探る者と隠す者
クラリスが俺に話しかけているのを見た男子生徒が嫉妬の視線を向ける。
「クラリス先輩と付き合ってるのか!?!?!?」
一人の男子生徒が顔を歪ませ地面に崩れ落ちる。
「おめぇ、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!!」
ボコ!!
もう一人の男子生徒が、崩れた男子を無理やり立たせ頬を殴る。
「何すんだよ!!」
それに気づいた他の生徒がそちらを見るとセレスティアとレオンが気づき仲裁をしようとすると。
「何をしているのですか!?」
「君たち!どうしたんだい!?」
それを無視し、先程の生徒を殴った小太りの貴族の生徒が言う。
「クラリス先輩が……あの聡明で策略家のクラリス先輩がそんな事をするわけねぇだろ!!」
小太りの男は続ける!!!
「おめぇ、クラリス先輩の何を見てきたんだよ!!」
殴られた頬を抑えながらハッとした表情を見せる殴られた生徒。
「そうだ!!俺が間違ってたよ!」
「へ!間違いを改められたなら良いんだ!!」
男同士の熱い握手を交わす二人……そして蚊帳の外に居る周り。
「何だったんですか?」
「仲直りできたなら良かったよ!!」
未だ疑問符を浮かべるセレスティアとは対照的にレオンは仲直りできた様子の二人に安堵する。
男同士の友情を確かめあった二人が、俺を見つめ続けるクリスタに近づき言う。
「「あ、あ、あ、あのぉ!」」
クリスタは返事すらしないが無視し言い切る二人。
「クリスタ先輩はぁぁあ!アレンと、と、とお付き合いぃしてるんですか?」
全く持って揺れずに、瞬きもせずに俺を値踏みするようなオレンジ色の瞳は俺を見つめ続けているが……爆弾発言をする。
「お付き合いはしていません……今はですけど。」
そう言い、俺の胸に指を這わせるクリスタを俺は無理やり引き剥がす。
「あら?」
「これからも……と訂正させていただこう。」
「ほんの軽いジョークのつもりでしたけど……本気にしてしまいましたか?」
悪びれもせずに可愛く小首をかしげてみせる……狙ってやっているとは思えないほどに流暢に。
「アレに男子たちは騙されているのですわ。」
「あの女は何処までも計算づくですのよ。」
一部の女子が陰口を言うがそれに気づくものはあまり居ないというよりか、気にしていない。
クリスタ……ジークも警戒していた【ハイライン家】の女。
成績優秀文武両道……では無く【武】は苦手なのが彼女の特徴だろう。
成績は優秀だが身体能力は普通よりも低いだろう……だがこの女の強みは【情報力】と【経済力】王国の流通を牛耳っているのが【ハイライン家】
何よりも原作でも彼女は敵にも味方にもならないが、一個だけ特殊な事例があった……
【ハインライン家】にメリットがある場合のみ動く。
基本的には何処の派閥にも属さない、関与しない姿勢を貫いている【ハインライン家】が【落ちこぼれ】に話しかける。
(何が狙いなんだ?)
俺の固有魔法を知っている線は……無いと思う。
大体わかっているなら、それを脅しのネタに使うだろう。
尻もちをつき、俺の方に手を差し出すクラリス。
「レディに手を貸してくださらないのですか?」
「打算的なレディのお相手をするのは嫌なんだが?」
手を掴み立たせると、スカートを払い俺に囁く。
「貴方、転移魔法?何かしらの物質?物体?を移動させることが出来ますわね?」
「だとしたら何だ?」
なんとなく、読めてきたぞ……
「その力は物流に大きな革命を起こせます!!」
そう言いながら手を伸ばす、クラリス。
「私の手を取ってください。仕事ができるうちは絶対に安泰です。」
(この手を取れば、一時の安泰は手に入るだろうが……リスクのほうが多すぎる。)
「仕事ができなくなったらどうなるんだろうな?」
クラリスの瞳はずっと変わらない、顔だけで微笑んでいるが視線は何も変わらず俺を見続けている。
俺の疑問を聞き、至極当然というような表情で真顔に戻る。
「使えなくなってしまったら、捨てれば良いのです。」
流石は【ハインライン家】いらないものはすぐ捨てる。
「恨みを買いやすい方針なのですね。」
クラリスの表情が恍惚としたものになり言う。
「そんな、怖いもの知らずが居るなら是非ともお会いしたいですわ。」
(これは……M?S?)
俺はこういうのは詳しくないからな、特段気になりもしないが触れたくもないな。
「私の能力はそんな便利なものではないですよ。」
(もしかしたら、裏の顔が割れるのも時間の問題なのか?)
「そうですか……いつか、貴方とは手を組む気がしますわ。」
そう言って教室を出ていく、クラリス先輩。
「オーラが違うな!!!」
「セレスティア様の方がオーラがございますが!」
セレスティアが人混みを避け、俺の方に話しかけに来る。
「ハインライン家と政略結婚でもするのですか?」
何故だが侮蔑の表情を向けられている気がするのは、俺が座っていてセレスティアが立っているからだろう。
「セレスティア様には関係ございませんよ。」
セレスティアがムッとした表情になり周りに聞こえないように言う。
「婚約の約束をした相手に言うことですか?」
「幼き頃の遊びです。私は貴方に釣り合うような人間ではございません。」
俺はこの世界の悪役、評価もしっかりとそれにふさわしいものだ。
(この世界で信じられるのは……クリスタぐらいだな。いつか背中を刺されるかもしれない可能性もあるが。)
この世界は俺のことが嫌いだろう……いきなり目の前に人間が敵意をむき出しになるかもしれない。
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セレスティア視点
(最近の貴方の身の振る舞いは知っているつもり。)
幼き頃の私は本当に彼が好きでした……ただ彼の傲慢な態度や周りからの評価に埋もれいつしか忘れていました。
彼の行動は変わったと聞いています……領民への立ち振舞や夜遊びを辞めた話……
(本当の貴方はどっちなの?)
(今も……もう一度だけ貴方に希望を抱いてしまっているわ。)
昔の貴方が本当なのか……今の貴方のように誠実だった貴方が本当なの?
(貴方の本当の姿を探るわ!!!!)
(本当の俺は隠さなくては……)




