表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
三方向作戦! 三カ国を巡るリーヨンちゃんとピコちゃん編
90/363

9月26日 ホビットの国 薄墨の村に着く

 おそらく平成26年9月26日

 剣暦××年8月26日


 ホビットの国ムーンスレイブ

 迷いの森



 おい、誰が半日で迎えに来るって?


 今日も森の中で捜索隊が来てくれるのを、待つ。

 昨日の内に誰か迎えに来てくれるかと思い、じっとしていたが、気配さえしない。


 たまに、鳥とかの鳴き声がするとびくっとなる。


 食事ができないのも辛いが、何より水分が取れないのがこんなに辛いとは思わなかった。

 なんか熱っぽい気がする。

 脱水症状?

 木の葉の裏についた朝露を舐めて喉の渇きを潤す。

 

 暇だし日記でも読み返そうかと思ったけれど、集中力がないせいか、漫然と文字を追って、諦めて閉じて。

 それを何回も繰り返す。


 大分、頭が回っていない。何かしていないと暇で死にそうだが、何もすることがない。

 こういう時は寝るに限る。






 駄目だ、寝れない。

 なんでもいいから、考えないと……。


 そう言えば、日記を読み返して思ったのだが、僕はラドゥバレトフについてから一年経ってからの日記しかつけていない。

 やはり、来て、僕がどんな旅をして今に至るのかも記録した方がいいだろう。

 一応、この日記は、もし僕がいなくなった後この世界に来た誰かのために残そうと思って書き始めたのだし。


 僕が、どんな人達と出会って、どんな文化を見てきたのか。

 この世界の成り立ちや世界の裏にあるもの。情勢。そういうのも大事だと思うけれど、どうか、このラドゥバレトフという異世界と、そこに住む化物達が、どれほど美しいのかを、誰かに知ってもらいたいという気持ちが、強い。



 幻聴だろうか。


 さっきから、かすかに人の声がする。

 

 もし、あれが僕を探す誰かの声ならば、助かったのかなあ。



 なんか、眠くなってきた。

 

 あれだ、脳のスイッチが、やっと切れた。


 とりあえず、ぐっすり寝よう。



 

 ※※


  

 目が覚めたら、小屋の中で、ベッドから手足をはみ出して寝ていた。 

 小人のスーパーSサイズのベッドでは、僕を乗せるのには役者不足。

 枕元には、リーヨンちゃん。

 彼女は僕が目を覚ますと、台所らしき場所で何かしているピコちゃんに声をかけた。

 どこよここ。


 訊くと、どうやらここが『薄墨の村』の村長宅らしい。

 リーヨンちゃんとピコちゃんが、森の中で捜索中に、倒れていた僕を発見し、運んでくれたらしい。

 この女の子達、タフだな。

 今回、女の子に世話になってばっかり。ちょっと複雑。


 しかし、周りを見渡すと、ユキくんも、ハパナ陛下もジュリーさんもいない。

 いるのは、リーヨンちゃんとピコちゃんと、黒装束の小人達ばっかり。

 すごい、ホビット忍者ってこんなにいたのか。

 そして、家の中まであんな忍者みたいな格好しているのか。


 黒装束に身を包んだ、白髪のホビットが一人歩み出て、懐から手紙を出す。

「ミッショデゴザル」

 君らミッショデゴザル言いたいだけだろ、と思ったが口からは「ありがとう」と発音して手紙を受け取った。

 ちなみに、この人が村長だった。


 手紙はユキくんからのもの。

 中身は、現在の状況について。

 まず、僕以外のメンバーは、全員独力で迷いの森を抜けたところで、合流できた。しかし、いつまで経っても僕が現れないから、『もしかして先に薄墨の村』に着いているんじゃないか? と僕を置いて先を進んだとのこと。

 でいざ村に着くと、そんな奴はきていないということで、リーヨンちゃんとピコちゃんが僕を探しに、迷いの森に返ってきたという。

 また、ハパナ陛下は部下のホビット忍者に王都に連れて帰られた。

 御忍びで遠方まで勝手に旅してダークホビットに襲われるところで、いよいよ「いい加減にしてください」と怒られた模様。

 ジュリーさんも務めを終えたことで、帰路に着く。

 で、ユキくんはどこにいるかと言うと、なんとハパナ陛下について、ホビットの国王都に向かったのだと言う。

 

 ホビットの国王都に、竜が出たのだとか。

 老竜メルディナンでも、もちろん死竜セイクーハードでもない。

 なら、考えられるのは吉兆竜ファインドランダムか凶兆竜ハイドランダムのどちらかだ。でも、ホビットは竜なんか見たことないし、竜言語もわからない。

 そして、今この国の領内で、竜言語を喋ることが可能で、竜の区別をつけられる人材は、ジョリャ・ユユキ・メルクリしかいないかった。

 

 そういうわけで、僕は無理やり連れて行かれるのです。ごめんなさいなのです。


 とか締めてあった。



 ……。まあ、緊急事態だもんな。

 多分、ジンさんでも、同じ行動を取ったよね。


 現れる時、幸福を祝福する吉兆竜。現れる時、国難が訪れることを警告する凶兆竜。

 その託宣を、ユキくんは聞き、ホビット王に伝えなければならない。


 言葉のわからない者同士をつなぎ、託宣という形で、世界に調停を与える。

 本来の、獣頭人の役目である。



 こんちくしょーーーーーーーーー。

 僕もその光景見てえーーーーーー。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ