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求・ヤンではなくクーな人達  作者: 綾織 茅


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「祭りに行きたい」


 シャルルの我が儘がまた始まった。

 本人曰く屋台やら花火やらが見たいとのこと。 以前世界中継された花火大会の映像を見て、是非とも本場の空気を味わってみたかったのだそう。


 私?内心拍手喝采してましたとも!

 でかしたシャルル!もっと言え!叶えてやろうじゃないの!その願い!

 やっぱりたこ焼きでしょ~焼きとうもろこしでしょ~?

 あ、射的に金魚すくいもやりたいなぁ!


 今回は自分寄りの行事だから千鶴も嬉しそうだ。


 急ピッチで作業は進み、祭りの開催は明日になった。


 いつもなら庶民が庶民が言う連ちゅ…方達も言い出しっぺがシャルルだし、主導が生徒会ってこともあって大きな騒ぎは起きなかった。

 実家に帰っていた生徒達も物珍しさで洸蘭に帰ってきている。今話題の中心に上がっているのは専ら明日の祭りのことだった。


「盆踊りというものを踊るんですって」

「私、この日のために先生をお呼びしたのよ?」

「まぁ!どうでした?」

「独特の動きでしたわ」


 盆踊りに先生っているの?しかもやけに力入ってるね。

 と言いつつ私も盆踊り初体験だから千鶴に教えてもらおうっと。


「ナオ!明日着る浴衣を選んでくれ!」


 出た。まぁ事前にギルバートに言ってたしなめられたのか、命令口調ではなかったので良しとしよう。


 でも男物だったら滝川由岐の方がいいような……。


「シャルル様、男物の浴衣のことでしたら滝川様にお聞きになった方がよろしいわ。きっととてもいいものを選んでくださるでしょうし」


 私も忙しいんだよ。特にこれからはやること山積みなんだから。

 男は男同士仲良くしなさいな。


「ナオが選んだものがいい」

「……」


 我が儘だねぇ。


 ギルバートはシャルルの背後で私に必死になって頭を下げていた。

 すいませんすいませんと本人何も悪いことをしてないにも関わらず腰の低いこと低いこと。なんか哀れんだ目で見てしまうのは仕方ないと思わない?


「分かりました。ですがこちらにも用があるので手短にお願いいたしますね?」


 ここで折れてあげる私、褒めて褒めて。あぁーありがとうシュネー。

 シュネーがペロペロとほっぺを舐めてくれました。劇カワです。

 うちの子最強!


 あ、シュネーというのは子狐ちゃん、改め子狐くんのことです。由来は白いし、雪国にいそうだから。ドイツ語の雪だって。

 というわけで今後ともうちのシュネーをなにとぞよろしくお願いしますよ、へっへっへっ。手をにぎにぎして言ったら悪っぽいよねこのセリフ。


「ありがとうございます!シャルル様のお部屋に一通りの浴衣はご用意してありますので」


 ほっとした顔のギルバートに先導され、シャルルの部屋に向かった。


「まぁ、神宮寺様がシャルル殿下と連れ立っていらっしゃるわ」

「あのお二人、いつ見てもお綺麗ねぇ」

「眼福だわ」

「近侍のギルバート様も素敵」


 お綺麗ねぇってそりゃあギルバートは確かに綺麗顔だけど、シャルルの方はその良さ掻き消す我が儘放題だからね?それに目をつぶって…なんて言ってられないレベルのだからね?


 そして私を空気にしてください。分かってるって。並んだらまずい顔だってことぐらい。やっぱりほら、元々モブだから。友人Aだから。顔なんて可もなく不可もなく、要は主要人物程は重要視されて作られなかったんだよ。

 …………ってその言い訳だとこの二人なんて登場すらしなかった…。

 なんなんだよ、お前達!


「さぁ、入ってくれ!」

「失礼しますわ」

「浴衣はこちらにご用意してあります」


 対面ソファーに所狭しと浴衣が置かれている。無地のものからどこで見つけてきたんだこんなものっていうくらいたくさん。

 ……………もったいない。


「どれが一番似合うと思う?」

「そうですわねぇ……これなんかいかがかしら?」


 紺のグラデーションが瞳の色に合っていいと思う、んだけど、やっぱり着物のことはよく分からん。せめて御門君に相談しようかな?


 ポケットからスマホを取りだしピッと一枚。メールに貼りつけて御門君に送った。


「ナオ?何をしているんだ?」

「やっぱり私の見立てだけでは不安ですから友人に相談してみました」

「そうか?僕はなかなか気に入ったぞ、この柄」

「シンクロワ様は浴衣は着られないのですか?」

「え?あ、わ、私はいいです!」


 首を左右にブンブンと激しく振られれば無理強いするのは可哀想だし。


 丁度御門君からの返事が来た。なんてタイミングの良さ。


「なかなかいいんじゃないんですか、だそうですわ。これで決まりましたわね。私は失礼致します、ご機嫌よう」


 一息に言いきって部屋を出ようとしたら


「待て」


 私は犬かとツッコミを入れたくなったのを我慢した。すっごく我慢した。

 動きそうになった右手をさりげなく左手で隠しましたとも。

 ……お嬢様やるのも辛い。


「…………なんでしょうか?」

「祭りには盆、盆?……ギル」

「盆踊りです」

「そう盆踊りだ。その盆踊り、一緒に踊ろう」

「はぁ、構いませんけど」


 この人、盆踊りってどんなのか本当に分かってんのかな?

 ワルツとかじゃないからペアとかないよ?

 あえて言わないけど。だってここで教えたら長くなりそうなんだもの。


 だからギルバート、今は黙っとけ?


 女子高生の無償の笑顔を見せた。

 え?怯えてる?そんなの気のせいだよ。だって私、笑顔だもの。

 なんで視線をそらしてるの?ギルバート。


「絶対だな?」

「えぇ」


 広義にすればあれは一緒に踊ってるんだし。嘘じゃないよね~。

 言わなかったんじゃなくて聞かれなかったんだもの。

 え?屁理屈?気のせい気のせい。


 ドレスのように裾を掴んでお辞儀はできないからぺこりと頭を軽く下げて部屋を出た。

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