第五十七話 久しぶりな感じ
「うぅ……」
『リア、お疲れ様ね……今日はもう帰りましょ』
ミリシアが、優しくいってくれる。
とても、魅力的な提案だ……でも。
『これは、師匠のところまで運んだほうがいいよね……?』
『……そうね、他の魔物も来てしまうかもしれないわ』
『そうだよね……』
わたしは頷いて、魚の下に創造魔法でソリを作り出す。
魚の血がソリに溜まっていって、余計に気持ち悪く感じる。
わたしはそんなソリを見ないようにしながら、紐を引っ張ってソリを引いていった。
『……わたしが引けなくて、ごめんなさいね』
『ううん、気にしないで。わたしがやらないといけないことなんだろうし……』
これを何回か繰り返せば、慣れてくるはずだ。
わたしは心を落ち着かせるために深呼吸をした。
でも、ソリから血の匂いが漂ってきていて、むしろ気持ち悪くなってしまう。
小さく首を振ってから、師匠のいる場所に進むことに集中する。
なぜか、行きよりも長く時間がかかった気がした。
「あら、おかえりなさい……って持って帰ってくれたのね」
「うん……」
「無理しなくてもよかったのに……預かるわね」
師匠はそう言って、ソリにつながっている紐を受け取る。
……全然、気持ち悪そうにしてない。
慣れているのかな……すごい。
いつも通りの様子で魚を見ている師匠は、なんだかかっこいい。
尊敬の目で見つめていると、急に後ろから声が聞こえてきた。
『ん? ミリシアじゃないか』
『あ、ジゼル……何しているの?』
『ちょっとした手伝いだな』
そういえば、わたしに荷物を渡した次の日に、すぐ出ていってしまっていた。
用事があると言っていたけど……師匠の手伝いを続けてたんだ。
『すごいね、自分から手伝うなんて』
『だろう。俺は偉いからな』
ジゼルは、偉そうな表情で答える。
すごい……でも、なんだか子供みたい。
見た目は大人なのに……
そう考えてしまって、思わずクスリと笑ってします。
そんな中、ミリシアは小さな声で言った。
『……わたしだって偉いわ』
『うん、そうだね。ミリシアはいつもわたしを手伝ってくれてる』
『ええ、そうよ』
ミリシアは、満足そうに頷いた。
……競い合い、だったのかな?
なんだかいつも通りって言う感じがして、楽しい。
ジゼルとミリシア、そしてわたしが揃うことは、最近あまりなかったから、久しぶりな感じがする。
さっきの疲れも自然と消えていって、笑顔になっていた。




