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俺は奈落の底に落ちている  作者: 緋色唯
3/10

episode3 奈落の慰安旅行初日

色々あったばかりの今日の良き日。


慰安旅行の日が来てしまった。

どうなることやら…。

佐々木「松島だぁ!!レトロぉぉ!!」


馬城「お前相変わらずウルセェな」


中間「あら佐々木くんらしくていいじゃない」


森「だな。佐々木は通常運転が1番だ。変に大人しくされると雨降るどころか槍が降って来そうだ」


佐々木「森さん酷いじゃないですかぁ!!」


奈落「…」


松島温泉慰安旅行。この日が来てしまった。いい天気になってよかったなと思う。

衣子と佐々木が入社して約1ヶ月半、5月下旬。葉っぱが生え始め、白と黄緑の美しい桜の木がまだ観られる。この日は風が少し吹いてて桜の花びらが散っていった。もうそろそろ完全に全部花弁が落ちるだろうな。その風景を見ながら俺はセンチメンタルになっていた。

皆仕事では日頃スーツ姿だが。今日は私服だ。当たり前だが。


馬城は薄いグレーの服に7部丈の黒のジャケットを羽織っていた。ジャケットの袖を少しまくっており裏地のストライプの柄を見せていた。首からアクセサリーをぶら下げていた。サメの歯らしい。魔除けか?ズボンは白一色でこれまた7部丈で涼しげだ。そして茶系のスニーカー。基本的に動きやすい服が好きみたいだ。


中間は、黒のシャツで胸元を少し開け中のベージュのレースの服が顔を見せる。袖をまくり、真珠っぽいネックレスに茶色のブレスレット、シンプルな赤いピアスが風が吹くたびに、パーマをかけた茶髪のセミロングヘアーの隙間から見える。膝丈の大人っぽいシンプルな無地の深緑のスカートに、ベージュの夏靴。中間は想像通り大人びた色気が出る服装だった。

そして、やけにバックが大きいなと思ったら馬城の荷物も入ってるようだ。この前の飲み会で付き合ってないと言っていたが、逆になんで付き合ってないんだ?不思議だ。


佐々木は紺色の大きめのハットを被り、空色のタンクトップに裾が短めのブラウンのジャケットを着ていた。黒のネックレスを身につけ、ズボンは紺色の短パンで靴は革製っぽい素材のダークブラウンの靴を履いていた。

結構オシャレが好きなんだなと思った俺だった。

20歳という年齢にしては思ったより大人っぽいが、振る舞いが子供っぽいのでうまく佐々木らしくまとまっている。

バックは何が入ってるんだというくらい小さいメンズのショルダーバックだ。


皆んなが普通だよと言っているかのようにオシャレに服を着こなしている。


俺は暗めのジーンズに7部丈の白のシャツ。アクセサリーなんて持ってないので、今の仕事に就く時に母から貰ってずっとつけている赤いミサンガくらいだ。今になってまだ切れないのかよと恥ずかしく思うボロボロのミサンガだ。だからといって結んでしまった輪を切るのもためらう…なんて厄介な代物なんだ…

靴は茶色のヴァンプシューズ。

俺もシンプルにオシャレしてきたつもりだったのだが…3人の輝きに隠れてしまう。


そして奈落。

グレーのロングスカートによくあるような黒の靴。もう暖かくなってきたというのに黒のコートにグレーのマフラーをしていた。

春コーデでも初夏コーデでも無く、冬コーデである。似合ってはいるが…。

全身グレーと黒で統一され、更に黒髪ストレートロングにぱっつん。

別に期待はしていなかったが…。顔綺麗なんだから磨けば光ると思うんだが…。

どうしてこうなった。

そしていつも通り無口で暗い。


森「なぁ、衣子…暑くないのか?」


奈落「まだ、5月中旬だし。着込んで損はない。」


森「…そうか20日は衣子にとって中旬か。」


奈落「うん。25日すぎてから下旬。」


まぁそこらへんは俺も模範解答はしらないからなんとも言えんが…

奈落はオシャレとかどうでもいいようだ。体温調節をするのが優先。まぁ、いいけどな!?いいけどな!?!?


中間「さ、みんな旅館入るよー?」


みんなは荷物を持ち、中間を先頭についていった。今回泊まらせていただくのは『日本三景 松島 ホテル壮観』俺らは無料シャトルバスを利用したからとても楽に旅館に来られた。こういうサービスはとても助かるなと思った。


中間「『中間』で予約していた者です。」

受付「中間様ですね。5名様でお間違いないでしょうか??」

中間「ええ。」


中間が受付をしている間にみんなはそれぞれ自由行動していた。衣子と俺はみんなの荷物を見張りながら休憩所に座り、馬城と佐々木は漫画コーナーに行き漫画を少し読んでいた。

俺は向かいに座る衣子を無意識に見つめながら『お土産何買おうかな』と考えていた。


奈落「なに?」


森「…え?」


奈落「私なんか変?」


森「え…あぁ。いや違う。お土産のことを考えただけだ。」


急に話しかけられたから言葉がどもってしまった。


奈落「人の顔見ながら考え事するの昔から変わらないよね。」


そ、そうなのか…?気づかなかった。

衣子は下を向いた。さすがに嫌だったか。


森「ごめん。俺…!」


俺はなにを思ったのか立ち上がって衣子に迫った。


奈落「も、森…?」


衣子は驚いた。


中間「はーい。はーい。続きは部屋に着いてからねー。直人と佐々木くんは?」


中間が受付を済ませ鍵を持ちながら手をパンパン叩いた後、キョロキョロした。


俺はいつの間にか衣子の手を握って迫っていた事に気付きテンパった。ナイス中間…。

絶対変に思われた…最悪だ。なにしてんだ俺…気まずくなるだけじゃんか…


部屋に着いた。部屋は2つ。隣同士だ。

男と女別という振り分けだ。当たり前か。


俺たちはそれぞれ部屋に入った。和室独特のいい香りが俺たちを包んだ。


佐々木「うっわー!!僕の実家に似てるよー!!ホッとするこの匂い!!あー!!おっきな窓!!僕ここで湯上りビール飲むっす!!先輩方ももちろん飲みますよね!?」


馬城「そうだな!」


森「佐々木…部屋を早速荒らすな」


佐々木は窓を開け、クローゼットを開け、茶菓子を開け、冷蔵庫をあけ、はしゃぎまくっていた。


馬城はその様子を楽しそうに見ていた。


俺は荷物を置いた後、とりあえずの間取りを確認するため立ち上がった。

トイレの場所とか大事だからな。使い方とか。


佐々木「早速入りに行きませんか!?」


森「もう行くのか!?」


馬城「確かにな。それもいいな。お土産は帰りでも全く問題ないしな。ちょっと待ってろ。百合子に言ってみる。」


佐々木「了解っす!!」


馬城は部屋を後にした。


部屋に騒がしい佐々木と2人きりになってしまった。こいつは感情とかを表に出すが、なんか読めないところがあるんだよな。


佐々木「僕、今日奈落さんに告白するつもりなんすよ!!」


森「は!?!?」


俺は突然の告白に飲んでたお茶を吹き出しそうになった。


佐々木「僕、奈落さんに初めて会った時から気になってて、世に言う一目惚れってやつっすよね!?だから、この気持ちを僕は伝えたいんで、言うんすよ!森さんどう思います??

…年下なんて相手にしてくれないっすかね…?」


最後の方弱気に喋った。薄々感づいてはいたが……本気なんだな。佐々木はこんなに素直に俺に打ち明けたのに。なんて返していいか…


森「まぁ、が…」


言葉が詰まった。

頑張れ??俺今、頑張れって言おうとしたのか?そうだよ…なに迷ってるんだ。言えばいいじゃないか。

俺は衣子に対する気持ちには鍵をかけたんだ。だから、衣子が誰に好かれようと、誰を好きになろうと関係ない話だ。

なのに…なぜだ。この鍵は緩い。

この鍵のキーなんて、一生開かないように捨てちまえばいいのに。なんで鍵に刺さってるんだよ。少しひねっただけで開いちまうじゃねぇか…。

俺はなにやってるんだ…女々しい…


佐々木「森さん??僕の相談なんて聞きたくなかったっすか?気悪くしたらすみません。でも、本気なんで!」


目が本気だ…

俺はその目には勝てない。


森「あぁ。…なんで俺なんかに相談したんだよ。頼り甲斐のある馬城の方が良かったんじゃないか?俺は何もアドバイスできねぇしな。」


佐々木「何言ってるんですか?ライバルに正々堂々と勝負を仕掛けただけですよ。」


は…?なにいって…


佐々木「男同士の正々堂々と勝負ですよ!森さん!隠しきれていたつもりですか??」


何言ってるんだこいつは。


佐々木「俺、奈落さんと森さんの会話を聞いてすぐにわかったんですよ。初対面じゃないことくらい簡単に奈落さんを見てればわかります。そして、森さんは奈落さんの事が好きなんだなってわかりました。」


こ、こいつ…


佐々木「甘く見ないほうがいいっすよ。こう見えて僕、肉食系なんで。」


佐々木は振り返りながら笑顔で勝負を仕掛けてきた。


森「お、俺はそんなんじゃねぇよ。ただの幼馴染だ。」


佐々木は鋭い目をした。


佐々木「…そう…ですか。では問題ないですね?」


俺は言葉が出なかった。仕事面では勝てると思っていたが、プライベート面ではコイツのアクのない天然で新鮮な笑顔に勝てる気がしなかった。恐怖感まで覚えた。なにに対しての恐怖だ?


そして、ガチャっと馬城が帰ってきた。


馬城「女子の方も湯行くってさ!俺たちも行くぞ!」


佐々木「わーい!!温泉だぁ!!」


馬城「ほら、森!ぼーっとしてないで準備しろ!置いてくぞ!鍵は俺が持っておくからな!!」


森「あ、おう。」


俺たちはそれぞれ浴衣など準備し、部屋を出た。

俺は少し準備が遅れた。


佐々木「森さん遅いっすよー!!森さん。…容赦しないっすから。」


森「…」


馬城「ん?なんの話だ?」


佐々木「森さんとの内緒話っすよ!」


馬城と佐々木が部屋を出た。

俺は静寂に包まれた部屋で焦りを感じていた。俺は諦めたはず。10年前に諦めたはず。佐々木と結ばれても衣子が幸せならそれでいいじゃないか。なにを迷って、焦ってるんだよ俺は…。


付属のバスタオルを持ち、俺も2人の後を追いかけた。


馬城が部屋の鍵をかけた。


馬城「よし。お?女子の方は先に行ったみたいだな。あーそうだそうだ。鍵は俺が持ってるから、俺より先に上がったらここのドア前か、休憩所にいてくれな。迷子になるなよ?」


佐々木「了解っす!」


そして、服を脱ぎ体と頭を洗って湯に浸かった。気持ちいい。さっきまでのざわつきが無かったかのように心が安らぐ。

『月明かりの湯』という名らしい。

美肌効果に神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・きりきず・やけど ・動脈硬化症など、もっと効能があるらしい。ほんとにいい湯なんだな。

露天風呂がついてる。涼しい風が火照った体を冷まして心地いい。

俺は結構長湯する方だが、温泉ってなぜか普通のお湯よりも逆上せやすい気がする。俺だけか?

俺はたまらず上がった。


着替えカゴの中にはまだ佐々木と馬城の衣服があった。まだ入ってるのか。

部屋には入れないしな。休憩所にでも行くか。

俺は冷えた水を飲んだ後、牛乳瓶を買い休憩所に向かった。


すると誰かいた。まぁ、誰かしらは居るか。ふぅっとソファに座って牛乳を開けた時不意に目が合った。い、衣子じゃねぇか…


森「い、衣子だったのか。髪団子にしてたから一瞬分からなかったよ」


奈落「そう」


森「…」


風呂上がりの衣子が目の前にいる。温泉の匂いとシャンプーのいい香りが俺のところまで届いてくる。顔が少し赤くなっていてぼーっとしていた。無防備。

…ズルい。


俺の思考を、意識を蝕んでゆく。


森「ふ、風呂早かったな。逆上せたのか?」


奈落「…うん。」


衣子は少し横に揺れていた。相当だな。

牛乳2本買ってこればよかったな。口つけてしまった。あげればよかったな。


森「衣子は昔っから暑いのは苦手だもんな。…なんか冷たい飲み物買ってくるよ。」


奈落「…大丈夫。」


衣子は立ち上がろうとした。それを俺は止めた。


森「そんなふらふらじゃ自分で買ってこれないだろう。買ってくるよ。」


奈落「んじゃいいよそれで。」


森「え?」


奈落は俺の手に持ってた牛乳を奪い勢いよく飲んだ。

…おいおいおいおい…。それ俺が飲んでたやつ…これじゃアレじゃねぇか…

おいおい22歳しっかりしろっ!!!


衣子は牛乳のヒゲをつけながらふぅ…と一息ついた。


奈落「ありがと。おかげで落ち着いた。」


でもまだ衣子はフラフラしていた。濡れた髪、匂い、浴衣から見える首筋、鎖骨…どこを見ても俺にはもう…

急な食欲のような…これはなんだ。血が勢いよく流れていく。

感情が…理性が…あぁだめだ。俺の回らないようにしていた鍵が…回る。


森「…牛乳のヒゲできてるぞ。」


奈落「え?んー…」


衣子は指を使い、舌を出してペロペロした。

反則だ。


奈落「取れた?」


十分取れていたが、

森「いや、全然。舌短いんだから。」

俺は嘘をついた。


奈落「そう。」


衣子は浴衣で口を拭こうとした。

俺はその手を掴んで封じた。


奈落「何?これじゃ拭けないじゃ…」


これは湯上りの魔物が俺に取り付いたせいだ。俺のせいじゃない。俺は頭の片隅に言い訳を考えながら俺は衣子にキスをしていた。牛乳の味がした。

一旦離れる…

一瞬驚いて動けなくなる衣子…かわいい…徐々に抵抗してくる衣子に強引に両腕を押さえつけまたキスをした。

衣子は俺を突き飛ばしてバシッと平手打ちをしてきた。

衣子は顔を真っ赤にしながら「森のバカ…」と言って休憩所を後にした。


その平手打ちで俺は正気に戻った。

俺はなにをしてたんだ?なにをしてしまったんだ。これじゃもう全て終わったようなもんじゃねぇか。完全に嫌われた…この気持ちの鍵はどうしたんだ。

…もう…そんな鍵、ぶっ壊れちまった…。


俺は男としてやってはいけないことをしてしまった。…最低だ…。


俺は衣子の唇の柔らかさがまだ残る自分の唇を触り、その後頭を抱えて呆然としていた。罪という一文字で頭がいっぱいになった。


すると佐々木と馬城がやってきた。


佐々木「いやぁここにいたんすね!お待たせです!…あれ?戻りますよ?」


佐々木の声…

俺は佐々木に返事ができなかった。


馬城「なんだお前。逆上せたのか?」


馬城…俺はどうしたらいい。助けてくれ…その前にまず俺を1発殴ってくれ。いや、2発、足りないな…もう好きなだけ…


俺の思考は湯で逆上せていたのもあり正気じゃ無かった。


俺はいつのまにか馬上にしがみついていた。そして膝から落ちた。


馬城


馬城「おいおい大丈夫かよ!部屋もどって横になれ!ほら、肩貸すから。」


佐々木「…」


馬城は肩を貸してくれた。

部屋に戻って馬城は座布団を二つ折りにして枕にしてくれた。俺はすまんと横になった。俺はほんとになにしてんだ…


…俺のファーストキスだった…。


逆上せた体にさっきのの衝動。男として最低だ。完全に嫌われた。合わせる顔がない。


横になって腕をおでこに乗せてぼーっとしている俺を、佐々木は真面目な顔をして見ていた。



*To be continued…

第3話もありがとうございます!


ついに行動に移してしまった森。ロースタートかつマイナススタート。

森!どうする!?!?


次回は勿論キスの後の話。

お楽しみに!

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