具もそうだが、これらは一般には販売していない我が部隊専用アイテムだ。幸運なことに魔具作成が得意な非常に優秀な隊員がいる。名はターニャ。今回のミッションにも同行している。


 彼女は幼女にしか見えない容姿だが、最近成人を迎えたばかりの18才のレディだ。ついでに言うとジーンも同じ歳で俺は15歳。年下だけど隊長だから一番偉いのだ。そしてジーンよりちょっぴり背が高い。


 口元に送信デンデンを近づける。


「各員に通達する。これよりターゲットを確保する。ワキワキ作戦実行だ! 照明が消えたら確保するぞ! ターニャやれ!」


「こ、こちらターニャ、了解。照明を落とすっす。サン、ニー、イチ、ゴウっす!」


「ヤダちょっと! まだ暗視目薬付けてないんですってば……キャッ!」


 焦ったジーンの声が聴こえたが、ターニャの合図と同時に照明が消え、俺はターゲットの元に駆け出した。急に部屋の灯りが消えたせいかターゲットが焦った声を出したがもう遅い。


「ジーンです。ターゲットを確保しました!」


 ターゲットを挟み込むように俺とは反対側で待機していたジーンが先に確保したようだ。流石はナンバー2だな。


「ジーン、良くやった。よし、ターニャ照明をつけてくれ!」


「は、はいっす」


 部屋の灯りが灯されると、背中越しに片腕を捻られ、地面に転がされている太った男がいた。料理長の証であるコック帽は床に落ちている。鷹の刺繍が施されたコック帽は、ニコラハン王国の国旗と同じ。これが許されるのは王宮で働く者で国王に認められた人だけだ。


 俺は男を無視して、食材保管庫まで歩いていき、中に置かれている三段重ねのケーキを取り出すと、近くのテーブルに置いた。


 この食材保管庫は魔道具であり、状態維持の高位魔術が施された貴重な代物だ。この中では鮮度が維持されるので腐る事はない。昔、死体を入れたらどうなるのか母に聞いたら冷めた目で見られ、叱られた事がある。


 昔の思い出は取り敢えず置いといて、勝負を決めますか。


「さて、ワット王宮料理長。糖分の取りすぎで体調を崩された事がある陛下は、医師から糖分の多い菓子類は控えるように言われている。にもかかわらずケーキを献上しようとしてるな。これは王国への反逆罪だと思うが反論はあるか?」


 俺が問いかけるとワットはこちらに顔を向ける。


「あなたは……アルマ王子じゃないですか! これはどういう事でございますか? 私が反逆罪なんて侵害ですぞ……」


 ジーンに捻られた腕が痛いのか苦悶の表情をしているな。


「仕方ない、ジーン解放してやれ」


「はい、隊長? えっと……、もうアルマ様とお呼びしてもいいんでしたっけ?」


 作戦任務中は隊長呼びを厳命したんだけど、まだまだ浸透しきれてないか。


「まだ作戦は完了していないだろ? だから隊長と呼べ」


「はい、隊長了解です」


 なんか疲れたのでケーキ上段のクリームを指ですくって舐めた。


 甘くて美味しい。情報は間違っていなかった。これはゴールデン牛から作ったやつだ。甘さに品があり、口当たりが絶妙なんだよね。家畜にするのが不可能で、ミルクの取得難易度が超高いと言われるだけの価値はある。


「アルマ様ズルいです。私だって食べたいです」

「うちも食べたいっす」


 女子二人が勢いよくケーキに近づき、俺の真似して指にクリームを付けて舐め始めた。非戦闘員のターニャには隠れていろと命令してたのに、あっさり出てきちゃったよ。ゴールデン牛効果恐るべしと言うべきか。


 そんな二人を放置して問題を片付けるか。


「さてワット料理長。私もそなたの王国への忠誠心を信じたい。だから取引しようではないか。陛下ではなく私にこのケーキを献上するならば、今回の件は不問にしてやろう。どうだ? 悪い提案ではないだろう?」


「いくはアルマ王子でも無理でございます。これは陛下から直々に拝命されたものです。それに陛下が食されるのではなく、隣国から来られる客人の為に……」


 急に黙って口をパクパクしているワットの視線の先を見たら、三段ケーキが二段になっていた。しかも二段目も半分くらい食べられている。


「ワット料理長、お互いに勘違いがあったようだ。陛下から受けた仕事の邪魔をしてはいけないな。うむ、我々はこれで失礼しよう。おいお前ら行くぞ!」


 女子二人の腕を掴み、脱兎の如く逃げ出した。ワットが俺の名前を叫んでいたが気にしない事にした。


 本来ならば料理長専用キッチンの近くの部屋で着替えてから自室に戻る予定が、ワットが追いかけてくるもんだから、色んな人に見られてしまった。


 父上に叱られないといいな。


 普段は王子で、裏では悪を追い詰める秘密部隊で華々しく大活躍する予定が、いきなり失敗してしまった。ミッション達成とは簡単にはいかないもんだ。

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