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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
三方向作戦! 三カ国を巡るリーヨンちゃんとピコちゃん編
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10月5日 ドワーフの国 人物評リオロック・エクスキューダー

 おそらく平成26年10月5日

 剣暦××年9月5日


 ドワーフの国バーンスタイン バーンスタインの大動脈 ザロック街道


 馬車は進む。この調子なら、明日あたり付くんじゃないだろうか。

 順調過ぎて暇なので、ユキくんに請われて、僕の旅先の話をする。

 ユキくんは、特に僕が旅先で出会った面白い人物の話を聞きたがった。

 今日はそういう人達の話を色々する。パンの作り方を知りたくて、ホビットの国に密入国した人間のコック。異世界人より託された真鍮製の楽器の演奏法を調べるため、世界を旅したホビット。力比べの大好きな絵に描いたようなドワーフの王様。剣の国で出会った男装の歌姫と女装の騎士。エルフには歌えない歌を巡る、五つの国の音楽家達。

 見知った人間でないとわからないくらい程度に眼を輝かせて、ユキくんは僕の話を聞いていた。

 その中で、一番興味をひかれたのは、地上最強を目指す格闘家の話のようだった。




 ※※


「でも、なんでエルフ聖歌はエルフに歌えなかったのです?」

「エルフの出せる声の音域より低い音符が出てきたからだよ。元々、エルフだけで歌えない構成だったんだ」

「なんでそんなものが、埃かぶってエルフの図書館に」

「結局は、作曲したエルフも悩んだんだよ。こんなものがエルフの国に存在してはならない、という気持ちと、生み出したこの音楽を捨ててしまいたくない、という気持ちに挟まれて。だから、処分できずに、あんな中途半端な隠し方をしたのだと思う」

「それを、カンテラさんが見つけてあげたのですね。そして、無事に形を成した」

「別に僕が功労者ってわけじゃないよ」

「ならば、やはりその音楽を奏でるために集まってくれたホビットとオークの合唱団の?」

「一番の功労者は、あんなに大勢の異人が集まってコンサートを開く場所を確保してくれた剣の国の聖堂管理人さんだよ。この世界では、交わる意志があっても、場所がない」

「なるほど、運用面で最大の問題があるのですね」

「過去にないことをするには、ノウハウがないと、よっぽど推進力のある人が真ん中にいないと事は進まないからね。そういう意味では、あの武術家は凄かった」

「武術家……? もしかして、リオロック・エクスキューダーのことなのです?」「よく知ってるね。もしかして彼有名人なの?」

「ファンなのです」

「ファン? この世界に格闘興業なんてあったっけ……? ああ、そうか。彼はここ百年では初の七国を巡った剣祖文明人だもんね」

「彼とも、面識が?」

「面識って程じゃないよ。さっきのエルフ聖歌合唱会が無事に終わって、草原の国に帰ってきたらすぐに、突然現れてね『俺と勝負をしろ』と来たもんだ」

「試合ったのです?」

「ないよ。僕は武術家じゃないもん。というか、そもそも世界を巡って種族問わず高名な兵法家に手合わせを求める流浪の修行者なんてもんが存在することだって、その時まで知らなかったもの。まあ、それで昼ごはん食べながら事情を聞いたんだけれど」

「試合を挑んできた人と、お昼ごはん、なのです?」

「うん、食べたよ」

「……。すごいようなのんきなような、なのです」

「戦う気なかったからね。で、そん時、世界中を旅して、名高い高名な武家とは戦いきったこととか、ほとんどが勝負を避けられたり、口ほどにもない連中だったとかで、名を挙げることよりも研鑽を続ける在野の連中に眼をつけて旅をしていたとか」

「それで、カンテラさんを?」

「なんか、僕が圧倒的な武力で他国間のトラブルを解決しているとか勘違いしていたらしくて。全力で断ったんだけれど、自分が相手にされてないと思ったのか、しつこく挑んできたよ」

「どうしたのです?」

「一週間くらいしつこくひっついてくるから、『そこまで言うのなら、君がラドゥバレトフ大陸で一番強いことを証明してみせてください。そうしてくれたら、僕も異界地球の代表として、戦ってあげます』とか挑発したんだ」

「どうなったんです?」

「僕がやっとまともに反応したせいか、本気にしてね、『その言葉忘れるなよ』とか言って、飛び出してった。その時は彼、どうやって証明する気なんだろう? と思ったけど、まあ、すぐに次のおつかいが始まってね、彼のこと忘れてた。そうしたら、次の月くらいかな、あの噂が広がってた」

「『放浪のリオロック主催 世界最強トーナメント』なのです」

「うん、びっくりした。世界一であることを証明するために、自分と同じように、腕前がどこまでのものか試したい、自分の力を世界に知らしめたい、と考える連中を集め、世界一を決める大会を開く。関心したよ。そんな発想できるような面白い人なら、もっと話をしておけばよかったなって」

「でも、その大会開かれなかったのです?」

「うん、開かれなかった。問題が多すぎたんだ。まず、世界中の異人種を集めることのできる場所があるのか、軍属は勝手に持ち場を離れたり闘ったりできないから強者でも出場が許されないが参加はさせないのか、武器を使う者と無手の者がいるが、一緒に戦わせるのか? ルールはどうするのか? 負傷者が出た場合の対応はどうするのか? そもそも運営にかかる費用は誰が持つのか?」

「じゃあ、諦めたのです?」

「いや、諦めなった。彼はなんと世界各国を回って、大会会場を探したり、各国王政府に企画の趣旨を説明して協賛をとりつけて、ルールの草案を軍学者に依頼して、獣頭人に大会を口コミで広めてもらうように頼んで、さらに大会運営のための人材を募った。あと、暴漢に襲われそうになった金持ちを助けたりしてスポンサーも手に入れた」

「一人で、なのです?」

「うん、一人で。野心ってすごいよね」

「でも、大会が開かれたって話は聞いてないのです」

「うん、それでも計画は難航して、まだ開催にはこぎつけていないらしい。けれど、彼はやってみせると言っていたよ。今年の1月かな、会った時に言っていたよ。『カンテラ、見ていろ。俺はきっとこの大会を成功にこぎつけてみせるぞ』だって。なんだか、自分が世界一だと証明することよりも、祭りを開催することの方がメインになっていたような気もするけれど……。でも」

「その方が、世界一のになろうとするよりも、もっとすごいことだと思うのです」

「お、ユキくんもわかってきたじゃない」

「僕も、見てみたいのです」

「だね、もし開催される時は、一緒に見に行ってみようか」



 馬車は、南進する。

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