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求・ヤンではなくクーな人達  作者: 綾織 茅


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 今日のラッキーポイントは雪成さんに借りた式とやら、可愛い可愛い子狐ちゃんです。肌身離さず抱っこしているといいでしょう。


 朝の占いコーナー風に言ってみた。アイテムだと道具になっちゃうからポイントで。ポイントもまぁ違う気がするけど。

 いやぁ~モフモフ具合がたまりませぬ。可愛いは正義、本当です。


「奈緒ちゃん?どうしたの?」

「あ、なんでもないなんでもない」


 隣に座る千鶴にはやはり見えないらしく、不思議そうに首を傾げていた。


 私の膝の上では子狐ちゃんが丸まってお昼寝中。もう初孫をもったジジババの気持ちであります。うぅ~可愛いよ~。

 全力で撫で回したいのを場所とお昼寝中だという事を考えて全力で抑えた。我慢がこんなに辛いとは、思うてもみなかった。フハハ。


「神宮寺さん、何かいいことでもあったんですか?」

「え?」

「奈緒ちゃんなんか嬉しそう」

「そ、そうですか?千鶴に久しぶりに会えたからかもしれませんね」

「奈緒ちゃん!私もだよ!」


 ごめんよ、千鶴。でも会えて嬉しいのも本当だよ。

 だから許しておくれ。子狐に心奪われている私のことを!


「それで?今回は何の会議ですの?」


 夏休み中に決めなければいけなかった学園祭の生徒会企画も夏休み前に生徒からの要望多数で生徒会・風紀役員によるダンスに決まってしまったし。だから夏休みに呼ばれることはないとタカをくくってたんだけどなー。


「実はこんなものが学園側に届いたそうです」


 滝川由岐がスッとジャケットの内ポケットからとりだしたのは名刺サイズの厚紙だった。手にとってみると、文字が書いてある。

 その文字の羅列は日本語ではなかった。


「これは…ミルフィーリエ語」

「えぇ、そうです」


 シャルルの母国であるミルフィーリエ王国の公用語だ。両隣のフランスとドイツのどちらに近いかと言えばフランス寄りの。

 でもこれ、何て書いてあるのか分からない。


「ご安心を。シンクロワ殿に聞いていますから。それにはこう書いてあるそうです。王太子を誘拐する、と」


 はぁ?誘拐?この洸蘭で?

 無理無理。だって私と師匠の監視カメラから逃れてそんな犯罪侵せるわけないじゃない。まぁ、本来の使用用途は違うけどね。


「一応特例措置として学園内でも護衛をつけるようシンクロワ殿から要請があり、理事長もそれを許可しています」


 そりゃあ一国の王子、それも王位継承者であるシャルルが学園内で誘拐されたとなれば一大事だ。

 まったく。余計なイベントを増やしてくれる犯人さん方にはどうお返しをしてやろうか。


「私達にもなるだけ彼の側についていて欲しいとの理事長からのお達しです」

「うげ。僕、あの王太子サマ苦手なんだけど」

「……面倒くさい」

「呉羽、瑠偉。そう言わずに。これは理事長からのお達しなんですから否やはありませんよ」


 滝川由岐にそう諭されて西條呉羽はむくれた。男がしても全く可愛くない仕草だけど、そこはほれ。可愛い系美少年の西條呉羽だ。なんの違和感もなく逆に似合っているというんだから腹ただしい。


 とりあえず皆が守りに入るなら私は攻めに入らせて頂きます。


「私、用事を思い出しましたわ。このふざけた予告状はお借りして参ります。千鶴、行きましょう」

「え、私」

「いいから」


 それでは皆様ご機嫌よう。

 私と千鶴は慌ただしくもその場を後にした。


 子狐ちゃんは起きて私の肩に移動中です。モフモフ万歳。




「モフモフよー」


 子狐ちゃん満足げです。


 誰かに命を狙われてるから御門家に守られてる。全てを教えてもなければ嘘を言ってもいない。千鶴にはそう説明した。ついでにただ今、御門君のご好意により千鶴も子狐ちゃんを視れている。


 そりゃあもうすぐさま一緒に子狐ちゃんを可愛がり隊を発足させましたよ。ちなみに私が隊長。

 これだけはいかな千鶴とはいえ譲れないよ。


「はーい。二人ともこっち向いてー」

「あ、はーい」


 師匠がスマホを構えてる。子狐ちゃんって写真に写るのか?

 写るなら私も欲しいなー。


「写真なら僕が撮りますよ。その方がソイツも写るでしょーし」

「そ?ならお願い」


 師匠が御門君にスマホを渡し、そのままパシャリと一枚。皆が御門君に、正確には御門君が持ってるスマホに群がった。


「おー」

「すごーい!」

「よしよし」


 師匠、師匠!私にも送って!

 やーん!可愛いー!


「あ、あと先輩」

「なに?」

「ソイツ、雄なんでちゃんはやめて欲しいそうです」


 え!?喋れるの!?

 ていうか雄だったんだ。


「それから兄に聞いたところ名前をつけてないそうなんでつけてやって欲しいそうです。式は名前をつけることによりさらに力を増しますから」


 へぇ~名前かぁ。雪成さんのだから勝手に名前つけちゃ駄目だろうと思ってつけなかったんだよね。

 何にしよう。

 そして師匠、なにスマホいじりながらニヤニヤしてるんですか?


「君、男の子なんだ~」

「どんな名前がいい?」


 名前をつけられるのが嬉しいのか丸っこい瞳をキラキラとさせている。

 狐目なんて言うけどこの子の場合そそれが全く当てはまらない。


「あ~もしもし~?」


 誰だろ?


「え~いいでしょ。……え?無理無理。だってイオイオ仕事中でしょ?」


 ってお兄様かよ!……もしかして、今のお兄様に送った?

 こんな早くしかもタイムリーに電話が来るなんて…。


「分かった分かった。はい、奈緒奈緒。代わってだって」

「お兄様ですか?」

「うん」


 ………はぁ。出ないと何度でもかけてくるんだろうなぁ。

 帰ってこいって言われてるけど帰ってないし。


 観念して師匠からスマホを受け取った。


「もしも

「奈緒!?どうして帰ってこない!しかも千茅とばかり一緒にいて!ずるいじゃないか!!」


 ………止まれ。猪ですかあなたは。

 しかもずるいって、自分の歳を考えて言って欲しい。いい年した大人が言っていいセリフじゃないよ。


「切りますね」

「あ、奈緒!?ちょ…」


 プツッ

 笑顔で電話を切った。うん、いい笑顔だよ、私。


「電源OFFOFFっと」

「…………」


 時々この人が本当にお兄様の親友なのか分からなくなる時がある。

 私以上にいい笑顔で電源を落とす師匠に生温かい気持ちにさせられた。


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