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40.「彼女のいない生活なんて無かった」

鷹匠にでもなったつもりか?と夜鷹を飼い始めて父に言われたが、その職もありかもしれないと一瞬だけ思ったことがある。ただ、相手が夜鷹だからこそ有りだと思っただけだ。







「明日で1学期も終わりだね」





「夏休み、何したい?」




「海に行くぐらいかな」





「吉岡たちと予定は?」





「あ、勉強会。課題をするって言ってた」






キャンペーンでダブルがトリプルになったアイスをたべながら、俺と真夜は帰途に就く。お互い、甘党だからこそこうやて寄り道して食べ歩くのが日課だった。







「なら、俺の所も一緒にするのか?」






「ん、多分そんな感じだったよ。集合場所が千景の家だったし」






「え。俺、何も知らされてねーんだけど?」






「私が居たからイケるとでも思ったんじゃないの。都合は千景に合わせても良いみたい」






「なら始業式の前日で」





「明後日でも大丈夫よね、確か。予定何もなかった気がするし」






「…ねぇ、予定訊く意味あった?」






家に着けば、真夜も俺の後に続いて入って来る。コイツの家は隣にあるのに、見向きもせずに駿河家の家の敷居を跨ぐ。







――まぁ、コイツにとって家族は鬼門であり愚問だ。まさか、また親に手離されることになるとは思っても居なかったが。








「ただいま」





「ちーママ、りゅーパパ、ただいまー」






「あら、おかえりなさい」





「おかえり、千景、真夜。今日は遅かったみたいだね?」





「ん、お土産。今日、キャンペーンしてたからアイス屋に寄ってたの」





俺の家族は真夜の家族。それは俺の両親も認めていて、2人は真夜を絶対に隣の家に帰そうとはしない。真夜の両親は、仕事だけをこよなく愛していた。なんでも、俺の両親とは中学生の頃からの付き合いらしいが、ここまで仕事に没頭する人たちだとは思ってもみなかったらしい。







最初、真夜の育児放棄に気付いたのは母さんだったかな。退院して一月ぐらい経った日、真夜と母親の顔を見ようと庭から家を覗いたら、誰も居なくて赤ん坊の泣き声だけが微かに響いていたらしい。







汚物にまみれた真夜を見て、卒倒しかけた母さんだったけど気を取り直して病院に連れて行ったとか。そこで、医者の父さんが登場。痩せ細った真夜は、栄養失調とか色々あったらしい。








俺の両親がブチギレて、真夜の両親を呼び出したけど既に日本にはいなかったとか。今も居ないんだけど。確かフランスだったかな。







それ以来、17年間真夜は俺の家に居る。







「アイス?昨日はケーキだったよね?」






「美味しいよ、りゅーパパ」






「うん、美味しいのは分かるけどね?いくらなんでも糖分取り過ぎじゃないかなぁ?って思うんだけど」







「じゃあ、ちーママと私と千景だけで食べるね」






真夜もそのことは知っている。中学1年の時に母さんから聞いた。だけど恨んでないんだとか。仕事が好きだっただけだよ、と真夜は笑っていた。






「父さんの好きな柑橘系のシャーベットも買ったのにな?」





「私も好きだから大丈夫よ」





「ウソウソ!僕にも置いといてね!?」






俺の隣に真夜が座って、対面に母さんと父さんが座る。日常。変わり映えのない日常が、確かに此処にあった。




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