9月12日 オークの国 小説家キログラム氏の家で焼肉をごちそうになる
おそらく平成26年9月12日
剣暦××年8月12日
オークの国オーバーラブ
王都グレーテルオーバーラブ
キログラムさん家
今日は珍しく、昼間に日記を書いている。
まず、オークの小説家、キログラムさんはこの国では知識人としてよりも、趣味人として名が通っている。
古来の美術品から最新の実用品だけでなく、ほとんど手に入ることのない異国製の品も隠し持っている。
そんなキログラムさんのコレクションで彼が最も価値があると思っているのが、今日の昼に取りだしてきた『鉄板』であった。
この鉄板、ドワーフ製で、畳一枚分くらいの広さがある。
変哲のない板なのだが、どうやって作ったのかを考えると、なかなかに凄みのある品。
工業機械なんて存在しない世界。凸凹も歪みもないなめらかな金属板を手作業で作る技術なんて、そう簡単にあるもんでもない。ホームセンターで買ってくるようにはいかないのだ。
キログラム氏は言った。この鉄は、ラドゥバレトフ大陸で最も綺麗な面を持つ形状なのだと。
それを聞いて僕は思ったものだ。
おいしい鉄板焼きが作れそうだな。
今日の昼ごはんは、キログラム氏の家で、彼の家族と焼肉をすることにした。
僕とユキくんがお家を訪問すると、上記の鉄板を石竈の上に置いて、下で火を燃やす。
おいおい、貴重品でそんなことしていいのかよと思ったが、オーク一の収集家は、オーク一の奇矯者でもあったらしい。使えるものは使っていく派。
肉とか野菜を焼いて、オーク秘伝のたれにつけて食べる。
なんか、オークの食事って日本人向けの味付けなのよね。
本能として武器を握ることのできない獣頭人は、価値観の延長線上で、ナイフやフォークも使うことがどうしてもでいない。だから、手掴みか、皿を舐めるのだが、そうすると、ユキくんもバーベキューは相性最悪だった。
串も駄目なのか確認したが、どうしても使えないらしい。
竹串もだめなのかと握らせたら拒否反応を示した。
そこで、野菜に挟んで持たせたら食べれた。
何が駄目なのだろうか。遺伝子に刻まれているのか。
正午の鐘の音を聞いて、ああ今からリーヨンちゃんが儀式始めるんだな、と心の中で大聖堂の内部を夢想する。
見てみたかったなあ。
儀式が終わった後、見学が可能ならば、見てみたい。
さあ、肉が焼けた。
昼御飯だ。
ちなみに、今日の肉は羊の肉とか。
え、ジンギスカン?
平らな鉄板だと、まずくない?