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blue spring  作者: スカフィ
19/20

☆19☆

ズルズルと美代子を引きずって来た美佐子。


「…うそ…美代子?」


愛子ちゃんはゆっくりとビニールに近づいた…。


「…美代子はね、アンタと拓郎くんのせいで死んじゃったの…」


「…美代子…美代子ぉぉぉ〜っ!」


愛子ちゃんは美代子に抱きついて泣いていた。


そして美佐子はけんじも運んで来た…。


「…けんじくんまで…」


「…さ、死のっか」


そのまま奥に消える美佐子。


「ねぇ…森下くん…美代子の半分がないけど…」


「…俺達…毎日美佐子から貰った弁当食ってただろ?

アレに毎日少しずつ入れてたんだって…」


「…え!?それって…」


「そう…毎日食べてんだ…美代子を…」


「…うっ…うそ…」


愛子ちゃんはショックのあまり呆然としていた。

その背後から美佐子は奥から持って来たガソリンを

美代子とけんじにかけた…。


「…美佐子…何やってるの?」


「見ればわかるでしょ?ココを燃やして

みんな一緒に死ぬのよ…」


「やめて!お願いだから…刑事さぁん!早く来てぇー!」


「そう簡単には開かないわ…ウスノロ刑事じゃない…」


「…はあ…はあ…森下くんっ!ホントに死んじゃうよ!」


俺は聞く耳をもっていなかったので、愛子ちゃんを無視していた。

美佐子は部屋の周りにガソリンをまき始めた…。

ガソリンの臭いが鼻につく…。


「森下くん!」


愛子ちゃんの力強い声に俺は愛子ちゃんを見つめた。

そして俺から出た言葉は、


「…愛子ちゃん…早く逃げて…」


その言葉に愛子ちゃんは凄く哀しい表情をしていた。


「そうよ愛子…。がんばって玄関まで行きなさい。もう火をつけるわ…」


美佐子はライターを取り出し火をつけた。


「……わかった。」


愛子ちゃんは顔を下に向けると


「私も一緒に死ぬ…」


身体を震わせながら呟いた。


「…!」


「森下くんが死ぬなら私も…」


「あらら。あんたまで?ホント邪魔オンナね」



ドン!ドン!


「開けなさいっ!!」



様子がおかしい事に気がついたのか、

刑事さん達は必死にドアに体当たりしていた…。



「愛子ちゃん…ダメだよ…。君は生きて…」



「勝手な事言わないで…!あなたにそんな事言われたくないわ!」



「…美代子…いま行くからね…」



美佐子は目を閉じて祈るように言うと

ライターを美代子に投げた。




ボッ…!




火は一気に線をなぞるように美代子を包み込んだ。



「……!」


「……!」


隣にいるけんじにも火が廻ってきた…。

ガソリンのお陰で炎は一気に勢力を増し

部屋の半分近くまで燃え上がっていた。

俺は勢いよく部屋が燃えて行く光景に恐怖感を感じだしていた。

死ぬことを望んでるのに

体が本能的に危険信号を発してるのだろうか…?


「…ごほっ!ごほっ!」


愛子ちゃんが苦しそうに咳込んでいた。


美佐子は燃えてる美代子をうっとりと眺めている。


部屋の温度は上がり火はもう目の前だ…。


「……はっ…はっ…」


心臓の音が頭の中で響いてる…。

…喉もカラカラだ。

そして、ぐるぐるとある言葉が廻り始めていた…。


それは…さっきと全く正反対の

『死にたくない』…だった。

自分でも正直…驚いた。



バチバチ…


すごい異臭が鼻につく…。

この臭いが人間の焼ける臭いだと気付いた時

俺は体を動かし、ロープを解こうとしてた。



「…森下…くん?」


「…いやだ!死にたくない!こんな所で死にたくないっ!」




必死で俺は暴れた…だが、ロープも鎖もビクともしなかった。



バチバチ…



煙が部屋を包み、呼吸がままならない…。



「これを…!」



愛子ちゃんはナイフを投げた…。



ボトッ。



…だが、鎖に繋がれてる俺にはあと一歩届かない…。



「ゴホッ!ゴホッ!」


愛子ちゃんはシビレで動けない上に煙で苦しそうだった…。



「はぁー…はぁー…」


煙で美佐子の姿も見えなくなっていた。


それでも俺は必死に動いていた…!


「…ちくしょう!…なんで…ごほっ…何やってんだ俺はぁ!」


もくもく煙は広がり、ついには愛子ちゃんの声も聞こえなくなっていた…。


「愛子ちゃぁーん!おーい!大丈夫かぁー!ごほっ!ごほっ!」


「………。」


「はぁー…はぁ−…」


煙は更に広がり俺までもが呼吸困難におちた。


「はっ…ぜぇ…」



(俺はなんてバカだ… 美代子もけんじも美佐子も…そして愛子ちゃんまでも

巻き添えにするなんて…俺と知り合った為にみんな幸せになれないなんて…どうかしてる…)


うっすらとしてる意識の中で声が聞こえる。


「おいっ!大丈夫か!?今、ロープと鎖を…」


「はっ…はっ…」


やって来た男は俺の鎖とロープをいとも簡単に解いた。


「ホラッ!もう動けるだろっ!」


「…は…うん…」


「俺の肩につかまれっ!」


「…うん…ゴホッ」


俺は肩につかまりドアに向かって歩き出した…。

だが、この男の声…聞き覚えのある声だ。

すごく身近で聞いたことある…。


ふと、目に入る倒れてる愛子ちゃんの姿。

俺は夢中で駆け寄っていた。


「…愛子ちゃん…!」


愛子ちゃんを夢中で抱き上げるとドアに向かって歩き出す。


「いかないでぇぇ!」


突然、煙の中から美佐子が出てきた…。


「あたしを置いてかないでよおぉぉ〜」


美佐子は俺にしがみついた。

よく見ると美佐子の背中は燃えていた…。


「あつい!あついよぉ!いやあぁぁぁっ!」


「離せっ!俺はどうしても愛子ちゃんを助けたいんだっ!」


「いやよ!離さない!アンタも道連れにしてやるんだからぁ!」


「離せよっ!」



ブォォォーッ!



火が風のように揺れている。

そして俺達は包まれていた…。


「いやあぁぁぁ!いやよ!…え?誰っ!?」


「美佐子!離せよ!」


だが、美佐子は俺の声が聞こえてないのか、俺の足から手を離さなかった…。


燃え上がる炎は美佐子の背中から腕に広がっていく。

美佐子を包む衣類の焦げ臭い臭いと身体を包む皮膚の焼け爛れる臭いが混じり

息が出来ない状況になっていった。


それよりもしがみついている美佐子から

自分に火が移って来ないか不安で必死に払いのけようしていたが、

上手くいかない。



「きゃあああ!あつい!あついよぉぉ!」



「離せっ!離せよ!離すんだっ!」



「いたい!引っ張らないでぇぇー!助けて!拓郎くぅん!

誰かが…誰かがいるのぉ!煙の中に…!」



美佐子は叫びながら俺の足から手を離した…。


「やめて!あたしだけ死ぬのはいやぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」



すると、何故か美佐子はズルズルと火の中へ消えて行った…。


まるで何かに引っ張られるように…。


次回いよいよ最終回!

どんなラスト迎えるのかお楽しみに!!

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