127 一件落着.... とはいかなかった
「早川さん、色々と聞きたいことがあります」
「あッ... ハイ」
目の前の黒ずくめは、顔や体格は違えど間違いなく百武さんだった。立ち振る舞いや声色もそうだが、なにより先ほどまでとは気配の格が違う。
「ちなみに.... 百武さんですよね?」
「その通りです。この前の交流会から着想を得ましてね、あるアーティファクトを使った他者への憑依.... と、言ったところです」
「なるほど」
人道的にはちょっとアレな感じがするが、「プロトコル3」とか言っていたし、多分合意の上なのだろう。であれば俺がとやかく言うことじゃない。それに.... 便利そうだし。
これが距離に制限の無いモノであった場合、安全圏に居ながら自分自身を現場に派遣できるという、矛盾しているようで矛盾していないことが可能になる。俺の糸を介した憑依.... というより操作の完全上位互換だな。
「で、そちらの事情も話してもらえますか? 一応、周囲の人払いと結界スキルによる遮断は行いました」
「あー はい。その.... なんと言いますか....」
歯切れが悪くなりつつも、俺は起こったことをありのままに話した。
「俺の使役するモンスターが脱走しました..... 申し訳ありません」
「................早川さんは使役系... いや、召喚系スキルもお持ちでしたか」
今回に関しては、完全に俺の不手際だ。バロムは後で対処するとして、まずは被害の確認... もとい、バロムがどんなやらかしをしていたのかを確認しなければなるまい。
「では、私からの電話に応答したのはそのモンスターというワケですか。人型かつ、会話可能な召喚獣.... 未だに発見例のないモンスターですね」
「はい.... すみません。ところで、ウチの馬鹿がなにかやらかしていたりは....」
「いえいえ、謝る必要もありませんよ。むしろ、今回の迷宮氾濫の首魁を倒していただいたようですし、感謝こそすれ責めることはありません。元より、こちらで隠蔽工作をするためにこの部隊を派遣したわけですし、やることは変わりませんから」
およ? 意外とバロムは暴れていない? であれば減刑も視野に入ってくるが.... 日頃の信頼が無いからな。正直言ってもっとやらかしていると言われた方がしっくりくる。
「本当の本当に、本当ですか? もっと.... 色々やらかしていたりしません?」
「そうですねぇ.... これは私が組織した”特務機関Anon”の一人がスキルにより記録した文書です。それによると.... まず、私から早川さんのライセンスに電話をかけてから、約5分後に上野ダンジョン上空に未確認飛行生物.... 先ほどの彼が出現。直後に急降下し、直下の蜘蛛型モンスターを撃破。その場に10分ほど留まった後に、上野ダンジョン東門まで移動..... そして、今に至るというのが事のあらましです」
そんな詳細な説明を、百武さんはしてくれた。
.............俺の考えすぎ、か。
少しはバロムを信じてやるべきだったかもな。ちょっと反省。
「この文書を作成した管制隊員のスキルは、地図を対象にしてその範囲に存在する全ての生命体の位置情報を取得することが出来るモノです。それにAR技術を用いた立体地図を組み合わせることで、どのような場所であっても即座に現場の状況把握を可能にしています。早川さんの召喚獣が人を殺害したりはしていないことも確認済みですよ」
「よかったです。では私も、速やかに撤収した方が良いですかね?」
「はい。後の隠蔽工作と救助活動は我々Anonの部隊が引き受けます」
部隊.... 先ほどまで俺を包囲していた黒ずくめは、百武さんが個人で組織した部隊なのか? そうでなければ隠蔽工作なども任せられないだろうし.... というか、特務機関アノンって、某汎用人型決戦兵器を有する組織のオマージュ?
アノン.... Anonか。匿名とか、名無しとかのスラングだったような... なるほど。百武さんが個人で立ち上げた秘密組織ってニュアンスかな? 正直.... かっこいいな。
「はい。では失礼します」
そう言って俺は、家に常備してある紙の式神と自分自身を入替えして、無事に家に帰ることが出来た..... その二日後。
「バぁああああロぉおおおおおおむぅウうううう!?」
俺が手にしたスマホの某SNSには、白い巨大蜘蛛を足蹴にする不審者の姿がバッチリと納められていた。
リアクション 喜び Lv.1
ブックマーク 喜び Lv.2
評価 喜び Lv.3
感想 歓喜
レビュー 狂喜乱舞
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