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23.「耐久レースの始まりですよ」

「さて、行きましょうかね」




「時期にメル兄様とレイ兄様も着きますし、私たちが遅れてはシャレになりませんね」




「久々ねぇー。最後に会ったのは確か、戴名式だったかしら…?」





「あれ?他のみなさん、外で会ったりしないんですか?」





「全然ねー。アシュルやシェザードは北の国の王子に手いっぱい、グレイアスやオリアスクは国から出ないでしょう?カイルだって騎士団長っていう肩書がある分、下手に余所者と接触できないし。メルキゼデク様やレイヴァール様は論外ね、勿論」





「へぇー…」





そういえば、我が父と母は北の国に仕えてたんだっけ。どういう経緯で北の国なのかは分からないけど、その国の王子様がとっても気に入ったとかどうとか。手紙に書いてあった気がする。





グレイアス兄上とオリアスク兄上はお互い違う国に仕えているんだけど、グレイアス兄上が国の最高司書官―国の情報を全て握っている重役のなかの重役―で、オリアスク兄上は王家専属の影―俗にいう私兵―だ。





滅多に国から出れるような存在でもないし、そう易々と外に出しても良い存在でもない。そんな位に着いている怪物たち。だが、怪物たちを縛る法律など存在しない。






私たちを縛るのは、忠誠を誓った王のみ。





りん、りん、りん。アマルティア様を抱いたイゼベル姉上の鈴が揺れる。もう少しで会議室に入れる。沢山の懐かしい気配を感じながら、私は片手に持っていた紺色のベールを被った。





正装に着替え、怪物たちが集まる場所で、私は相手を直接見ることを避けている。その理由は単純明解。目に浮かぶ殺意や憎悪に煽られるからだ。目は口ほどに物を言う。まさにその通り。






そう言う所が初代系統の悪い所で、メル兄様が居る時は特に注意している。メル兄様に煽られたら、自分でも何をしてしまうか分からない。





「ベール、ね」




「煽られて、此処を半壊しても困りますし」




「メルキゼデク様と同じ初代系統、流石だわ…!」




「何が流石ですか。結構、堪えるんですからね?」




「あぁ、末恐ろしい事。こんな小娘が、色の濃い初代系統だなんて!」





クスリと真っ赤な唇を弓なりにして笑うイゼベル姉上。意地悪な顔をしているくせに、その青灰の瞳はとても楽しそう。





「もう、イゼベル姉上ったら」





溜め息を吐いて、私は目の前の両開きの扉に目を留めた。






今回の小さな舞台となる会議室は此処だ。豪華な扉の取っ手に手を合わせて、私はイゼベル姉上とアイコンタクトを交わして――開いた。






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