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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
草原の国へ帰ろう!ドワーフの国旅行編
26/363

8月2日 ドワーフの国 当面の計画と案内人による旅程計画の説明

 おそらく平成26年8月2日

 剣暦××年7月2日


 ドワーフの国バーンスタイン

 斧の町 山レタスを山盛りにする食堂にて



 朝食後、地図をぼんやりと眺めていると、おかしなことに気づき、ジンさんに確認する。

 説明を求めると、どうやら遠回りをしていること判明。

 納得はできないが、ジンさんがそういうなら、そうなのだろう。

 地理のわからぬ旅は、案内人に任せるに限る。




 ※※


 朝食は、カボチャをとろとろに似たスープ。妙に分厚いドワーフのスプーンを突き刺すと、スピーンが立つくらい粘り気の強い、僕好みの甘口の味。これはいいやと思って、三杯食べてしまった。

 皿が下げられた後のテーブルに広げた地図をぼんやりと見て、「どういうことなんだろう」と呟くのと、買い出しを終えたジンさんが返ってくるのは同時だった。


「どうしたカンテラ。お前が地図を見るなんて珍しいな」

「僕も地図くらい見れるよ。ほらオークの国でジンさんとはぐれた時だって、もらった地図を頼りに首都まで行けたんだから」

「たった5キロしか離れてなかっただろ。……で、どうした?」

 テーブルの向いに座り、氷水を注文すると、ジンさんも僕の同じ地図を眺める。


「あのさ、ジンさん。僕たち、本当に草原の国に向かってるの?」

「そうだよ?」

「でもさ、ジンさん。地図をみた限りだと、貿易山脈から草原の国王都は南西にまっすぐでしょ? でも、斧の町は出発地から、真西の方角だけれど」


 すると、ジンさんはちょっと微妙な顔をした。出来の悪い生徒が、頑張って知恵を働かせて、見当違いな疑問を見つけてきたら、先生はきっとああいう顔をするだろうな。


「結論から言うと、わざと遠回りしてるんだ。貿易山脈から、まっすぐ直線に王都を結ぶと、地図上に何がある?」


 地図上では、黒い三角形があって、ドワーフ語で何か書かれている。


「読めないよ、なんか、雰囲気的には山があるのかな?」

「『レスナー山脈未踏破地域』と書かれている」


 あ、字面から言いたいことがわかりました。僕が通過できないようなひどい急傾斜の山とか悪路があるのね。


「地図上でまっすぐでも、人が通過可能な道はまた別というわけか」

「さらに言うと、ドワーフと人間では通過可能な場所も違うしな。我々でも通り抜けられて、一週間以内にたどり着くルートを考えると、ここになったわけだ」


 唸ってしまう。


「そいういうこと考えながらガイドしなくちゃいけないって、やっぱり案内人ってすごい仕事だよ」

「ほめても何もでないぞ」



 でも、もう一つ疑問。



「でもさ、ジンさん。ここからあと二日か三日で、草原の国の王都まで辿りつけによ?」


 すると、ジンさんは何かに気づいた。


「そういえば、お前にはまだ言ってなかったな。俺達、王都に行かないぞ?」


 パードゥン?


「お前、3日前に手紙出しただろ?」

 姫様宛にね。

「検閲とか、考えてなかっただろう」

 ……あっ。

「国主からの親書ならともかく、生死不明のはずのお前が出した普通魔女郵便なんて、まず情報局の検閲が入ってから渡されるか、下手したらもみ消されるに決まってる」

 あっちゃー。

「多分、今頃国境線に兵隊が捜査線敷いてるぞ」

 うっわー。

「だから、お前が手紙に書いたであろうルートとは別の国境線で、こちらの手の者と落ち合うように取り計らった」

 ……えっ?

「今回の目的は、そのホビット酵母とやらを、イリス王女殿下の派閥の研究機関に渡すことだ。だから、俺達が直接王都に行くことは、必要条件ではない」

 ……。

「今から町を出て、ひたすら西に進む。すると、ぎりぎり草原の国とドワーフの国と、剣の国の国境線が重なる緩衝地帯に出る。そこで、別の案内人に受け渡し、早馬で王都に駆けてもらう。お前には、そこで陽動のために目立ってもらう」

 ……。

「うまくいけば、目的は達成されるし、王女殿下も、お前の生存を知って、お気を取り直される」

 ……。

「お前に言いそびれていたのはすまない。俺としては、お前が生死不明の状況を利用して潜入するつもりだったのだが、まさか手紙を書くとは思わなくてな、慌てて準備をしたから、報告するのを忘れていた」


 ……。


「すまん」


「ジンさん」


「ああ」


「ジンさんって、天才か何かじゃなかろうか」


「……怒ってはいないようだな」


「むしろ完璧過ぎて怒り絶頂ですわ。なんということでしょうテンションあがる」


「お前、そんなキャラだったか」


「まさか、僕がのほほんとしている時にそこまで工面してくれてるとはなあ」


「俺は、お前の案内人だからな」


 けど


「けど、だったら」


「ん?」


「僕が手紙を出そうとするの、止めたら良かったのに」


「何でだ」


「だって、僕が手紙出して生きてることをばらすよりも、そっちのが秘密裏にこと運べたんでしょ?」


「何でだ?」


「いや、だって」


「そんなことは、悲しむ女に手紙を出そうとしている男を、止める理由にはならないだろう」


「ジンさん、そんなキャラだったっけ?」


 お前のが移ったのだろう、とか言って、注文していた氷水を、飲み干した。

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