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01.「馬、ガンバレ!」

逃げるように城を出て、三日三晩休む暇なく馬を走らせ続けた。アマルティア様の婚約者が居る彩帝国(さいていこく)は、エノク国を囲う様にそびえ立つ山を越えたその先にある。





この大陸で最も大きな軍事力と発言力を擁する帝国で、現在は若き皇帝が君臨している。





あぁ、違う違う。皇位争い真っ只中だったっけな。彩帝国は、それを否定しているらしいけど。まぁ、他国からすれば皇位争い真っ只中。





ちょーっとどころか、かなーり複雑なお国事情を背景にしているが、他の国よりも栄えているし豊かだ。治めている領土も広いし、そりゃ盛んにもなるか。





「王も先代皇帝と仲が良いっていう割には、正規ルートを作ってないってか。クソ、ふざけんなし」






王妃の術で昏々眠り続ける王女を抱いて、整備されていない山を越えろっていうのはちょっと困難な要求だった。馬も必死だけど、それは私も同じだ。






追っ手は来るわ山賊は来るわで、休む暇が一切ないに等しい状態が続く。






ガタガタの山道を走らせながら、私はアマルティア様を抱え直す。もう少ししたら彩帝国に入ることが出来る。それまで、追っ手も山賊も我慢しよう。





私はどうなっても良いが、王女だけは届けなければ。それが国王と王妃の最後の願いなのだから。






そうだ、追っ手の話をしておこう。追っ手というのは、今回反逆の旗を掲げたジューダス家の者のことだ。ジューダス家とは、何代か前の国王が連れて帰ってきた『元・貴族』の男の子孫のことで通称、三流貴族。





その三流貴族の祖は、我が国に根を下ろして住みついたが、如何せん異国の者。周りの民から受け入れられず、それ故にエノクの風習に一切染まることが出来なかった。





否、エノクに染まることを誰一人として赦さなかったのだ。





エノクは血族意識が強い。国民すべてが血の繋がった、何かしらの関係があるものだった。






元々は、王家の派生民族から流れ出ていて、隣の家に住む人は親戚だったり、前に住む人は何代か前の従兄だったりと、近親相姦には至らない程度でそういった婚姻などが結ばれてきたらしい。





私の両親も、元を辿って行けば親戚だったとか。エノクの血を他国へと流すことを頑なに拒み続けた結果だ。





どうでもいい話になってしまったから戻すとしよう。





ジューダス家はエノクに受け入れられず、ついに反逆を掲げた、というワケではないらしい。





どうも、裏でジューダス家を唆した集団が居るのだ。そうでなければ、あの小心者の集まりが反逆の旗を掲げることはないのだ。






王家は、ジューダス家を唆した集団の存在に気づきながらも、エノクを亡き国にしたという悲しい結末を開いてしまった。その王家には、勿論この私も含まれている。


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