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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
三方向作戦! 三カ国を巡るリーヨンちゃんとピコちゃん編
92/363

9月29日 ホビットの国 ジンさん来たる。これからの打ち合わせ

 おそらく平成26年9月29日

 剣暦××年8月29日


 ホビットの国ムーンスレイブ

 薄墨の村


 さて、国宝とされる超巨大な庭石を、粉々にしてしまった。

 さらに、剣暦の9月1日。つまり明後日までにオークの国に出向き、リーヨンちゃんが国民の前で威光を示さないと、世界廃滅主義者達が情報工作を行い始める。


 やっべ、どうしようもねーな。


 昨日の晩から、いよいよまいってしまって、ホビット村長の家で食べた芋鍋も3杯が限界だった。

 ため息をつく僕を尻目に5杯目をそっと出しのリーヨンちゃんは、とても心配してくれた。

 頑張って「我に秘策あり」というポーズをとってみたけれど、ごまかせただろうか。



 徹夜で、この状況をごまかす策を練ったが、どうしても無理だ。

 時間が足りない。


 そう思ってた矢先、奇跡が下りてきた。


 奇跡というものは、本当にあるもので、びっくりする出来事がいくつも重なって、光明が見えてきたのだ。まじびっくり。


 ジンさんが、薄墨の村に来た。

 なんと、僕達がホビットの国に行ったことをどうにかして突き止め、助けになるために追いかけて来てくれたのだ。いや、君僕の案内人じゃなくなったじゃん。契約者のフレイムロード候らを助けなくちゃいけないでしょ、と文句言ったら、その契約者からの依頼だそうだ。

 オークの国王都では、熱も大分冷めてきて、使節団を襲おうというような空気でもなくなった。もちろん、出歩きはできないが、とりあえずの身の危険はない、と5人の案内人は判断した。

 そして、迎賓館に閉じ込められて身動きが取れない自分達よりも、状況を打破できる可能性のある僕達のサポートに行くべきだと、フレイムロード候以下皆が満場一致でジンさんを送り出したとか。


 正直、ありがたい。


 事情を説明。

 オーク秘宝を粉々にしたことを報告し、「これがそれです」と欠片を見せる。犬頭人のせつなそうな眼を、久しぶりに見た。



 ※※



「……、で、どうすんだ」


 村長宅。

 とりあえず旅の疲れを取ってもらおうと、風呂を用意したが、ジンさんはそれでも湯につかるのを嫌がったので、鴉の行水よろしく、すぐに出てきた。

 体から湯気をあげながら、ジンさんは僕に問う。

「いつものことだが、対応策はあるのか? 昨日の晩に、どうやってごまかすかは考えたのだろう、試しに言ってみろ」

「……」

 僕の無反応をいぶかしむ。

「……どうした? 何も思いつかなかったか?」

「時間が足りないんだ。どうしても、明後日までに返らなければならない理由があるんだけれど、とても、間に合わない。それに、僕の考えがうまくいっても、本当にオーク達が納得してくれるか」

「……お前、何真面目なこと言ってるんだ?」

「いや、だって。これはちょっと、洒落になんないじゃない」

 すると、ジンさん、ハンッと鼻で笑う。

「今更何を言っている?お前、今まで洒落にならないことしかしてないだろうが。どうした? 年下を引率しての旅で、中途半端に現実的なことを言うようになったか?」

 すごい言われよう。

「いいから言ってみろよ。ちゃんと突っ込んでやるから」

 ああ、やっぱりジンさんがいると違う。


 そこで、説明した。

「まず、国宝のオーク石だけど、この欠片で代用しようと思う。今朝、朝日に照らしていて気付いたんだけれど、これ、光に照らすと、えらい綺麗な青色で光るんだ。リーヨンちゃんと話をしたんだけれど、純度の高いオーク石は、強い青い光を出すらしい。実際良い石だった。だから、砕けた中で一番綺麗な石を加工して、宝石の形状を整えて、国に持ち帰る」

「ほう、で? 欠けず割れずのオーク石をどうやって加工する?」

「欠けず割れずのオーク石を粉々にしたリーヨンちゃんの腕力ならいける。ただし、問題はある。このオーク石を宝石の形に加工する技術がない。だから、こういうここから一番近い町にいる加工技術を持った人に協力を頼む」

「ホビットには、無理だろう」

「ドワーフに頼む。ここから南にまっすぐ下り続ければ、『斧の町』に着く。武器製造をやめて、金属細工を生業としている彼らなら」

「お前、宝石加工と金属加工は全然違うのわかってるよな」

「大丈夫、斧の町でぶらぶらしていた時に、宝石屋も3件くらいあったし、そのうちの1件は竜山脈戦争に参加した、退役軍人が開いた店だった。僕のこと知ってるから、多分、僕の依頼なら受けてくれる」

「ふむ……。で、距離はどうする? お前、明後日が期限だって言ったよな、何があるんだ?」

「世界廃滅主義者が、その日に工作を行って、暴動を起こす計画を建てている」

「なんでそんなこと知ってるんだ……、いや、言わなくていい。言えないんだろ」

「めんご」

「しかし、それではドワーフの国まで行って返ってくる時間はないぞ?」

「うん、だから別行動をしようかと思う。ドワーフに加工を頼む班、オークの国で暴動を阻止する班。そして、今すぐホビットの国の王都に行って、ホビット忍者の協力を陛下に仰ぐ班」

「手が足りないな」

「うん、だから困ってる」

 説明を聞いて、腕組みしながら天井を眺めていたジンさんは、最後に訊いた。

「しかし、そもそもだ。勝手に国宝を加工して、責められないか? おそらく、世界一巨大な宝石を創る可能性のある原石、というのが秘宝の趣旨だろ?」

「大丈夫。オークの国の王様やキログラムさんと話をして気付いたんだけれど、多分、あの人達エターナルウォーターが何なのか、知らないみたいだった」

「……国家元首だぞ?」

「いやね、詩鬼儀式の時もだけれど、王様と大司祭様と、第一王子しかしらない国事ってあの国多いみたいじゃない? 先代王は亡くなってるし、今の大司祭様は、国宝が盗まれた後に就任しているから、見たことないと思うのね。つまり、国宝がどういうものか知っているの、今のアイスバイン陛下一人なんじゃないかな……?」

「……、まあ、そう言われると、あり得る話しだわな」

「それに、オーク『経典』に、王様は隠しごとをしてはならない、なんて文はなかったはず。綺麗に加工された青い宝石を見せても、それが元の形と違うことを黙っていても『経典』には触れないはず!」

「それは微妙なところだな、俺も経典の全てを知っているわけでないから……」

「いいじゃん、先代が平民孕ませても、黙って亡命させるのに比べたら、盗まれた国宝がサイズダウンして返ってきたの方がまだ良心的だよ」

「お前、たまにひどいこと言うよな」


 そこまでで、今現在の構想は終わる。


 ただ、問題は。


「手が、足りない。俺と、カンテラ、それにリーヨン。それと、何故かここにいるお前の家のダークエルフ。……それと、契約者をほったらかしにして王都に向かったジョリャ・ユユキ・メルクリ」

「いや、ユキくんは仕方ないよ。竜がホビットの国に来るなんて、何十年に一度の話しでしょ」

「それでもな、ほったらかしは駄目だろ。俺達獣頭人にも仁義ってものが……」

「しかし、ここにユキくんがいたとしても、通訳が増えるだけで、決定的に足りない」

「最低限、明後日までに、オークの国に辿りつく手段が必要ということか」

「でも、ホビットの国に公共馬車はないし、ここからヨロイダチョウを取りに行く時間もない。魔女は人の輸送は行わないし」

「俺達はよくても、お前の体力じゃ走っても間に合わんか」

「うん……、あーあ、ホビットの国に来た竜ってのが、グーさんだったら、乗せて飛んでもらうのになあ」

「それは、いくらなんでも……」



 後から思えば、この台詞がフラグだった。



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