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俺は奈落の底に落ちている  作者: 緋色唯
2/10

episode2 奈落の新入社員

奈落のように出来事が巡り巡る

課長が社員を集め話しだした。


課長「えーでは、新入社員を紹介する。自己紹介をしてもらう。まずは20歳の佐々木くん。」


20歳か。もっと若く見える。茶髪で顔にはそばかす、タレ目でどっちかと言うと可愛い系の顔をしていて、なんか頼りなさそうな男が出てきた。


佐々木「あ、えと、佐々ささき たけるです。ご迷惑をかけるかもしれませんが頑張ります。よろしくお願いします。趣味は、…」


…本当に頼りなさそうだ。だが礼儀正しそうでよかった。新入社員で茶髪はなかなか勇気がいることだからな。まぁ、先輩方には緑とか赤とかいるけどな。

言い忘れていたが、この会社は堅苦しいのが嫌いな社長が作り上げた、主に製品開発に携わる会社である。

新感覚の文房具から、便利キッチンアイテムまで様々なものを開発している。

そして、俺が所属しているのは、開発した商品の詳細書制作や、広告作りや、たまに売り込みに行ったりする。俺は商品制作の方ではなく、事務の方だ。で、この科を『ペーパー班』と呼ばれている。社長がつけたそうだ。本当に変わった社長で、開発科は『アイディア班』、校閲科は『チェック班』と、なぜか全部微妙な片仮名で班呼びしている。『ペーパー』がなんか1番かっこ悪い…。他に無かったのか?

因みに製造は別の場所にある工場で作られている。



課長「続いてもう1人、奈落くん。」


衣子の番だ。新入社員は衣子と佐々木の2人か。衣子はスッと一歩前に出てハキハキと喋り出した。


奈落「奈落衣子と申します。まだ分からないことばかりで先輩方にご迷惑をお掛けするかもしれませんが、仕事を早く覚えて、足を引っ張らないよう精一杯頑張りますのでよろしくお願いいたします。」


そして両手を揃えて見本のような一礼をし一歩後ろに下がった。


周りの社員らは騒ついた。それもそうだ。今後期待が持てそうな新人がやってきたっていうのもあるが…


「なぁ、奈落さんめちゃくちゃ美人じゃね!?」

「俺あしたから会社来るの楽しみになりそうだ」

「何よ男達ったらどうせ見た目だけよ。すぐに化けの皮剥がしてやるわ…」


彼女には歓迎やら僻みやらで賛否両論あるようだ。


課長「そして、この子らはまだ今日入社したばかり、従って仕事も何から始めたほうがいいのかすら分からない。皆んな優しくするように。

そして、この2人の教育係として、えーっといたいた、森くん2人を頼むよ。」


え!?


課長「君は最近仕事熱心で、人一倍人情に厚い。そこを買って教育係に任命する。前にも少し話ししたし、新入社員のマニュアル制作ももう少しで仕上がると言っていたし、それに、やる気満々だったしね?異論はないね?」


そうか…慣れない資料作りやらされてるなと思ったら、アレはやっぱり新入社員の為のマニュアル製作だったのか…。

まさか世話役まで任されるとは思ってなかったが…

断る理由もねぇし、それにここまで期待されちゃ…正直まんざらでもない。


森「はい。是非やらせてください!」


課長は恵比寿のように微笑んだ。

課長って人柄もいいし面白いし、皆んなからなんだかんだ愛されてるんだよな…。俺も何回も助けられてるし。そんな課長の為に応えてやらねぇとな!


俺が高揚感でいっぱいになっている姿を衣子は無表情で見つめていた。


そしてこれは俺の地獄の日々の始まりでもあった。




ある日は ーー


佐々木「森さぁん!!!!」


佐々木が涙目でこっちに走ってきた。


森「なんだ?」


佐々木「なんかあっちにある四角いのにウィーンってなったらガシャコってなって引っ張ったら抜けなくなって……」


森「長い。擬音語が多すぎる。百聞は一見にしかずだ。どこだ。」


ついていくと、シュレッダーに紙がぐしゃぐしゃに詰まっていた。これやりがちな人多いんだよな…。この手はやり慣れてる。とりあえずこれはこうしてっと…。よし詰まってたのが取れた。これでだいじょ…

俺は固まった。

シュレッダーに詰まって入りきらなかった破片を見ると、昨日俺が徹夜して作った原稿が見るも無残な姿になっていた。


森「佐々木…」


佐々木は察したのか手を横に揃えて上を向きビシッと立ち直した。そして返事をした。


佐々木「はいぃ!!」


森「返事はよろしい。俺はさっきなんて頼んだ?」


佐々木「はい!この原稿をA4サイズ両面刷り50枚コピーしろとの依頼でした!!」


森「それがなんでシュレッダーに詰まってたんだ?」


佐々木「は、はいぃ!!コピー機とシュレッダー機を間違えてしまいました!!ほんとすみませんでした!!!」


佐々木は勢いよく頭を深く下げた。


普通間違えるか!!!コピーとかコンビニとかでしたことないのか!?!?天然なのか!?

にしても…よくもやってくれたな…。俺のパソコンからデータ読み込んで刷り直しだ…今やってる仕事を一時中断し家に一度戻らないといけない。データを家に置いてきたからだ。はぁ…徹夜か…


奈落「森」


森「な、なんだ。ここは仕事場だ…一応さんくらいつけろ…。それに年齢は一緒だが俺の方が2年先輩だからな?敬語も一応使ったほうがいいとおもうが?」


奈落「うん」


衣子は少し俯いて無表情でしゅんとなった。可愛い。


森「…でなんだ」


奈落「その資料のUSB今ある?私のパソコンで読み込んで刷っておくことできるけど。そしたら、森は今の仕事中断しないで出来るよね。」


森「マジ!?スッゲェ助かる!!でもUSB俺部屋なんだ。で、さんつけろ。一応」


奈落「うん。大丈夫。取ってくる。家近所だし。…行ってきます。」


衣子はすぐさま荷物をまとめ職場を発った。なんて心強い…

まぁ、敬語は使う気無いらしい。俺もその方が正直嬉しいけどな。距離が近い感じがして。


衣子のお陰でなんとか俺の仕事も勤務時間内に終わらせることができた。



ある日は ーー


佐々木「森さぁん!!!」


佐々木が涙目でこっちに走ってきた。デジャブ。


森「ふぅ…今度はなんだ。大事なところだけを報告。長くなるからな。」


佐々木「はい!では単刀直入に言います!!大変なミスをしてしまいました!」


森「なんだなんだ!?それは解るんだ!なんのミスをしたんだ??またシュレッダーにでもかけたか?大丈夫だ。データはとってある。」


佐々木「違います!!商品を売り込む企業先のファックスに間違って僕の愛犬の写真を送信してしまったんです!!!どうしましょう…」


森「はぁ!?なんでそーなる!?!?」


訳がわからん!!!なんてことをしてくれたんだ!!


そして俺は課長に事情を話し、企業先に赴いて謝罪しに行くことになった。


森「また俺の今日の仕事が…」


奈落「森」


森「さん付けも敬語も使う気ないんだな。そこはもう諦めた。で、なんだ俺は今から企業先に…」


奈落「今日森がやる仕事私が引き受けるよ。ノートパソコン貸して。このデータをまとめればいいのね。まかせて。行ってらっしゃい」


衣子はキーボードを見ずに高速でカタタタタタッと仕事をし始めた。

また助けられてしまった。すまないっ!


俺はオドオドしてる佐々木を引き連れて会社を出た。


今日も衣子に助けられてしまった。

あいつは臨機応変になんでも完璧に手早く仕事ができる。飲み込みも覚えも速い。もう入社1週間で立場が逆転してるんじゃないかと不安になるくらいだ。



そして久しぶりに馬城と中間との呑み会に誘われ、嬉しくて飛んで行った。



カンパーイ!!


ぶっはぁ!!やっぱり一発目のビールは最高だ。


森「誘ってくれてありがとな。ちょうど一息つきたいところだったんだ。」


中間「新人育成世話係大変そうね…。」


中間は他人事のように話し、肘をついて枝豆を食べていた。


馬城「自分の仕事もしつつ、新人のサポートだろ?もちろん責任もお前も同等にかかってくるんだろ?俺だったら無理だわ〜。森だから出来るんだよ。ほっとけないたちだろ?」


森「まぁ、そうだな…ほっとけないし、使命感ってものあるし、あとやりがいがあってなんだかんだ充実してるよ。たまに地獄だけどな!」


3人は大笑いした。


そして結構3人とも気持ちよく出来上がってきたころ…


「あれ?森さんじゃないですか!奇遇ですね!!」


うっ…その声は…佐々木!?

俺はばっと振り返ると、目が止まった。

陽気な顔をした佐々木の隣に衣子が居たからだ。


佐々木「あのぉ…迷惑じゃなければ一緒にいいですか??森さんにたくさんお世話になりっぱなしでちゃんと謝りたいと思ってたところなんです。」


馬城「んんあ??、あぁ〜俺はいいよ?うん…」


中間「えぇ。私もいいわよ。一名出来上がってるのを超えてる先輩が居るけど、それでもいいなら?で森くんは?」


森「…佐々木はなんで、い……奈落さんと一緒なんだ?」


中間「???」(話が変わったわね…)


佐々木「さっきまで新人歓迎会があって、折角だし新人同士呑みませんかって僕が誘ったんですよ!」


衣子はチラッと俯いてる俺をみて、すぐ前を向いた。


奈落「断る理由が見つからなかったので。」


佐々木「んー!!!奈落さんクールですよね!!」


森「そうか…立っててもしょうがねぇからな座れよ。」


佐々木「森さんありがとうございます!では!お言葉に甘えて…!」


衣子のやつ…男と2人で呑みに行くって…抵抗とかねぇのかよ…!!!なんか腹立ってきた。

俺は残りのビールを一気飲みし、ハイボールを追加注文した。


佐々木「よっ!森さん男前!!!」


中間(ふーんやっぱり。奈落さんと森くん初めてあったって感じは無いなと思ってたけどねぇ。森くんまさか?)


中間は興味深そうに焼き鳥を口に咥えた。


飲み会は馬城の暴走も少しあったが、楽しく盛り上がった。衣子は相変わらず無表情で無口だが衣子は衣子らしくたのしんでたんじゃないかな。

なんで俺はこんな事考えなきゃいけないんだよ。憩い場なのに…

俺は心の底から楽しめたのか分からなかった。なんでだ…


すると締めの方で馬城が立ち上がった。


森「馬城…いきなり立ち上がってなんだよ。まさか…吐くなよ…?」


馬城「んあー!!俺は決めだぞ!!決めた!今日までのなぁ森を見てると痛々しくて見てられねぇんだよ!!うぅ…」


馬城は立ちながら涙した。


森「な、なんだよ突然泣くし訳わかんねぇ…」


中間「あー気にしないでこの人酔うと涙脆くなるの。私から説明するわ。ついでに新人のお二人もよかったら聞いてね?」


中間は手に持ってた焼き鳥を取り皿に置き口を開いた。


中間「直人も言ってるように、森くんが慣れない仕事に疲れて大変だと思ったのよ。それに新人さん達も初めての仕事で覚えることが多くてこれまた結構疲労が溜まってくる頃だと思ってさ。

だから、私と直人で少人数だけど、チョイ温泉慰安旅行ってのを考えてたってわけ。どう?予約の手配は私に任せて。まぁ、宿代は割り勘になっちゃうけど…。それでもいいなら?」


佐々木「はいはいはい!!行きます行きます!ずっと温泉行ってないんですよ!!行きたいです是非!!」


中間「うん。佐々木くんは決定ね。森くんと奈落さんは?どうする?」


佐々木「奈落さんはもちろん行きますよね???僕奈落さんが行かなきゃ嫌です!!奈落さん居ないとつまんないです!!」


衣子は驚いた表情を見せた。そして少し俯いた。


中間「あ、奈落さん、これは強制じゃないのよ?でも、女が私1人だとなんだか寂しいななんて思ってさっ。同い年同士、付き合ってくれない?女同士でしかできない話もあるし…ね?」


中間は意味深く衣子にウインクした。


佐々木「なんすかなんすか!!女の子同士じゃないとできない話って!!あんなこととかこんなことですか!?」


佐々木は1人で妄想していた。


衣子は中間の包容力の大きさにホッとしたのか、俯いたまま「では是非…」と少し照れながら言った。


衣子も行くのか…俺は…ん?ちょっと待てよ。もし俺が行かなかったら、

『馬城&中間』『佐々木&衣子』の組み合わせになっちまうじゃねぇか!!それは阻止せねば!!!


中間「森くんは?どうする?」


森「俺も行く!!元はと言え、俺のために計画立ててくれたんだからな。…持つべきは頼れる友人だなっ!」


馬城「森ぃー!!!」


馬城は嬉しさのあまり俺に抱きついてきた。


森「うわっ!馬城鼻水!!!きったね!!」


笑い声がひびいた。


衣子と温泉慰安旅行か。それを考えただけで嬉しい。

この衣子への一方的な感情は永遠に鍵かけることにした。だけど、その感情の鍵を開けるキーは心のどこかで捨てられないでいる。

あの中学の春思いっきり振られたようなものなのにな…諦めの悪い男だな俺は…



俺は無意識に衣子の顔を見た。するとタイミングよく目が合ってしまった。俺はすぐ逸らしてしまった。俺は顔が熱くなった。はっずっ…。それに逸らし方も違和感がありすぎた絶対…。

衣子は無表情でこっちを見続けている。俺はそんなかっこ悪い自分を見せたくなくて、衣子を見ることが出来なかった。


衣子は無表情のまま目線を焼き鳥に向け、何事も無かったのように食べ始めた。


中間(ここで、この2人の関係聞きたいのは山々だけど今尋ねたら変な空気になるからやめておこうかな。まぁ、確実に言えることは、森くんは奈落さんに気があるね。奈落さんは無表情だから読めないけど…。慰安旅行なんだか楽しくなりそうね。)


中間は少し不気味に笑みをこぼした。


慰安旅行は有休を使って2泊3日。場所は宮城県松島の旅館。松島は日本三景の1つだ。


楽しみ反面不安がある。でも折角の慰安旅行だ。楽しまなきゃ損損だな!!

と思っていても、

居酒屋の賑やかな笑い声の中、俺だけが輪の外に居るような感じがした。


新入社員が入ってきて1ヶ月。


この気持ちはなんだろう。もうすぐ6月の梅雨の時期にはいる季節の変わり目だからなのか…。それとも酔っているからなのか…。

俺はこの気持ちに何か理由を付けようととしていた。だがどれも当てはまらない。当てはめないようにしていたのかもしれない。



そして、旅行の日がやってきた。



*To be continued…

第2話ありがとうございます!


旅行はどうなることやら…


次もお楽しみに!

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