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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第三章:師匠と先生と大樹の秘密【帝歴716年】
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幽霊と実験と精霊魔法陣

朝日の森を抜ける頃には日が落ちて双月が昇り始めていた。

親父さんの話では半日早く付ける予定だったが、マーリンの所でゆっくりしたせいだろう。

予定より若干の遅れているようだ。次の目的地であるグルタ村までは目と鼻の先。

夜間移動になるが移動してしまった方がいいか。


「あんたら、今日はここに泊っていくといい。夜は魔獣が出るからな。近いとはいえ出歩くのは危険だ」


そう言ってくれたのは、森を抜けた場所に小屋、というより牧場の厩舎と併設した家に住むボトラさん。

親父さんから言われていた火喰い鳥の飼い主で、先程親父さんの所宛に鳥を飛ばした所だ。

お言葉に甘えさせてもらい、今日はこの場所に泊まることにした。


グルタ村から半日程で目的のカナーン村に着く。

カナーン村の祭事は明日の夜。明日の朝に出発して、グルタ村を素通りすれば夕方の前にはカナーン村近辺に着けるだろう。

村に着いたところで祭事中は外部の人を入れることはないらしいし、むしろそのまま山越え出来るから丁度いいかもしれない。


ルル達は先に寝てしまったようだ。

昼はだいぶはしゃいでいたし、疲れも出ていたんだろう。

朝も早かったし。


私はといえば元々睡眠は不要で人間的生活リズム崩さないように寝ていただけだから眠くはない。

寝ても良いんだけどその前にやりたいことがある。

マーリンから教わった精霊使役術を魔法陣に組み込みたい。


サリファの魔法を研究した時にだいぶ理解できたが、精霊を魔法に組み込むのは難易度が高い。

精霊を召喚する。精霊を使役する。これらはサリファの魔法やドリーの精霊格闘術のように特化すれば出来なくはない。

だが、魔法陣を構築し、その中に精霊を内包させ、発動。その後精霊に魔法の発動と操作を一任する必要があり、精霊との信頼関係が必要だ。


今の私の回りにいる精霊はエクリプス・ヘリオスに内包している精霊が15人。

彼、彼女達は専属で契約しているから動かせない。

後は火、水、風、地の精霊が2人ずつ。

魔法陣一つにつき、最初は二人で担当させて、慣れてきたら一人で回してもらおうかな。


試しに簡単な魔法を構築してみる。

一先ず火力調整の魔法を作ろうか。

エクリプス・ヘリオスを開いて起動キーを唱える。


「オープン。クリエイトマジック」


周囲に透明な球体上の膜が出来る。

これは所謂パソコンのディスプレイのようなもので、ここに魔法陣を表示して直接弄ることができる。

エクリプス・ヘリオスの中から必要な基礎魔法陣を展開し、作業を開始する。


入力方式は吸収式、周囲のマナを集めて自分の魔法に使う。

この方式はあまり大きな力が得られない代わりに自分のマナを使わなくていいから便利な方式だ。

こうやって生活に使う分なら賄えるのもいい。

エレメントは火、初期火力は……吸収したマナの半分くらいの火力で出力は放出型。


ここまでならただのランプに火を灯す魔法と同じ。

ここに一工夫。


マーリンから貰った本に載っていた呪文を魔法陣に起こしていく。

指先にマナを宿して膜の上に描く。魔法文字で書いてくれたから起こすのも楽でいいな。

この膜のお陰で空中に書くのもだいぶ楽になっている。

それにしてもこの、精霊魔法陣、って呼べばいいのかな?

この魔法陣はちょっと変わっている。

魔法陣に描く文字は大抵文章を弧を描くように書くため、模様というよりは文章なんだけど、精霊魔法陣は意味のある文字で口のように囲んだり、コのように囲みだけ作ったりしてまるで家を作るように配置する。

だから普通に読もうとすると全く読めない。意味が通じないからだ。


「これはつまり、精霊の家ってことなのかな。マーリンの本に魔法陣を描く際の注意点って書いてあるけど」


精霊が魔法陣に住むってのもおかしな話だが、常駐してもらう派遣と考えれば、雇用側が寮を用意するのはまぁ考えられる範囲ではある。


「よし。これをこの魔法陣に組み込んで……とその前に"セーブ"、"精霊魔法陣(ピクシー・サークル)"」


せっかく描いた魔法陣だから保存しておこう。これで今後はは呼びだすだけで使える。


「さて、こっちも命名しようか。まぁ、適当に。"精霊の焚き火(スピリット・ファイア)"」


保存した魔法陣が魔陣書へと吸い込まれる。

これで新しい魔法の登録は完了。


「よし、"コール! 精霊の焚き火(スピリット・ファイア)!"」


眼の前のテーブルの上に魔法陣が出現し、その上に魔法の火が灯る。火力としては中火くらい。

よく見れば小さな火の精霊が2人、火の横で待機している。


「じゃあ、"火を弱く"」


ぴょんと火の精霊が起きあがって、火の中からマナを吸い取っていく。

なるほど、そうやって火力を調整するのか。見る見る火が弱く、弱火になっていく。というかもうとろ火だ。


「おっと、消えちゃう。"火を強く"」


もう一人の精霊が起きあがって今度は周囲から火の魔素を吸収し、マナに変えて魔法陣へ送りこんでいる。

なるほど、精霊は魔素からマナが作れるのか。

弱まっていた火はだんだん強くなっていき、中火は通り過ぎて強火の火力になっていた。


「あーちょっとちょっと! 火力強すぎ! 違う! "中火で!"」


いきなり声を張り上げたからか二人ともびっくりして隠れてしまった。

あーやっちゃった。


「あーごめんね。怒ってるわけじゃないから……これは難しいなぁ。精霊ともっと仲良くならないとちょうどよく動いてくれないかー」


とりあえず起動実験は問題ないかな。

改良の余地有だけど、幅は広がりそうだ。


外を見ればそろそろ銀の月がてっぺんを越えそうだ。

そろそろ寝ようかな。サイクルは大事。


起きたら師匠を追い掛けてカナーン村まで一気に行こう。

チリン。

鈴が鳴る。その先に、師匠が居る。






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