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61.「私はエノクの民だ。音と言葉を操る力を持っている」

アマルティア様とルル王女。動と静。まさに対極に位置する2人の王女。






アマルティア様はお人形さんの様な容姿のわりには、かなりお転婆娘だった。懐かしい。木登りは日常茶飯事。何気に騎馬だって出来るし、軽い剣術なら問題ない。城の従者たちと鬼ごっこして培った、頭の回転は素晴らしい。






前線に居る珍しい軍師タイプのアマルティア様。今日も賑やかに笑っています。お淑やかさ、一体どこに落としてきたんだ。見た目からは想像も出来ないお転婆に、翔陽様も清々しく笑っておられる。





―――そんな声を聞きながら、私はルル王女と魔力についてお勉強を始めようかというところだ。ルル王女は私より、違う方が気になるらしいが。






「良いか、ルル王女。自分がしたいことは行動に移そう」






どうしてそんなことを言うの?そんな顔をするルル王女。昨日の今日だけど、随分と打ち解けてくれたらしく、ちゃんと目を見てくれる。声が出ないからと言っても、彼女は彼女なりに表情が豊かな方だ。






「外に出たいんだろう?さっきから、耳を澄ませて様子を伺っているように見える」






とても驚いた顔。無表情が基本搭載のメル兄様と、伊達に十数年過ごしてきたわけではない。私にとって、今や無表情な人間の方が一番分かりやすいのだ。





「うん、魔力の制御も覚えたからな。魔術の規制を覚えるにあたって外で授業をしよう。城仕えの魔術師が居ただろう、その人たちに少しだけ魔術を見せて貰ってから話しに入ろうか」





…良いの?本当に外に出ても良いの?


それを陛下は許してくれるの?





「あれ?いつからアイツは、君に行動の定まりを与えたんだ?君は自由なんだよ。君の羽は手折られてない。此処は鳥カゴじゃないんだから」





でも、勝手に決めたら陛下は怒るよ。


陛下が怒ったら陛下が一番危ないのに。





「優しいのな、ルル王女は。じゃあ、一緒に陛下にお願いをしに行こうか」





白い小さな手を取る。血も憎悪も知らない綺麗な手を握ることが、何だか烏滸がましい気もするけれど一抹のモノだ。握り締めれば、彼女もおずおずと握り返してくれた。





「ルル王女の手は温かい」





そう?私は貴女の手が好きだよ。





「好きなのか?こんなに冷たい手が?」





落ち着くから。お母様が傍に居るみたいで、貴女は落ち着くの。





「お母様な。よく故郷の子供からはお兄ちゃんだなんて言われてたが、それは初めてで…くすぐったいな」





ふふ、と笑ったルル王女。春の陽だまりみたいなその笑顔に、何だか私の心も温かくなる。自分の顏だけど。自分の顏、だったんだけど。傍から見たら、随分と愛らしい顔をしてたのね。





ところで、どうして話が通じてるの?

って、流石にこればかりは分からないよね…。





「分かるよ。話が通じているのは、私だからだな」





えっ?




私を見上げて、驚いた顔のルル王女。話しはちゃんと噛み合っているし、成立している。それは、ただ単に私だからだ。






「私はエノクの民だ。音と言葉を操る力を持っている」






…音と言葉。





「そう、だから気の知れた動植物とは会話が成り立つ。ただ、ルル王女とは波長が合うらしい。チャンネルを合わせただけで声が聞こえる」





……私の心、駄々漏れにならないの?





「それは大丈夫。私の目とルル王女の目が合った時だけ、って自分で縛り(ルール)を与えているから。無闇矢鱈に聞いたりしないよ」






嘘であり真実。ぶっちゃけ、いつでもフルオープンのルル王女の心。だけど、流石に私も大人だ。駄目な大人になる気は毛頭ない。さらっと聞き流しているし、出来る限り目と目が合った時だけ聞くようにしている。






ほら、個人情報保護法ってあるしね。プライバシーの侵害はしたくない。ルル王女だって年頃の女の子だ。それなりに想うこともあるだろう。





「ほら着いた。ルル王女、自分で一歩を踏み出すかい?それとも私の先導が必要かい?」





小さな選択の時間だ。





選べ、好きな通りに。





新緑の瞳が閉じられ、躊躇いの時間が生まれる。きっと陛下や海燕殿は扉の前に私たちが居ることに気付いている。陛下たちが先に開けるか、ルル王女が行動に移すか。






どれだ……?






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