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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
死霊祭が終わった!草原の国自宅での日々編
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9月4日 草原の国 アルミナ公より 邸宅に招待されることになる

 おそらく平成26年9月4日

 剣暦××年8月4日



 メイドとして雇った、10人のダークエルフは、よく働いてくれるのだが、いかんせん努力と成果が結びついていない。

 塩と砂糖を間違えるを筆頭に、白い服と色つきの服を一緒に洗ったり、卓上用布巾で便所掃除したり、お客さんが来ても、まずはエルフ刀をチラつかせて身体検査をした後でないと応接間に通さなかったり。


 メイド長のイオちゃんから、本格的にメイド以外の使い方を考えるべきだと進言されてしまう。

 

 まだ、一週間も経っていないのだし、なんとか頑張って物になるようにしたげて、とお願いするが、イオちゃんの悩みは深刻らしい。


 イオちゃん曰く「旦那さん あの子ら メイド向かん あの子ら 壊すの 得意 創る 直す 下手」


 その後に続いて「それでも あの子ら 助けたいなら 私 頑張って教える 旦那さん しばらく 生焼き魚 生乾きの服 水浸しの床 ええの?」


 ちょっと、躊躇ったけど「ええ!」と強く頷くと、イオちゃんはため息をついて、そして、少し微笑んで「なら 頑張る」と言って、メイド達をこき使いに厨房へと戻っていった。


 ……生焼き魚か……。





 草原の国の法律に関する事柄を取り仕切る、具体的には法務局の最高責任者。

 法務卿アーマライト・アルミナ公爵。

 アルミナ公は、5年ほど前に、一人娘を失っている。

 奥さんは、娘さんを生んだ時に、産後が悪く先立っている。

 父娘二人で過ごしてきた公にとって、その死別はこの世に残る未練の全てとの別れだったのだろう。

 とても、大事に想っていたのだろう。当時の公の姿は、それは見るに耐えない落ち込みようであったという。


 そんな公が、立ち直り、法務卿としてこの国の司法を守ることに命を捧げているというのは、割と知られているエピソードだった。


 そんな公の娘と、彼の顔面にグーパンを入れたうちのメイドのピコちゃんが瓜二つ。


 なんか、単純なようなややこしいような。



 そのエピソードを知ると、ピコちゃんの証言通り、公が痴漢を働こうとしたとは思えない。 

 

 かと言って、ピコちゃんは実際に恐怖を感じて、拳を振ってしまった。

 ダークエルフが自分から暴力を振るうなんて、よっぽどのことだったのだろう。


 何が、本当なのか?


 結局は、アルミナ公に会ってみなければいけないのかもしれない。




 午前中に、デミトリにお願いして、謝罪の手紙と酒蔵からレミィちゃんがお土産にくれた酒瓶(調べたら、そこらの貴族でも滅多に飲めない希少で値の張る酒なのだった)を一つ選んでもたせて、お詫びに行ってもらう。


 お昼ごはんを食べてお昼寝していると、アルミナ公からの返書を持って帰ってきた。


 えらい早いね。


 デミトリに代読してもらうと、「迎えを寄越すから、明日ピコちゃんを連れてウチに来い」という内容らしい。


 ……フレイムロード家にしろ、病気のお婆さんところにしろ、この国の貴族は、えらいレスポンス早いな。


 デミトリに、「これはやはり、ピコちゃんに会いたいということなのかな」と相談する。果たして、どちらなのか。

 自分の面子に傷をつけた小娘を呼びだして血祭りにあげたいのか。

 自分の愛娘に風貌の似る少女を招待して、感傷に浸りたいのか。

 それとも、僕が気付いていない思惑が別にあるのか……。


 ピコちゃんに事情を説明して、明日、一緒にアルミナ公の邸宅に行って欲しいことを伝えると、嫌そうだったけれど、渋々頷いてくれた。


 その後、デミトリを介して質問された。

『明日、あのおじさんの家に行った時、私、我慢して尻を触らせた方がいいですか?』 

 真面目な顔でなんてことを訊くんだ。

 そんなことはしなくていいと、念を押したが、不安だ。


 何というか、このダークエルフという連中は、自分自身が物として扱われても、それを自然なこととして考えてる気がする。


 それが、少し不安だ。

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