チカン裁判
『登場人物説明』
裁判官:ジーン
被告人:アルマ
被害者:レイチェル
検察官:ラルフ
弁護人:ターニャ
「うっ…………。ここは?」
気がつくと、暗い部屋で両手首を縛られており、椅子に座らされている。
俺を挟むように両隣に兵士が黙って座っていた。
動こうとしてみたが、隣にいる兵士に押さえつけられた。
よく見たらコイツら事件現場にいた兵士じゃん。左の奴はドア番してたし。
おかしい。
記憶ではレイチェルを強引に城に連れ帰り、現場検証はラルフに任せた。
戻ってからジーン達が喚いていたが、俺は自室に閉じこもり、食事も取らずに早めに就寝したはず……。
部屋に明かりがつく。
俺は部屋の後方にある椅子に座らされていた。
前方の段になって少し高い場所でジーンの姿が見えた。
黒い上着を羽織っている。法服のようだな。
ここは法廷なのか?
ジーンはこっちを見てから、右手に持っている小型の木槌を振り下ろした。
カーーーーン。
「静粛に、静粛にしてください」
コイツは何を言ってるんだ?
「おい、ジーン。これはいったいどういう事だ? 俺を縛って遊んでいるのか? いいからさっさと縄を解け!」
ジーンを怒鳴りつけたんで、謝ってくると思いきや、冷めた目で俺を見返す。
いつものジーンと違うな。
「静粛って言ってるのが聞こえませんか?」
ジーンは左手にベルを持ち、それを左右に振った。
「ぐああああああっ!」
体中を痛みが襲った。ビリビリする。
あのベルを振ると俺が攻撃されるのか。
「静粛にと言ってる意味が分かりませんか?」
意味は分かるが、痛いと普通は叫ぶだろ?
ジーンはまたしてもベルを振る。
「ぐああああああっ!」
また体中をさっきの痛みが襲う。
これは駄目だ。
あの攻撃が来ると、つい叫んでしまう。
もしやまた来るのか?
「貴方も懲りない方ですね」
やっぱりか来るのかよ。
クソッ、今度は耐えれるか。
楽しそうな笑顔でジーンがベルを振る。
めっちゃ痛てぇぇぇ。
歯を食いしばり、声を出さないように必死に耐えた。
「よろしい」
勝ち誇った顔したジーンが憎い。
後で覚えとけよ!
「被告人は台の前へ」
ジーンが言い終わると、両隣の兵士に無理やり立たされて、証言台に連れて行かされた。
さっきは気づかなかったが、左側の席にはレイチェルとラルフ。右側にはターニャが座っている。
「検察官、起訴状を」
ジーンが指示すると、ラルフが立ち上がる。
「被告人は王都にある事件現場にて暗闇に乗じてレイチェル嬢のお尻を触りました。罪状は痴漢です。以上」
お尻触ってないって。現場にお前もいたじゃんか。
「被告人は内容に間違っている点はありますか?」
ジーンが俺に確認してきた。
「ジーン、冤罪なんだ。聞いてくれ!」
ジーンは無言でベルを揺らす。
「ぐああああああっ!」
あの攻撃は防げない。
「ジーンではありません。私は裁判官です。宜しいですね?」
悔しいがここは従うしかない。
「……はい」
「では言い分があれば述べなさい」
どうにかしてこの場を切り抜けるしかない。
「裁判官、あれは冤罪なんです。私は触っていません」
信じてくれるか分からないが、ジーンに本当のことを話した。
「嘘です。私は現場でレイチェル嬢の悲鳴を聞きました。レイチェル嬢、お辛いかもしれませんが、教えてください。貴方は被告人にお尻を触られましたか?」
ラルフは俺の意見に反論し、レイチェルに語らせようとしている。
頼むレイチェル!
触ってないと言ってくれ!
「…………はい」
くっ、やはりそう言うのか。
「被告人、レイチェルさんは貴方に触られたと言っております。本当に触ってないのですか?」
ジーンが俺に確認を求めてきたが、どう言えば信じてくれるんだろう。
「触ってないというか、手の甲が少し触れました」
「貴方は被害者に申し訳ない事をしたと想っているんですかっ! 彼女はみんなの前で泣いていましたよ!」
ラルフが激しく俺を責める。
なんかお前に恨まれる事したのか?
確かにあの時レイチェルは泣いてたけど、今は俺が泣きたいんですけど。
「辛い思いをさせたのは悪かったと思います。けど、歩いている時に少し触れた程度ですよ?」
「被告人、あなたにとっては大したことではないかもしれませんが、レイチェル嬢には非常に辛いことだと考えられませんか?」
ラルフはどうして俺を追い込もうとする。
あれか?
現場検証をやらせた事を根に持ってるのか?
反省したら許してくれるかな。
「そう言われると、反省しています。でも痴漢行為をするつもりは全くありませんでした」
「裁判官、意義あり!」
コイツ全然許してくれないな。
「検察官、意義を認めます」
「被告人は、後ろを歩いている私を何度も振り返って確認していました。これは痴漢行為をするタイミングをはかっていたと思われます」
あの行為は確かに紛らわしいな。
馬鹿な事をしてしまった。
「その言い分は間違っています。私はあの時にいた部屋があまりにも臭かったので、ラルフがどう対処しているか確認しただけです」
「被告人の行為は極めて悪質な上、まったく反省しておりません。よって死刑を求刑します」
「死刑? 死刑なの? ちょろっと触れただけで死刑になるのか? おい、ラフル! お前には慈悲はないのかっ!」
「被告人黙りなさい。弁護人は意見がありますか?」
「ないっす。うちも死刑でいいと思うっす」
ターニャよ、弁護人が死刑を望むな!
「お前はちっとも俺を弁護してないじゃないか! 何しに来たの? 裁判官、弁護人を交代させてください」
ターニャでは駄目だ。
代わりの弁護人を用意してもらおう。
「被告人黙りなさい。弁護人の交代は認められません」
ジーンに弁護人の交代を拒否されてしまった。
「判決を言い渡します。……死刑っ!」
結局死刑かよ。
誰も味方がいないじゃん。
こんなんヤラセだよ。
ヤラセ裁判だわ。
ラルフがおもむろに手をあげた。
「裁判官、少し被告人と話をさせてください」
「いいでしょう。手短にしてください」
「被告人、貴方が罪を認めて反省しているのであれば、減刑して死刑を求刑しません。どうですか?」
おっと死刑は回避できるのか。
これは思わぬラッキーが舞い込んだようだ。
「私はレイチェルさんに痴漢行為をしたことを認めます。そして心から反省しております。大変申し訳ございませんでした」
俺はレイチェルに向かって頭を下げて謝った、
「裁判官、……死刑を求刑します」
「結局死刑じゃないかよ! 今のくだりは何だったの? 俺で遊んでたの?」
「被告人黙りなさい。……もう一度判決を言い渡します。…………死刑っ!」
「だと思ったわ!」
なんだこのくそ裁判は。
死刑以外の道ないじゃん。
「これにて法廷を閉廷します」
ジーンの宣言後に視界が暗転した。
目が覚めると、ベッドにいた。
「……夢だったのか」
背中に嫌な汗を掻いている。
「まじで夢で助かったわ」
痴漢で死刑なんて王族の歴史に名を残す恥だった。
んん? よく考えたら裁判制度は導入してないわ。
あれって他国の制度だもんな。
ともかく、
レイチェルに会ったら、心から謝罪しようと思う。
今回の話は夢オチでした(^_^;)




