おまけ その後の種明かし
蒼汰が帰ってきて、玄関先で抱き締めてキスをして、本当はすぐにでもそのまま触れたい気持ちを、理性を総動員して収め、ゆっくり話をしたり食事に行ったり、夜までは穏やかに過ごした。
「今日、泊まってくだろ?」
「うん」
ソファで寛ぐ蒼汰の髪を梳くように撫でる。先にシャワーを浴びようかと考えていたところで、蒼汰が徐に口を開いた。
「俺、今度はちゃんと、守れたと思うんだ」
「え?」
「父さんと母さん」
「えっ、それって⋯」
驚いて目を瞠る。蒼汰は正面をむいたまま口許に笑みを浮かべた。
「色々根回しして、前は付けてなかった防犯カメラ家に付けてもらったり、後、犯人の顔も名前もわかってたから⋯」
あの犯人は、蒼汰の家を襲う前に別の事件を起こしていた。そっちで捕まれば蒼汰の家族は襲われずに済むはずだ。
そう考えて、最初の事件が起こった時に、犯人の情報を警察に伝えたらしい。
「それで、捕まった⋯のか?」
「うん。だから少なくとも、卒業式の日に、あの事件は起きない」
「!」
変わった? 過去が?
だからといって、今自分たちが生きている世界に、突然蒼汰の両親が生き返るわけではないようだが。
「卒業式の日にっていうのを回避出来ただけで、その後どうなるかはわかんないけど」
「大丈夫だ」
柊二は力強く頷いた。
根拠なんてなかった。けれど、なんとなくもう大丈夫なのだと、そんな気がした。
蒼汰にも伝わったのか、彼は照れたように笑った。
「よく頑張ったな」
「ん」
ぽんぽんと頭を撫でる。子ども扱いするなと怒るかと思ったが、素直に頷いて抱きついてくる。
そのまま、ベッドに誘ってキスをした。
舌を吸い上げ唇を食むと、掴んだシャツをぎゅっと握ってくる。
「柊二さん、元々エッチ上手いんだと思ってた」
「っ、なんだよ急に」
「違ったんだね。卑怯だ」
「別に卑怯じゃないだろ」
柊二には、蒼汰と付き合うにあたって、1年分のアドバンテージがあった。初めて抱いた時にそのアドバンテージを惜しみなく利用し、感じさせてやったがために、上手いという評価になっていたのだろう。
「他の奴としてたよりマシだろ」
「それは、まあ⋯」
赤い顔で睨んでくる蒼汰の頰を軽く抓むと、そうなんだけど、と言葉を濁す。
くすりと笑って耳に唇が触れそうな距離で囁いた。
「拗ねるなって。せっかく久しぶりなのに」
「っ、別に、拗ねてないし」
そのまま耳朶から首筋に唇を滑らせると、蒼汰は熱く湿った溜息を溢した。
「あと、俺はあんまり久しぶりじゃないけど」
「⋯お前な。怒らせたいのか?」
過去の自分に嫉妬する。
嫌そうに眉を顰めると、蒼汰はくすくすと笑った。
それを塞ぐように、噛みつくみたいなキスをすると、背中に腕が回ってくる。
悪戯っぽく笑う声が、甘くかすれた喘ぎに変わるのには、それほど時間はかからなかった。
END.




