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30.「ちょっとやり過ぎたかな?」

「殺すは教皇派、女に虚構の信仰を続ける愚か者共だ」






私は俯いた顔を上げて前を向く。ただ、ひたすらに。エノクの色を一瞥した。私の力に縛られて、正面から当てられて青ざめた顔。メル兄様だけでなくレイ兄様すら顔が青い。真っ向から殺意を向けられたって、びくともしない人たちなのに。







「3日で片付けます。それまでに母上と父上は、北の国の王子にご説明を。あの国は正常に戻るだけです。教皇ではなく、1人の王子の手によって」





もう言うことはない。3日で片付けると言ったからには、片付けて見せよう。なぁに、問題ない。






「……っこぇーな、オイ」





「久しぶりに命の危険を感じました…」





「最後の良心にして、最後の怪物ってか」





いち早く我に返ったのは、流石メル兄様。流石だ。粟立った肌を撫でて苦笑を刻むのはレイ兄様と、好きにしろと言わんばかりの態度をするメル兄様。やっぱり、この2人は流石だ。






次第に、他の怪物たちも我に返る。初めて向けられた力に、アマルティア様は呆然としたままだけど。





「…ルーチェ」





「あぁ、情報は要りませんから。1日目見張って、2日目に仕掛けて、3日目の夜に帰途という予定ですから」





手を借りるつもりは毛頭ない。ただ、北の国の王子の件は別だけどね。初対面の人間にヴァッザーの王になって、なんて言われても困るだろうし。






「1人で、するのか」







「今更何を言うんですか?混ぜてとか言われても、絶対に聞きませんからね。海の国は海の怪物が撃ち落とすんですから」





ふふふと嗤って見せる。煽られたつもりはなかったけど、これじゃあ完全に煽られちゃっている。今は正気8割だけど。






「彩帝国に迷惑をかけるつもりもありませんし、他の方々にもありませんから。ただ、結果だけをお待ちくださいませ」





ベールを被り直した。さぁ、明日から取り掛かろうか。母上と父上には悪いけど、急いでもらってさ。






「話はまとまったのか?」





「陛下、」




「エノクの怪物たちは、喧嘩腰で会議をするのだな」





クククと喉の奥で笑う陛下の瞳は、何処からどう見ても狂気を孕んでいた。なんでこの人、普通にしてるの?第三皇子も海燕殿も顔が青いのに。あれ?まさか、え?ヤバくない?





「彩帝国の現皇帝か、若いなァー。見てみろよ、レイ。この魔力の濃さ、循環下手くそじゃねーか」






「メル、言い方が悪いですよ。貴方まで煽られているんですか?まったく、これだから初代系統は手に負えないんです」





レイ兄様は第二系統。比較的穏やかなタイプが多いけど、殺る時は殺るのが真髄だと言わんばかりに愉しむ。怪物たちでいうと、オリアスク兄上だ。






「循環が下手くそなのではなく、東洋の魔術を掛けられているそうですよ」







「へぇ!それは興味深いですね。ルゥ、その情報は何処から仕入れて来たんですか?」






「陛下の鳥が教えてくださいました。幸い、私たちも魔力が濃い方なので全然大丈夫なのですが、彼の人の周りの人は当然そうではないらしく、どうにかならないかな?という相談でした」







「では信憑性が高いですね。と言えど、見たら一発で分かりますが」







レイ兄様は、興味が湧けば自分の知識欲が満たされるまでとことん追究する人で、エノクの民にしては珍しい性質なのだ。







「お初目に掛かります皇帝陛下。守の怪物、ケルベロスの名を賜っておりますレイヴァールと申します」





「蛇の怪物、ヨルムガンドの名を持つメルキゼデクだ。怪物の統率者を勤めている」






「で?」






2人の自己紹介を流すかのように、陛下は先の言葉を促した。非礼とか無礼とか色んな言葉が駆け巡ったけど、どーでも良いや。うん。







事実、他の人たちまだ私の力の余韻に沈んでいるのだから。



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