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37.「巻き込まれた子に祝福を」

「――飛鷹も夜鷹も、そこまで悲観することなどないだろう?」






その眠気を帯びた声に、俺の思考は引き戻された。椅子に深く腰掛け、目元に手を当てた千景を見る。






「なんだ、もう起きてしまったのか」






「まぁ、深い眠りに堕ちることは出来なかったからな。ところで、どうして飛鷹は人型に?」






「ルーチェと契約を交わしておるのだ。ルーチェの余分な力が俺に回って来た時、力を分散させるために人型になる」






「へぇ!それは良いな。それで、夜鷹はどうしてそんなに泣きそうな顔をしているんだ?」





「お主と契約を交わせないからだ」





「契約?あぁ、あれな。別に交わせないわけじゃねーよ。ただ、呪術に関したことを抜きにしても、この体は思ったより脆くてなー。下手に余所の魔力に触れると拒否反応を起こすんだわ」






「夜鷹でもか?」







千景の自嘲じみた言葉に、思わず目を見張った。まさか、他人の魔力に触れただけで拒絶反応とは。しかも、それは神に遣える神聖な魔力を持った夜鷹でさえも。







「この体を蝕んでいる物が物だからな。無くなりゃ、話は別なんだろーが」






「だが、お前はルーチェの魔力を受け入れているんだぞ?」






「それはあれだな、愛の力ってヤツだろ」






「…千景、それは酷い。それはないと思う」






そんな冗談なぞ聞きたくなかったわ。否、本気であってもこのような場所では聞きたくなかった。ほれ見てみろ、第三皇子と宰相の驚きを通り越して白めの顔を。エノクの怪物たちでさえ、微動だにしなくなった。








「あ?なんだ、まだお前等此処に居たのか」





「違うだろうに。お前とルーチェのやり取りが不要なものだったのだ」





「別に本心だったんだがな。アイツを怒らせるつもりはなかったんだぞ?」





「お前は、自分が苦しんできたものをアイツにも味合わせるつもりか?」





「…」





黙りこくった千景は、仄かに暗みを帯びた瞳を伏せた。千景は真夜に置いて逝かれたのだ。殺される所を見さされ、心臓の止まる音を聞かされた。それを、今度はルーチェに味合わせようとしている。






「今度は俺と夜鷹の目がある限り、お前もルーチェも死なさぬ」






「…ははっ、飛鷹も夜鷹も神獣だもんな。さらっと恐ろしいことを言うものだ」






「千景」






「わーってるよ。ルーチェが居ない間に、アイツの問題要素は取り除く。そうだな、差支えがない程度に話しておくか」






「是」






「夜鷹も不便だろう?おいで。ルーチェのおかげで今は落ち着いているから、お前にも人の姿をやろう」







先ほどとは打って変わって、穏やかに笑った千景は夜鷹へと腕を差し出す。俺の手から飛び立った夜鷹を一瞥して、俺は怪物たちに視線を移した。







エノクの怪物のなかで、最も厄介なのがグレイアスだ。第四系統という専ら頭脳系が集まるなかで、群を抜いて頭の回転が速い。







レイヴァールも頭の回転は速いしが、どちらかと言えば魔術や戦向けだ。グレイアスはそれを含めた全てにおいて天才的。






差支えのない程度に話せ、それが一番面倒なところだ。どうやってグレイアスを出し抜こうか。





【飛鷹SIDE END】




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