↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/29

憎らしい奴と守りたい人(碧斗視点)


俺の名前は雪野木ゆきのぎ碧斗あおと。この学園の理事長の息子だ。周りはそんな俺に取り入ってきて正直うざい。多くの人を突き放してきたからか『アイス王子プリンス』と呼ばれているらしい。そもそも俺は王子ではない。

最近一番胸くそ悪いのが花影はなかげ恵利華えりかのことだ。彼女は周りから崇拝レベルで慕われている令嬢で、いつも周りには人が群がっている。


いや、そこはどうでもいい。それだけだったら胸くそ悪くはならない。俺がイライラしてたまらないのは花影恵利華が異様に鈴野亜莎紀に構うことだ。

鈴野亜莎紀と言うのは初等部から学園の生徒ではあったが、体が弱く、学園に通えなかった生徒だ。


少し落ち着いたから通うことになったらしい。落ち着いたと言っても見た感じはいつも体調が悪そうな人だった。

目が死んでいて、私は誰とも関わりたくない。と言う雰囲気があふれでていた。


そんな彼女に友達になろうと花影が言ってきて、鈴野が嫌がって断っていたのにめげずに言い寄っていた。

友達になってもらいたいのに、何度頑張っても断られてしまう可哀想な私。とでも思っているのだろうか。その偽善行為で鈴野は花影の取り巻いた奴等にいじめを受けている。何も知らない能天気な奴め。


花影が鈴野に言い寄っては鈴野へのいじめが酷くなっていって、見ていて嫌になるほどだった。もしかしたら学園内の九割が敵だったんじゃないだろうか。

そんなことをされても彼女は何も動じていなかった。されるがままになっていた。ただ、明らかに体調が悪くなっているのはわかった。


学園を休む回数が増えていって、『このまま学園からいなくなればいい』と言っていた奴を無性に殴りたくなった。

学園に戻ってきてもふらふらと歩くことが多くて、体が限界なのは明らかだった。


彼女も危険だと感じたのか体育の授業の時に自分から保健室に行っていた。その時もふらふらと歩いていて鈴野に付き添おうかと立ち上がったときに花影が『亜莎紀さんを連れ戻して来ますね』と言って彼女を戻そうとしていた。

花影にはあの蒼白い顔が見えなかったのだろうか。いくらなんでもそれは酷い。


ああ、でもこの前『亜莎紀さんはもうすっかり体も良くなっているのに体が弱いからって治った病気を掘り返すんですよ。あれは私が注意をしませんと』と言っていた。

彼女は鈴野の何を見ている?思わず言いたくなったが飲み込んだ俺は凄いと思う。


鈴野は教科書もノートも使えなくなってしまったのに、今も平然と授業を受けることができている理由も分からないのだろう。はっきり言って鈴野亜莎紀は天才だ。

彼女は本気を出していない。


そして、まっすぐな人だ。考えていることは綺麗事でも何でもないのに、彼女の言葉は心に突き刺さる。

好感が持てた。

きっと昔は今のような鈴野ではなかったのだろう。何もかもをめんどくさそうにやる彼女では。


これは俺の考えだが、彼女は彼女の存在を認めてくれる人が現れるまで変わることはないだろう。

そう思っている内に花影が鈴野を連れ帰って来てしまった。

ズルをした罰と言って倍の距離を走らされていたが、彼女はそれをこなした。 


誰も本当の彼女には気づかないみたいだ。今の彼女の顔色はそこら辺の病人よりも悪いだろう。

体育が終ったあとも人気の少ないところで水を大量に浴びていた。人として最低な奴等だ。


最近花影は周りの人には優しいが、鈴野には刺のある優しさだ。女神や聖女で無いことは確かだろう。

鈴野は気づいていないみたいだが、彼女は「悪の華」と呼ばれているみたいだ。


皆の目は、どうやら腐っているらしい。


それから何日かたったとき、鈴野は俺がよく入り浸っている屋上に来て、落ちようとしていた。

掴まえると、彼女の腕があまりにも細くて驚いた。早く死なないと、と何度も抵抗していた。そして抜け出されたと思ったら倒れた。


彼女の関係者に聞くと、やはり鈴野はまだ体は弱く、そろそろ学園に行かないと家に泥を塗ってしまうと言って、両親の反対のもと、この学園に通いだしたらしい。


鈴野の目が覚めると、俺の質問に対してめんどくさそうにしながらも答えてくれた。  


彼女の全てを話されたときには驚きはしたが、信じた。その話を聞くと、すべてのつじつまが合うのだ。


そして、彼女には感情があって、今まで押し殺して生きてきたこともわかった。鈴野だって普通の少女なのだ。


一度だけ、彼女が笑ったとき、俺の心は何かに撃たれたように飛び跳ねた。花のような笑い方だった。


俺だけは彼女の味方になろうと思った。彼女が自分らしく生きていけるように、俺が守ろうと思った。


本気になった彼女がどれだけ凄いのかを知るのは、もう少し先の話、と言うわけでもないが、今の俺は知らなかった。






ブクマや評価などありがとうございます。お読み頂き感謝です!これからも頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。