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31.「一応は心配してるんだよ、姫様の」

「陛下に掛かった魔術について少々お訊きしたいのです」





「目の前で語られていたが、それは本当に夜鷹が語ったことか?」





「――陛下。そのお言葉、心外ですわ」






陛下の黒曜石の様な瞳が私に向く。夜鷹姫の空間で、私と貴方の関係と存在を再認識したというのにその言葉は、ちょっと傷つく。






「どうして言い切れる?今じゃ夜鷹は神獣だぞ」







「神獣だからこそではありませんか。高貴なる存在は嘘など吐けませぬ。夜鷹姫は貴方を案じておられます、素直に心配されているということを受け取られては如何でしょう?」







「ほう、お前ごときが俺に指図するとは」





「まぁ!確かに私は一般市民と同じ位にありますけど、陛下を心配しているんですよ?」






――やっぱり、煽られたまま話をするのって駄目よね!どうやっても、どう足掻いても、この喧嘩腰は治らないわ。






「私は貴方を失いたくはないのです」






「…ルーチェ」





陛下が瞠目する。否、それは陛下だけではない。耳を澄ませていた誰もが、目を見張った。それは、私と陛下は昨日会ったばかりの初対面に過ぎないからだろう。そこまで、心を入れ込む理由が見当たらないのだと思う。







「アマルティア様が新たな人生を歩もうとしている国を治めている貴方が居なければ、この国は滅びへの道を歩むに違いませんから」






「…チッ」







まぁ、本音はまた後程ということで。







〈主様も疑い深い性格になっちゃって・・・〉





〈なに、ルーチェもさほど変わらんだろう〉






2羽の鳥がふわりひらりと舞い来んできた。あぁ、そう言えばバルコニーの窓が開いていたんだっけ。閉めるのも忘れていた。






「夜鷹姫、飛鷹王!」






黒滔々たる夜を切り離したような黒い毛並みのなかに、零した血のような紅い瞳を持った夜鷹姫。彼女に寄り添う様に赤茶の毛と、同じく赤茶の瞳に爛々と輝きを宿している飛鷹王。







それはまるで番の様だが、そこにそんな感情がないことは私も彼も知っていた。







そんな2羽が、陛下の座る椅子の背もたれに留まる。いや、何もそんな場所に留まらなくたっていいじゃないか。腕の提供ぐらいしたというのに。







〈にしても、エノクの怪物っていうのは大物ばかりね〉




〈エノクの武器だからな。目立つ存在だ〉




〈ふふ、そうね、目立たなきゃやってられないわよね〉




〈そうとも。ルーチェ、ルーチェ〉







赤茶の瞳が私に向けられる。深紅の瞳も向けられる。何だろう。私は別に用事など頼んでいた覚えはない。こんな―殺伐とした―場所に乗り込んでまで何か、あるのだろうか?







「どうしたの、飛鷹王、夜鷹姫」





〈ここはひとつ穏便に済ませたい〉





〈主様の魔力の循環をルーチェに補ってもらいたいの〉






「待て、夜鷹!!」




「ちょっと待って、夜鷹姫!!」







陛下の声と私の声が重なる。2羽の声が聞こえているのは私たちだけだから、仕方がないんだけど仕方がないんだけど!!ちょっと、無礼を働いているわけじゃないから!第三皇子、海燕殿、その腰に佩いた剣から手を離しなさい!!






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