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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第三章:師匠と先生と大樹の秘密【帝歴716年】
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幽霊と風雷と魔の山脈

師匠と合流した私はこれまでのことを話した。

師匠を追いかけて森を出たこと。

サリファと出会ったこと。

マンティコア・ブルと戦ったこと。

朝日の森でエルフのマーリンと出会ったこと。


「それは……この短い間に色々あったのね」


短い……そう、日数にしてみれば半月程での再会だ。

でも、この世界に来てから、師匠と出会ってからここまで長く離れることはなかった。


「師匠にも伝えたいことは一杯あるけれど、まずは大事なことだけ。マンティコア・ブルや雷狼が山を降りて来ているのは、これから向かう風雷山脈に異常があったからと推測します。だからこれから先、危険が待ち受けている可能性が」

「危険なんて、風雷山脈を越えると考えたときから想定済みよ。何より異常は私たちも感じ取っている」

「というと?」


そう質問すると師匠はアーネの方を見る。


「実はここに来るまでと街道で雷狼の群れに襲われてね。そいつらを蹴散らしてからここに来たんだ」


なるほど、師匠達が先に倒していたから私達は襲われなかったわけか。


「それは、よく二人で切り抜けられましたね」

「風雷山脈に行くってことで対雷装備を王都で調達したんだ。シュナスのローブや私のマントとかな。これは雷の攻撃を防ぐ効果があるからそれでなんとかなったよ」

「そんな装備が」


よく見れば師匠達のローブやマントの表面に何か処理が施されている。

黒の表面に裏地に黄色の布を充てた生地はどこか艶やかで、光沢があった。

魔法コーティングだろうか?

魔法を物に付与して一時的に魔道具にする魔法コーティング。

ある程度の効果を発揮するとコーティングが剥がれるので使い捨てに使われる。


「風雷山脈に行くならコーティングは必須だが……準備はしてないようだな」

「……はい」


盗賊連合の情報屋、そんなこと言ってなかったじゃないか……


「ま、仕方がないわよ。シャオ、貴方なら付与の魔法陣作れるでしょ? 作って彼女達の服に付与してあげて」

「え、まぁ、出来ますけど……」


付与の魔法陣はそれほど難しくない。

実際このエクリプス・ヘリオス等の魔陣書は制御用に付与の魔法陣でシステム化している。


「でも私、対雷の魔法なんて知りませんよ?」

「ここに現物があるでしょ? これは呪文コーティングだけど、貴方ならここから魔法を読み取って複製、魔法陣に出来るはずよ」


なんで私以上に私のこと知ってるんだろう。

でも、この感じ、久しぶりだ。


「分かりました。やってみますから。その前に他の要件も伝えておきますね」


カバンから一冊の本を取り出して師匠に差し出す。


「これは?」

「さっき話した精霊を研究しているエルフの魔女マーリンから預かった研究資料です。師匠が必要としていると思うので」

「それは、どうして? 私は精霊の研究はそこまでは」

「マーリンは転生者です。前世は精霊族のウンディーネだったそうです」

「?!」


さっき話したときには師匠にマーリンが転生していることは告げなかった。


「つまり、ここには転生者の主観が載っている、ということね?」

「マーリンは転生については研究していませんが、自身の体験したことの詳細は記録したそうです。多分、師匠が知りたいことが書いてあるかも……」


そこまで言って師匠から反応がないことに気づいた。

見れば既に渡した本を夢中で読んでいる。まぁ、こうなることは想像できたけれど。


「はぁ、まぁ出発までまだ少しあるし、気が済むまで読んでもらおうか。サリファの紹介がし切れなかったけど」


サリファと出会った流れと経緯は説明したけれど、肝心の彼女の紹介はまだしていない。


「あーシャオ。とりあえず私にだけでも紹介してくれないか? あと私のことも彼女に」


そういえばアーネにも紹介しないとだったね。先にしちゃおうか。


「じゃあアーネから。こっちはサリファ。聖王国からやってきた聖職者で……」

「はいはーい! あたしはミーリアン・アルヴ・サリファと言います! 目的があってシャオリーさん達の旅に同行して魔導王国へ行こうと思ってます!」

「お、元気がいいねー。私は冒険者のディ・アーネ。アーネって呼んでくれ。よろしくな。サリファ」

「はい! アーネさん!」


二人はガッシリと握手をして笑い合う。

なんというか、私が仲介する必要は無かったんじゃないかな……

前向きな性格の二人だからこそ、気が合うようだ。


放っておいても問題なさそうなので対雷魔法陣の構築をしよう。

エクリプス・ヘリオスを展開して、魔法構築の準備を始める。

アーネのマントから魔法の呪文をトレースしてそれを解析。解析内容から魔法文字に起こしてそれを表示。

うん、なるほどなるほど。文節は5つか。

『風よ 走る雷電を流せ 水の流れのように 我が身体を守る 鎧となれ』

雷の攻撃を弾くのではなく、受け流して放出する鎧。

地面ではなく空気中に放電するアースのようなものか。

これなら特に弄ることなく、素直に構築した方がいいかな。

魔法文字を魔法陣の形に直して出力する。


とりあえずこれで完成でいいかな? 名前は……対雷防御陣(サンダーシール)……確か漏れとか侵入を防ぐ言葉にシールって合った気がするし、ゴロがいいからね。


対雷防御陣(サンダーシール)を自分とルルのローブ、サリファのマントと、ドリーの服に付与させていく。

効果についてはルルが風属性のサンダーボールを撃ってくれたが、無事弾くことができた。

効果は上々。性能の検証まではしている時間は無かった。


「そろそろ出ないと、山越えに間に合わなくなる」


アーネの言葉に頷き、師匠をむりくり馬車に乗せる。

ちょうどキリが良かったのか、師匠は素直に研究を辞めてくれた。


「さて、行きましょうか。風雷山脈へ」


師匠達の馬車へ師匠とアーネ、そして私が乗り、ドリー、サリファ、ルルは私達が乗ってきた馬車へと分かれて乗る。


村の方から太鼓の音が聞こえてくる。

祭事が始まった見たいだ。

あの山の上で何が起きているのか。


例え何が居ようと、何があろうと私は、魔導王国へ行く。

何があっても、私が皆を護ってみせるから。

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